桜才学園での生活   作:猫林13世

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珍しく轟さんを多用


ロボ部、出陣

 初めての大会に向けて最終調整しているという轟を労う為、我々はロボット研究部の部室を訪ねる事にした。

 

「応援に来たぞ!」

 

「今大事な調整中なのでお静かに。というか、ノックしてください」

 

「あ、あぁ……すまない」

 

 

 つい何時ものノリで部室に入ってしまったが、部員に怒られてしまったな……

 

「えっ、私はノック音聞こえたけど」

 

 

 轟はそういうが、私はノックなどした覚えは――

 

『コン、コン』

 

「気のせいかな?」

 

「あぁ、気のせいだ……」

 

 

 耳を澄ませると確かにノック音は聞こえたが、それは扉をノックする音では無く、玩具が轟の――

 

「おっとそこまでだ」

 

「す、すまん……」

 

 

 人の思考が読めるんじゃないかと噂されているだけあって、タカトシの制止のタイミングは絶妙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ大会当日、私たちは応援の為に天下一ロボ大会の会場に足を運んだ。

 

「初戦の相手は前回大会の準優勝校ですが、勝算はありますか?」

 

 

 何処から現れたのか、新聞部の畑さんがネネにインタビューをしている。

 

「………」

 

「あ、気を悪くしましたか?」

 

 

 畑さんの質問に答えないネネを見て、少し申し訳なさそうに頭を掻く畑さん。だが――

 

「いえ、ちょっと吐き気が……」

 

「ネネってプレッシャーに弱いんですよね」

 

「あっー」

 

 

 

 私の説明で納得したのか、畑さんも無理にインタビューしようとはせずにどこかに行ってしまった。

 

「あれが轟さんたちが作ったロボット? 可愛いね~」

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。お腹を痛めて生んだ子ですから」

 

「そんな大げさな……」

 

 

 実際に生んだわけじゃないのに、お腹を痛めるって表現はどうなんだろう?

 

「部長、またフリーズしました」

 

「またか……」

 

「苦労してたんだね……」

 

 

 ネネの胃の辺りからキリキリという音が聞こえてきたような気がする。確かにあれなら『お腹を痛めて生んだ子』だという表現も大げさではないのかもしれないわね……

 

「そういえばタカトシは、ロボットの知識はあるのか?」

 

「最低限は持ってるとは思いますが、いきなり参加しろと言われても出来ないと思いますよ。それがどうかしたんですか?」

 

「いや、さっきから専門用語が飛び交っていて、私にはさっぱりだったから」

 

 

 確かに至る所でロボットに関係する用語が飛び交っているが、困るほどだろうか? 少なくとも私は何とか分かるんだけどな……

 

「気にする事は無いんじゃないですか? 用語が分からないにしても、結果は分かるわけですし」

 

「それはそうだが……知識があった方が観戦も楽しいんじゃないかと思っただけだ」

 

「まぁそうでしょうが、会長はあまり知識が無い柔道の試合でも楽しんでたじゃないですか」

 

「あれは解説も難しい言葉を使ってなかったからな。だが、この会場ではやはり用語が分かった方が楽しいんじゃないかと思っただけだ」

 

「なら、後で轟さんに聞いたらどうですか?」

 

「そこまで知りたいわけじゃないんだがな……」

 

 

 どうやら会長は、ただタカトシに説明してもらいたかっただけの様で、タカトシの提案に難色を示す。その理由が分からなかったタカトシは首を傾げただけだったが、理解出来た私と七条先輩は、会長に鋭い視線を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟さんたちの善戦虚しく、桜才学園ロボ部は三回戦で敗退した。

 

「お疲れ様」

 

「あっ、ありがとう」

 

 

 精根尽きたという感じで座り込んでいるロボ部に水分を差し入れして、俺は生徒会メンバーと合流する。

 

「初出場で三回戦まで進めたという事は、次は期待できるんじゃないのか?」

 

「過度な期待はプレッシャーにしかなりませんが、さっきの試合も紙一重でしたからね。期待しても良いのではないかと思います」

 

「タカトシもそう思うか!」

 

 

 どうやら会長も紙一重だと感じていたらしく、俺と意見が同じだと分かると何故か喜びだした。

 

「轟!」

 

「はい?」

 

「次はもっといい成績を収められると思うぞ! ネバーギブアップの精神だ!」

 

「はい!」

 

 

 会長と轟さんが手を取り合って頷きあうと、そこに畑さんが現れた。

 

「ちなみに、これが『ネバァ…恥部アップ』の画像です」

 

「こ、こんなの何処で撮ったんですか?」

 

「何だか、ドキドキするな」

 

 

 どうもろくでもない写真を見せているようだが、何となく見ない方が良いと思い近づかないでおいた。

 

「スズ、あっちの処理は任せる」

 

「私には無理よ。というか、あれで元気になるならそれでもいいんじゃないかって思ってる」

 

「轟さんは兎も角として、シノ会長が元気になる必要は無いと思うんだけど」

 

「偶には良いんじゃない?」

 

「そう…だな……まぁ、普段ぼんやりしてるけど、いざという時に頑張れる人は素敵、という事にしておくか」

 

 

 最近では勉学が疎かになってきてはいるが、自分の得意分野で輝いている轟さんを見て、俺はそう結論付ける事にした。

 

「だったら、普段から頑張ってる私に賞賛を贈るべき」

 

「スズちゃんはナデナデしてもらいたいのかな~」

 

「子供扱いしないでください!」

 

「じゃあ、大人のナデナデ?」

 

「ネネもいい加減にしろ!」

 

「はぁ……やっぱりこうなるのか」

 

 

 良い感じに終わらないのが、桜才学園が関わった行事って事なのだろうか……




やっぱり苦労するのはタカトシ……

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