桜才学園での生活   作:猫林13世

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忙しいメンバーだなぁ……


七条家での生徒会業務

 さすがに津田家で集まりすぎという事で、今日は七条家で生徒会業務をする事になった。

 

「休日だというのに、皆様生徒会業務お疲れさまです」

 

「場所を貸していただきありがとうございます」

 

 

 出迎えの出島さんに挨拶を済ませ、私たちはアリアが待っている部屋へと向かう。ちなみに、出島さんに案内を頼まなかったのは、また迷子にでもなられたら大変だからだ。

 

「タカトシ、アリアの気配は?」

 

「こっちです」

 

 

 わざわざ出島さんにお願いしなくても、我々には高性能レーダーがあるのだ……いや、人間だけど。

 

「いらっしゃ~い。早速だけど始めましょ」

 

「そうだな」

 

 

 アリアと合流し、我々は生徒会業務を開始する。

 

「これってどうやって使うんだ?」

 

「シノちゃん、タブレット使うの初めてだっけ?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 パソコンは使えるようになったが、こういう最新機器はどうしても苦手だ……まぁ、古谷先輩程ではないがな。

 

「画面を縮小したいときは、こうやって摘まむ感じで」

 

「ほほぅ」

 

「画面を拡大したいときは、くぱる感じで」

 

「アリア、昔の癖が出てるぞ」

 

「おっと。自宅だから気が緩んでるのかな~」

 

「しょうがない奴め」

 

 

 私とアリアの間では笑い話で済んだが、タカトシのこめかみがヒクヒクと動いているのを、私たちは見逃さなかった。たぶん怒ってるんだろうが、注意するほどでもないと考えているんだろう。

 

「それにしても、金曜日にだいたい片付けたはずなのに、何でこんなに溜まってるんですか?」

 

「何でも横島先生が生徒会室に持ってくるのを忘れてたらしい。しかも期限が月曜までだから、今日中に仕上げないといけないんだと」

 

「あの人、生徒会顧問としての自覚があるんですかね?」

 

「そんなものが横島先生にあると思うか?」

 

 

 私の言葉に、三人の作業の手が止まった……つまり、そういう事なんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく作業していると、出島さんが部屋にやってきた。

 

「皆様、昼食は如何致しましょうか?」

 

「もうそんな時間だったか……集中していると時間が流れるのが早いな」

 

「出島さんの料理なら心配なく食べられますので、出島さんにお任せします」

 

「かしこまりました。ちなみに、ご希望などはございますでしょうか?」

 

 

 出島さんは私にではなく皆に希望を聞いている。私に聞くと、またカップ麺とか言い出すとか思ってるのかしら。

 

「じゃあ……賄い飯で」

 

「えっ!?」

 

「それで良いんですか?」

 

 

 シノちゃんの希望に、出島さんが驚きスズちゃんが首を傾げながら尋ねる。まぁ、せっかくウチに来たのに賄いってとか思ってるのかしらね。

 

「出島さんが作る賄い飯なら、間違いはないだろうしな」

 

「では、ご期待に添えるよう頑張らせていただきます」

 

 

 出島さんが気合いを入れて厨房に向かうのを見送って、私たちは作業を再開した。

 

「そういえば、タカトシ君は賄い飯でも構わなかったの? さっき何も言わなかったけど」

 

「作っていただいたものにケチをつけるつもりはありませんし、出島さんの料理の腕は知っていますから」

 

「タカトシと同等か、それ以上だもんな」

 

「いや、どう考えても俺より上でしょう。俺は家事の延長でしかありませんが、出島さんはそれを生業にしているわけですし」

 

「いや、我々からすれば、君のレベルも相当だからな」

 

 

 確かに出島さんは調理だけでなく、掃除や洗濯をしてお金を貰っている人だけど、タカトシ君だって十分にそのレベルに達してると思うんだけどなぁ……

 

「お待たせしました! 出島流、スープパスタです」

 

「結構本格的ですね」

 

 

 出島さんが作ってくれたスープパスタに感動しながら、私たちはそれを食す。

 

「上手いですね! 十分お店に出せるレベルですよ!」

 

「本当ですね。とても賄い飯とは思えません」

 

「ありがとうございます。そう言われるのは二回目です」

 

「二回目?」

 

 

 スズちゃんが首を傾げながら私を見詰めてくるけど、私はそんな事言った事ないので首を振って否定した。

 

「実は昔、お店を経営している男とやった時に――」

 

「それは一回目としてノーカウントだろうが!」

 

「というか、食事中にそんな話しないでくださいよ!」

 

 

 スズちゃんとシノちゃんがカンカンに怒ったので、タカトシ君は出島さんに鋭い視線を向けるだけに留めていた。

 

「あぁ、その眼! 非常に興奮します」

 

「駄目だこの人……」

 

 

 タカトシ君の視線で興奮し始めた出島さんを見て、スズちゃんがそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作業も終わっておやつを食べていると、プチシューが最後の一個となっていた。

 

「誰が食べるか、じゃんけんで決めようじゃないか」

 

「私は結構です」

 

 

 おやつの最後の一個を取り合うなんて、なんだか子供っぽいし……

 

「萩村は脱落したという事で、私たち三人で勝負だな」

 

「負けないよ~」

 

「えっと、俺もですか?」

 

「君が一番働いたんだから、食べる権利はあるだろ」

 

「はぁ……」

 

 

 あまり乗り気ではないが、タカトシも参加するようだ。

 

「それじゃあ行くぞ――」

 

「やっぱり私も!」

 

 

 何だか仲間外れにされた気がして、私は慌ててじゃんけんに参加したのだった。




結局子供っぽいぞ、スズ……

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