桜才学園での生活   作:猫林13世

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一人ロースペックがいるな……


ハイスペックな後輩たち

 生徒会室で作業をしていたら、急に会長が右手首を抑え始めた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、急に手首が痛くなってな……」

 

「腱鞘炎ですか?」

 

 

 確かにこれだけの量の書類にサインしていたら腱鞘炎になっても仕方ないかもしれないな……

 

「手が使えないんじゃ、文字書くの難しいな……」

 

「左手で書けばいいんじゃないですか?」

 

「両利きなのは萩村だけだろうが!」

 

「この前タカトシも右手を捻ったとかで左手で文字を書いてましたが」

 

「この後輩たちスペック高過ぎ……」

 

 

 タカトシは兎も角、私はそこまでハイスペックなつもりは無いんだけどな……というか、タカトシと比べたら誰だってスペック低いって思われるだろうな。

 

「タカトシ君もいない事だし、お尻にペンを挿して――」

 

「タカトシがいなくても自重してください」

 

「そんな事しないぞっ!?」

 

 

 相変わらず七条先輩のジョークは重いんだよな……最近は大人しくなってきたとはいえ、一発の威力がね……もう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 横島先生に呼ばれ、職員室の作業を手伝っていたら、学園長が現れ職員室の空気が一変した。

 

「珍しいな、学園長がここに来るなんて」

 

「そうなんですか? というか、人にばっかりやらせないで、自分で何とかしてくださいよね」

 

「そんな事言われてもな……私一人でやる量じゃないだろ?」

 

「自分で溜め込んだんだろうが……」

 

「津田君は横島先生に対してため口なの?」

 

「普段はちゃんと敬語を使いますけど、ツッコミの時まで敬意を払う必要はないでしょう? というか、普段から敬意なんて払いたくないですけど」

 

 

 俺がゴミを見るような目を横島先生に向けると、何故かだらしなく口を開き涎をたらしていた。

 

「ほんと、ダメだこの大人……」

 

「タカトシ様に詰っていただけるなら、ダメな大人で十分です」

 

「はぁ……」

 

 

 横島先生に押し付けられた書類整理を済ませ職員室を辞そうとしたら、理事長先生に捕まった。

 

「おやおや、妹さんなら兎も角君が職員室に呼び出されていたとはね」

 

「生徒会顧問の手伝いとして呼び出されたんですが、実質デスクの整理をやらされただけです」

 

「それはそれは」

 

 

 手近な椅子に腰を下ろした理事長先生の周りに、横島先生と小山先生がやってきた。

 

「今日はどのようなご用件で?」

 

「いやなに。少しは先生方の仕事を見ておこうかと思ってね。査定に役立つから」

 

「「っ!」」

 

 

 理事長先生の言葉に、横島先生と小山先生の背筋が伸びた。まぁ、大人にとって査定という言葉がどういう意味を持っているのか、想像に難くないからな……

 

「それにしても、この歳になると膝が痛くて……階段の上り下りが辛くて」

 

「あー」

 

 

 理事長の何気ない話に、小山先生が共感した。

 

「膝が痛いと、正座する時も辛いですよね」

 

「あと、膝コキの時も――ンゴ」

 

 

 くだらない事を言った横島先生の口を、小山先生の手が塞いだ。まぁ、睨んで黙らせるよりかは穏便なんだろうな……恐らく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄に相談に来たら不在で、何故か会長たちに勉強を見てもらう事になってしまった……

 

「というか、生徒会作業は良いんですか~?」

 

「安心しろ。腱鞘炎になった私に代わって、ハイスペックロリっ子が全て終わらせてくれた!」

 

「ロリっていうな!」

 

「スズ先輩なら、これくらいはお手の物ですよね~」

 

 

 何とかして話題を逸らそうとした私の目論見は、アリア先輩によって阻まれてしまう。

 

「これ、コトミちゃん用に作った問題。復習を兼ねてだからそれ程難しくないと思うよ~」

 

「アリア先輩基準で難しくないって言われても、私にとっては難しいかもしれないじゃないですか~」

 

 

 そもそも生徒会役員は、二年と三年のトップが在籍しているのだから、凡人である私とはレベルが違うのだ。私の知識レベルは精々こん棒だ。こん棒でラスボスに挑んで簡単に勝てるわけが――

 

「くだらない事を考えてる暇があるなら、さっさとテストを始めたらどうなんだ?」

 

「なっ、タカ兄!?」

 

 

 いつの間に……まったく気配も感じなかったし、部屋に入ってきた音すら聞こえなかった……やはりこの兄、只物ではない……

 

「だがコトミよ。これは確かに簡単だぞ?」

 

「そうね。この程度なら二十分も必要ないわね」

 

「だから、インテリな皆さんと私を同レベルに思わないでくださいよ! 皆さんが二十分で終わるって言っても、私じゃ一時間あっても終わるかどうか――」

 

「テスト時間は五十分だろうが。一時間も使って終わらないんじゃ、次のテストは駄目だな。義姉さんに連絡して、お前の部屋にあるゲームを全て売ってもらおうか」

 

「頑張ります! 三十分で終わるように頑張ります!」

 

 

 タカ兄に脅され、私はすぐに問題に目を通す。脅されたからかは分からないけど、普段の私なら苦戦するような問題でもスラスラ解くことが出来、三十五分で全ての問題を終わらせることに成功した。

 

「お、終わった……」

 

「それじゃあ、さっそく採点と行こうじゃないか!」

 

 

 その場に倒れ込んだ私を他所に、会長たちが採点を始める。

 

「この問題でこれだけ出来るなら、次は大丈夫じゃないか?」

 

「ゲームを人質に取られたからですよ……というか、タカ兄、許してください」

 

 

 このテストの結果が一応良かったので、ゲームを売られる事は無かったけど、相変わらずタカ兄は厳しいなぁ。まぁ、私に発破をかけてるんだろうけども……




コトミのスペックは微妙だ……

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