桜才学園での生活   作:猫林13世

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余程親しくないと分からないぞ


ちょっとした変化

 昨日はコトちゃんの勉強を見て、そのまま津田家に泊ったので、朝は私が用意する事になった。

 

「おはよう、お義姉ちゃん」

 

「コトちゃん、おはよう。今日は早いんだね」

 

「ちょっとトイレに」

 

「今タカ君が入ってるはずだよ?」

 

 

 今から出かけるらしく、タカ君がさっきトイレに入ったはずだからまだ出た気配はない。まぁ、私は気配とか分からないけど。

 

『タカ兄、早くー!』

 

『入ってるよ』

 

「っ!?」

 

 

 今の兄妹の会話を聞いて、私はあり得ない想像をしてしまった。

 

「いやいや、あり得ないって……タカ君のはミニサイズという光景なんて」

 

 

 くだらない事を考えてないで、お弁当の用意を済ませちゃいましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝会議で生徒会室に集まることになっているのだが、アリアとタカトシがまだ現れない。まぁ、まだ時間まで余裕があるから良いんだが。

 

「最近目が疲れやすくてな」

 

「そーゆー時は遠くを見ると良いですよ」

 

「なるほど」

 

 

 既に部屋にいる萩村に相談して良かったな。私は遠くを見る為に窓の外に視線を向けた。

 

「おっ、タカトシとコトミとカナだ」

 

 

 昨日は津田家に泊まったのだろう、カナがわざわざ桜才学園に寄ってから通学している。

 

『タカ君、これお弁当』

 

『わざわざすみません』

 

『気にしないで。勉強頑張ってね』

 

『それはコトミに言ってやってください』

 

『ちゃんとやってるんだけどな~』

 

「………」

 

「会長が遠い目に!?」

 

 

 三人のやり取りを見ていて、ついついおかしな想像をしてしまった……タカトシとカナが夫婦で、ダメな娘であるコトミを躾けているという光景を……

 

『あっ、三人ともおはよ~』

 

『アリアっち、おはようございます。それじゃあタカ君、コトちゃん、私はこれで』

 

『はい、ありがとうございました』

 

『じゃあタカ兄、私も教室に行くから』

 

 

 カナとコトミが離れていき、代わりにアリアがタカトシの隣を歩く。ライバルとしては複雑な思いだが、やはりタカトシとアリアが並んでいると絵になるんだよな……

 

「会長、そろそろ現実に戻ってきてください!」

 

「あ、あぁ……すまん、ちょっと三途の川まで行きそうになっていた」

 

「あの光景を見ただけで死なないでくださいよ!?」

 

「しかし、畑があの二人のツーショットを狙っているのも分からなくはないな」

 

「どういう意味です?」

 

「何処の芸能人カップルだって言いたくなるくらいじゃないか?」

 

「まぁ、タカトシの身長を考えると、七条先輩が一番隣にいてしっくりくるのは分かりますけどね……」

 

「それだけじゃなく、アリアはスタイルも良く美人だから、タカトシの見た目に負けていないという事らしい」

 

 

 私は自分で言っておきながら、自分のスタイルに視線を向け悲しい気分になる。

 

「「はぁ……」」

 

 

 どうやら萩村も私と似たような事を考えたようで、私と同じタイミングでため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 購買に寄ってから生徒会室に向かうらしいタカトシ君とは一旦別れて、私は一足先に生徒会室にやってきた。

 

「おはよう」

 

「シノちゃん、おはよ~」

 

「………」

 

「ん~?」

 

 

 何だか私の事を睨んでいるような気がするんだけど、私何かしたっけ?

 

「アリアは人の事よく見てないんだな。昨日美容院に行ったのに」

 

「そうだったんだ~。でも、劇的に変わったわけじゃないんだし、分からなくてもしょうがないと思うけど~? スズちゃんは気づいたの~?」

 

「いえ……私も今言われて知りました」

 

「ほら~。気づかない方が普通なんだって~」

 

「そうなのだろうか……ところで、タカトシはどうした? 確か校門で一緒になってただろ」

 

「タカトシ君なら、購買に寄ってから来るって言ってたよ~」

 

 

 自分の方が旗色が悪いと判断したのか、シノちゃんが唐突に話題を変えてきた。まぁ、タカトシ君の事が気になってるんだろうけども。

 

「校門と言えば、カナちゃんが来てたよ~」

 

「あぁ、ここから見えた。相変わらず通い妻状態のようだしな」

 

「タカトシ君の家にいて一番不自然じゃないポジションにいるからね、カナちゃんは~」

 

 

 親戚同士の結婚で、浅からぬ縁が出来た事で津田家に入り浸る口実を手に入れたカナちゃんは、私たちの中で一番自然に津田家を訪れる事が出来るのだ。

 

「遅れました……会長、美容院に行ったんですか?」

 

「さすがタカトシ、人の事をちゃんと見ているんだな!」

 

「そんな事は無いと思いますが……あっ、これ人数分のココアです」

 

「女の子の日にはココアが最適なのを知って……本当によく見ているんだな」

 

「えっ、何の話ですか?」

 

「シノちゃん、タカトシ君がそんな事を知ってるわけ無いでしょ? コトミちゃんのなら何となくありそうだけど、シノちゃんの周期を把握してるはずがないもの」

 

「そうですよ! だいたいタカトシがそういうのに疎いのは会長だって知っているでしょうが!」

 

「な、なにもそこまで怒らなくても良いだろ」

 

「何なんですか、いったい……」

 

 

 一人状況を把握出来ていないタカトシ君が、珍しく首を傾げながら私たちを見ている。だけど説明すると怒られそうだから、私たちはそれ以上何も言わなかった。




絵になるのは分かる……

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