桜才学園での生活   作:猫林13世

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忘れがちな設定だけど、克服出来てませんし……


カエデの悩み事

 最近また、学校に関係無いものを持ち込む生徒が増えていると、風紀委員長の五十嵐から相談された。

 

「――というわけで、何か良い方法は無いだろうか?」

 

「そう言われても、もう何度も注意した後だしね~」

 

「問答無用で採り上げるというアイディアを実行するしかないのではないでしょうか」

 

「だが、それだと反発を招かないだろうか?」

 

 

 一時期そういう考えを実行しようという段階に入ったのだが、タカトシが待ったをかけたのだ。理由は今、萩村が言った通り、問答無用で採り上げて反発を招く可能性を考えての事だ。ただでさえ元女子高で女子生徒が多い学校で、生徒会メンバーや風紀委員にも女子が多い。男子生徒が強硬手段に出てきた場合、対応出来る自信が無いのだ。

 

「ところで、そのタカトシ君は?」

 

「あぁ、最近また畑が周辺を嗅ぎまわってるので、注意と指導を頼んでおいたんだ」

 

「畑さんもこりませんね」

 

「あの情熱を別の方へ向けられれば、アイツもきっと優秀なんだろうが……」

 

「それで、今度は何を嗅ぎまわってるの~?」

 

 

 アリアの興味が畑に向いてしまったが、関係ない問題ではないので話しておくか。

 

「タカトシの周りの女子――つまり我々か。その中で誰が一番タカトシと近づいたのかを探っているらしい」

 

「近づいたって、肉体的距離かな~? それとも、精神的距離?」

 

「恐らく後者だろうな。肉体的に近づいたと言える人間は、結構いるからな」

 

「えっと……シノちゃんとスズちゃん、そんなに睨まれると怖いんだけど」

 

 

 私と萩村がアリアの唇を凝視していると、アリアは身の危険を感じたのか身体をよじる。そんな行為も色っぽく見えるのは、やはり胸の所為だろうか……

 

「でも精神的距離となると、英稜の森さんが一番なんじゃないですか? 同じ境遇という事もあって、あの二人は結構話が弾んでいますし」

 

「サクラちゃんはボケないし、身体的特徴で自虐する事も無いもんね~」

 

「それは喧嘩を売ってるんでしょうか?」

 

「別にそんな事はないけど?」

 

 

 萩村が自分の事を指摘されたと勘繰って、アリアを睨みつけるが、アリアは特に気にした様子もなく話を続けた。

 

「あっ、でも精神的距離という事では、カエデちゃんが一番なのかもしれないね~」

 

「どういう事だ?」

 

「ほら、カエデちゃんは男性恐怖症でしょ? でもタカトシ君には触れる事が出来るし~」

 

「そういえばあったな、そんな設定……」

 

 

 私たちの中で、五十嵐はタカトシを狙うライバルの一人としか認識されてなかったが、アイツは他の男子生徒とはまともに話せないままだったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員でもアイディアを出し合ったけど、結局解決策は出てこなかった。生徒会の方でもあまり良いアイディアが無いようで、注意をし続ける事しか出来ないのが何だか悔しいわね……

 

「私、学園の風紀を守れなくなってきてるのかしら……」

 

 

 共学化する事で風紀が乱れるのを恐れて、厳しい目で見ていたつもりだったんだけど、いつの間にか当時の気持ちを忘れて、何処か緩い監視になっていた事を自覚し、私は思わずため息を吐いた。

 

「はぁ……」

 

「おんや~?」

 

「ヒィっ!」

 

「……声をかけただけでその反応は、さすがの私も傷つくのですが」

 

「ふ、普通に声をかけてくださいよ!」

 

 

 いきなり背後からあんなふうに声をかけられたら、誰だって驚くわよ……

 

「それで、何の用ですか?」

 

「何やらアンニュイな風紀委員長を見かけたので、ご相談に乗ろうかと思っただけですが」

 

「本当にそれだけですか?」

 

 

 この人の事だから、また私から何かを聞き出そうとしているのではないかと疑ってしまう。

 

「今回は一友人として、貴女の相談に乗ろうってだけで、裏はありませんよ」

 

「……なら、信じます」

 

 

 畑さんとはそれなりに付き合いが長いので、嘘を言っているわけではないと信じられる目をしていたので、私は先程考えていた事を畑さんに話す。

 

「――というわけなのですが、どう思いますか?」

 

「それはある意味仕方がない事ではないかと思いますが」

 

「どうしてです?」

 

「男子生徒が増えた事で、貴方は一年、二年のフロアを見回り出来なくなっていますよね?」

 

「そ、それは……」

 

 

 男子生徒と極力会いたくないという私の弱い心を指摘され、私は反論出来ずに押し黙る。

 

「風紀委員の中で最も厳しい貴女が見回らない事で一,二年生はかなりの数不要な物を持ち込んでいるというデータがあります。特に男子生徒が……」

 

「な、なに?」

 

「いえ、気絶されたら困るので、具体的な事は言わないでおきましょう」

 

「……何となく察しました」

 

 

 所謂そういうものを持ち込んでいるという報告は受けたことがあるけど、やっぱり結構な数持ち込まれているのね……

 

「こういう事は副会長に相談するのが良いと思いますよ」

 

「タカトシ君に?」

 

「貴女がこの学園の中で、教師以外で近づける唯一の異性、それが副会長です。それに副会長は二年のフロアでは絶大な支持を受けていますので、彼が本気で風紀委員の手伝いに動けば、相当数の不要物が持ち込まれないようになると思います」

 

「でも、これ以上タカトシ君に負担を掛けるのは……」

 

「じゃあ、貴女が直接取り締まる?」

 

 

 畑さんの反撃に、私は再び押し黙るしか出来なくなってしまったのだった。




正攻法でも相手を黙らせることが出来るのになぁ……

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