桜才学園での生活   作:猫林13世

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相談する相手が決まってる……


相談事

 畑さんに呼び出されて、俺は風紀委員会本部に顔を出す事になった。何故畑さんが風紀委員会本部に呼び出したのかと会長たちは気になっていたようだが、先日の流れから考えればすぐに理由は分かった。

 

「――というわけなのだけど、協力してもらえませんかね?」

 

「協力するのは構いませんが、何故畑さんがこの事で動いているのですか?」

 

「津田副会長なら、私が何を考えているのかお見通しなのでは?」

 

「……無理にカエデさんに見回りをさせて、男性恐怖症を悪化させるのは悪手ですね」

 

「さすが副会長」

 

 

 棒読みで褒められても嬉しくもなんともないが、確かにカエデさんは男性恐怖症が原因で、一年と二年のフロアの見回りが出来ない。かといって他の風紀委員に任せても、カエデさん程厳しく取り締まれるはずもない、と畑さんが考えたのは俺にも理解出来る。

 

「ですが、それって畑さんが動く理由になりますかね?」

 

「友人を心配する事くらい、私にだってあるのですが?」

 

「……本音は?」

 

「最近英稜の森副会長と急接近中の津田副会長を諦めきれない風紀委員長を焚きつけて、修羅場にでもなれば面白いかななんて考えてませんから」

 

「考えてたんですね」

 

 

 語るに落ちるとはこういう事をいうのだろうか? てか、今のは完全に畑さんの自爆だったな。

 

「手伝うのは構いませんが、別にサクラと何かあったわけでは――」

 

「サクラ? いつの間に呼び捨てにするようになったんですかね? 私の記憶では、津田副会長は森副会長の事をさん付けで呼んでいたはずですが」

 

「この前頼まれたんです。敬語も止めて、もう少し楽な付き合いをしましょうって」

 

「ふ~ん……」

 

 

 あの目は何かを疑っている目だが、読心術なんて使える人間がそうそういるはずもないし、別に疚しい事は何もないのだから、探られたところで困らないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員の手伝いとして、タカトシが一年と二年のフロアを見回る事になった。元々生徒会も見回りをしていたが、タカトシ個人が見回った方が効果は高そうだ。

 

「そういうわけで、タカトシは少し遅れている」

 

「カエデちゃんの男性恐怖症、まだ治ってなかったんだね~」

 

「確かに、タカトシ以外の男子と話しているところを見た覚えがありませんね」

 

「というか、タカトシ以外目ぼしい男子生徒はいないんじゃないか?」

 

 

 殆ど出番もないし、いてもいなくてもあまり変わらない存在だしな……

 

「しかし、何故畑が動いてたんだろうな?」

 

「タカトシ君もその辺は教えてくれなかったしね~」

 

「まぁ、タカトシなら何か裏があったとしても気付けるでしょうし、放っておいても問題ないと判断したのだと思いますよ」

 

「アイツは人の心を読めるからな」

 

 

 本人は否定しているが、タカトシは確実に読心術を使えると、私は思っている。実際何度も心の中だけに留めていた事に対してツッコまれた事があるしな。

 

「おーし、揃ってる――ん? 津田がいないじゃないか」

 

「タカトシは風紀委員の手伝いとして見回りをしています。それで、いったい何の御用でしょうか、横島先生」

 

「天草、私は一応生徒会顧問なんだが?」

 

「生徒会顧問としての自覚がお有りなのなら、もう少し顔を出すか生徒会の行事を把握しておいていただきたいのですが」

 

「……まぁ、それは置いておくとして」

 

「かなり重要だと思いますが」

 

 

 萩村がジト目を向けて横島先生に詰め寄ったが、これで反省するならとっくに改心しているだろうと萩村が判断して、すぐに睨みつける事をやめた。

 

「来月のプール開きを前にして、生徒会や美化委員にプール掃除を頼みたいんだとさ」

 

「プール開きですか……もうそんな時期なんですね」

 

「この前年が明けたと思ってけど、もう夏なんだね~」

 

「しみじみとしているところ悪いんだが、他に参加してくれそうなヤツに心当たりは無いか? さすがに生徒会と美化委員だけでは大変だろうからな」

 

「参加者を募ってみるか」

 

「ですが、過去の経験から言わせていただくと、参加者はあまり集まらないと思いますよ」

 

「そうなんだよな……」

 

 

 この学校の生徒には、ボランティア精神が無いのか、報酬などが無いと参加者が集まらないのだ。

 

「津田の上半身裸体が見られると銘打てば、それなりに集まるんじゃないか?」

 

「横島先生は、タカトシに殺されたいのですか? そんな事をすれば、普段の説教では済まないと思いますが」

 

「……痛気持ちいいのは好きだが、痛いだけのは嫌いだな」

 

「なにを想像してるんですか……」

 

 

 斜め上な感想が出てきたので、萩村が呆れているが、私とアリアにとっては実に想像通りの答えだった。

 

「まぁ、最悪コトミに参加してもらうようタカトシに頼むしかないな。多少はマシになってきているとはいえ、アイツはいろいろと問題があるから、教師陣の心証が良くなるとでもいえば参加してくれるだろう」

 

「あとはタカトシ君を貸してあげてるから、カエデちゃんにも手伝ってもらおうか~」

 

「まぁ、男子がいない空間なら、五十嵐先輩も問題ないですからね」

 

 

 とりあえず人員を確保出来たので、横島先生は満足そうに生徒会室を後にした……本当に、生徒会顧問としての自覚があるのだろうか?




横島先生、珍しく顧問として働く

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