桜才学園での生活   作:猫林13世

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今年最後の投稿になります


柔道部体験入部

 校内の見回りをしていると、掲示板に柔道部のお報せが貼られていた。

 

「体験入部?」

 

「ハイ! 柔道を気軽に楽しんでもらおうと思って。一緒に青春の汗を流しましょう!」

 

「じゃあ、体験してみようかな」

 

 

 最近運動不足気味だし、体験入部程度なら私にだって出来るだろうし、アリアや萩村も問題無く出来るだろう。

 

「じゃあ俺は見学します」

 

「(シャワー浴びとかなきゃ……汗臭いかも)」

 

「青春の汗は?」

 

 

 タカトシが見学に来るという事で、三葉が乙女モードに入ったのを察した萩村がすかさずツッコミを入れる。忘れがちだが、萩村もツッコミ側の人間だから、こういう時は素早いんだな。

 

「とりあえず皆さん、道着に着替えましょう」

 

「はーい」

 

「ん?」

 

 

 柔道場に移動し、まずは道着に着替える事になった私たちだが、よく見れば一人増えているではないか……

 

「コトミも体験入部か?」

 

「違います。私は道場破りです」

 

「ふざけた事言ってると、タカトシとカナに報告して監視の目を厳しくしてもらうぞ?」

 

「そ、それだけは……」

 

「まぁまぁシノちゃん。コトミちゃんのこういった発言は何時もの事だし、素直に体験入部っていうのが恥ずかしいだけかもしれないしね」

 

「まぁ、そういう事にしておこう」

 

 

 とりあえず道着に着替えた私たちは、コトミの冗談で始まった道場破りごっこを見学する事にした。

 

『始め!』

 

「道場破りを生で見るのは初めてだ」

 

「………」

 

「まぁタカトシ、コトミが自発的に運動をしようとしたことを褒めてあげて」

 

「この前太ったとか言ってたから、それが目的だとは思うがな……」

 

「なるほど……」

 

 

 兄妹の仲がいいと、そういう事も伝わるんだな……というか、コトミも太ったのか? 見た感じではさっぱり分からないが……

 

『一本!』

 

「まぁ、ムツミに勝てるわけないわよね……」

 

「というか、あんなりすぐ負けたら、運動にならないんじゃないか?」

 

 

 秒殺されたコトミに、タカトシは呆れているのを隠そうともしない視線を向け、コトミは恥ずかしそうにトッキーのところに逃げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムツミ先輩に瞬殺され、タカ兄の冷たい視線から逃げてきた私は、トッキーに柔道について教わっていた。

 

「――という感じだ」

 

「なかなか難しいね~」

 

「あとはルールを覚えるともっと楽しめると、主将があっちで言ってるな」

 

「ルール?」

 

「一本の時は腕を上に上げ、技ありの時は横に、有効の時は斜め下に、という感じだ」

 

「憶えられるかな?」

 

 

 それ程多くは無いけども、私って興味がない事を覚えるのが苦手なんだよな……あっ、そうだ!

 

「女子らしく恋愛に置き換えれば覚えやすいかも」

 

「恋愛?」

 

「一本は四つん這いになってる相手にフィ〇ト〇ァックする感じで、技ありが腕枕、有効が手を繋ぐって覚えれば良いんじゃないかな?」

 

「何言ってるのか分かんねぇよ! というか、兄貴が怖い顔をしてお前の事を見てるが?」

 

「な、何でもないからね!?」

 

 

 相変わらず勘が良いタカ兄が私の事を怖い顔して睨んでたので、私はすぐさま否定してトッキーと組手をする事にした。

 

「お前、帯解けてるぞ」

 

「あら」

 

「しっかりしめておけ」

 

「そんなにきつく締めたら、解けなくなるんじゃない?」

 

「そこまでじゃねぇよ」

 

 

 トッキーにしっかりと帯を締めてもたらったお陰で、組手の間解ける事は無かった。

 

「ワリィ、ちょっとタイム」

 

「どうしたの?」

 

「トイレ」

 

「なるほど」

 

 

 トッキーと一緒にトイレに向かうと、何故か困った表情で私の事を見てきた。

 

「解けない……」

 

「帯が?」

 

「ズボンのひもが……こんがらがった」

 

「相変わらずドジっ娘め」

 

「今わりと切羽詰まってるから!! というか、解くの手伝ってくれ!」

 

「仕方ないな~」

 

 

 トッキーのズボンのひもを解くために、私はトッキーの前にしゃがむ。ちょうどそのタイミングでシノ会長がやってきて、驚きの声を上げた。

 

「トッキーがコトミを従えてるっ!?」

 

「チゲェよ!」

 

「ただのドジっ娘ですよ~。ズボンのひもがこんがらがったので、解いてあげてるだけです~」

 

「何だ、ビックリさせるなよな……てっきりトッキーがコトミに舐めさせてるのかと思っただろ」

 

「それはそれでありですね」

 

「無しだよ! というか、どんな発想だよ……」

 

「はい、解けたよ」

 

「サンキュー!」

 

 

 余程我慢していたのか、トッキーは凄い勢いでトイレに駆け込んでいった。

 

「ところで、シノ会長はここに何の用で?」

 

「……しまった! 私も切羽詰まってるんだった!?」

 

「会長もドジっ娘ですか?」

 

「いや、ひもはこんがらがっていないが……」

 

「おーいトッキー! 会長がお漏らししちゃうから早く出てだってさ~!」

 

「そ、そんな事言ってないぞ!?」

 

 

 ドア越しにトッキーに催促すると、会長が慌ててそれを否定する。だけで表情に余裕が感じられないので、恐らく私の言った事が大袈裟だという事は無いだろう。

 

「何なら本当に舐めましょうか?」

 

「その必要は無い! ちょうどトッキーが出てきたからな」

 

「あらら……ちょっと残念」

 

「私にそっちの趣味は無いからな!」

 

 

 きっちりと否定していってから、会長はトイレに駆け込んだのだった。




ちょっと早いですが、よいお年をお迎えください

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