桜才学園での生活   作:猫林13世

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします


体験入部後の心境

 柔道部に体験入部したお陰か、普段から身体を動かしておこうという気分になり、私たちは生徒会業務の前に軽く運動する事にした。

 

「普段から気を付けているつもりだったが、部活をやっている連中と私たちとでは、やはり体力に差があったな」

 

「会長、ムツミと比べたら誰だって体力不足ですよ……」

 

「いや、三葉もそうだが、トッキーや他の部員たちと比べても、私たちは劣っていただろ」

 

「そりゃ部長がムツミですから……かなりの運動量をこなしてるみたいですよ」

 

 

 余程運動したくないのか、萩村が柔道部の練習メニューの一部を教えてくれた。確かにこれだけ運動していれば体力もつくだろうが、私たちがだらけて良い理由にはならないな。

 

「軽く運動するだけで、眠気を吹き飛ばす事が出来るだろうし、これから夏本番だからな。少しでも痩せるように頑張ろうじゃないか」

 

「それが本音かっ!?」

 

 

 つい本音が出てしまい、萩村は私にツッコミを入れてきた。そういえば、さっきからアリアが大人しいが、何をしているんだ?

 

「何見てるんだ?」

 

「あそこ。タカトシ君とムツミちゃんが何か話してる」

 

「本当だ……」

 

 

 少し離れたところで三葉がタカトシに何かを話しているようだが、この距離じゃ声は聞こえない……

 

「萩村、唇の動きから分からないか?」

 

「さすがにこの距離じゃ分かりませんし、タカトシの唇の動きはここからじゃ見えませんし」

 

「そうだな……」

 

 

 気になるが、これ以上近づけばタカトシに気づかれる可能性が高くなるし、そうなると怒られる可能性もあるわけだから、私たちは大人しく運動して生徒会室に戻る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちが生徒会室に戻ってきたのとほぼ同時に、タカトシも生徒会室に顔を出した。さっきまでムツミと何話していたのかが気になるけど、聞いたところで素直に答えてくれるか分からないし、私だけが気にしてるみたいで何だか恥ずかしい……

 

「なに?」

 

「何が?」

 

「いや、人の顔をジッと見てるから、何か聞きたい事でもあるのかと思って」

 

「そんなに見てないわよ」

 

 

 また心の裡を見透かされたのかと思ったけど、どうやら無意識にタカトシの顔を見ていたみたいね……

 

「タカトシ君、さっき体育館の側にいた~?」

 

「えぇ、ちょっと三葉と話してたので。というか、皆さんも体育館にいましたよね?」

 

「やっぱり気付いてたのか」

 

「あれだけ見られれば、誰だって気付くと思いますが」

 

 

 それ程見ていたつもりは無かったのだが、どうやら私たちはタカトシの事をジッと見ていたようで、タカトシには気付かれていたようだった。

 

「それで、何を話してたんだ?」

 

「会長たちが体験入部してくれたのは良かったんだけど、それ以降希望者がいないって相談されていただけです」

 

「何故タカトシに相談するんだ? 部員の確保なら顧問の大門先生に相談するべきだと思うんだが」

 

「俺もそう思いましたが、無下にする事も出来なかったので相談を受けていただけです」

 

「それで、なんて答えたの~?」

 

「気長に待つしかないと言っておきましたが、団体戦に出られるだけの人数はいるわけですし、焦る必要は無いとも言っておきました」

 

 

 タカトシの答えはもっともなもので、文句のつけようがないものだった。まぁムツミがそれで引き下がるとも思えないけど、タカトシに相談しにくくなったのは確かよね……

 

「(何を考えてるんだ私は……)」

 

 

 ムツミとタカトシが一緒にいる時間が増える心配がなくなってホッとした自分にツッコミを入れて、私は生徒会業務に戻る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トッキーと組手をして、自分の未熟さを思い知らされた私は、レベルを上げる為に今日もダンジョンに向かう事にした。

 

「――ゲームは宿題を終わらせてからだよ?」

 

「お、お義姉ちゃん……居たんだ」

 

「タカ君から、今日は食材の買い出しするから、コトちゃんの監視を頼まれたんだ。そのお礼に、今日の晩御飯はタカ君が用意してくれるって」

 

「タカ兄め……少しは私の事を信頼してくれてもいいじゃないか……」

 

 

 自分で言っておきながら、私の何処を信頼出来るのかと疑問に思ってしまった。最近は大人しくしているとはいえ、私が問題児なのには変わりはないし、下手をすればまた留年や退学のピンチに陥るのは目に見えている。それが分かっていながら改善出来ない私を、誰が信頼してくれるというのだろうか……

 

「とりあえず宿題が終わればゲームしても構わないんだから、まずはそっちを終わらせちゃいましょう」

 

「宿題といっても、今日はそれ程多くないから後でも……」

 

「そう言って結局やらずに学校に行くんだから、先に終わらせなきゃダメだよ」

 

「はーい……というか、よく宿題がある事が分かりましたね」

 

 

 タカ兄なら読心術で私が嘘を言っている事に気付いても不思議ではないが、お義姉ちゃんは読心術使えないし。

 

「タカ君が先生から聞いたのを、私にメールしてくれたんです」

 

「そういう事か……」

 

 

 少し考えれば分かる事だったが、私は大げさに納得してみせて、カバンから宿題を取り出してお義姉ちゃんに聞きながら終わらせたのだった。




相変わらずタカトシの信頼度は高い

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