桜才学園での生活   作:猫林13世

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他にいないのか……


臨時メイド&執事

 生徒会の仕事で校門前服装チェックをしていると、大半の生徒がだらしなくボーっとしているのが目についた。

 

「まだ夏休みボケを引きずっているのだろうか……」

 

「おはよーございます……」

 

「コトミ、だらしないぞ! しっかりしないか!」

 

「ふぁい……」

 

 

 だらしなく背筋を丸め、だらだらと歩くコトミを注意したが、あまり効果は無かった。

 

「皆様、おはようございます」

 

「出島さん? おはようございます」

 

 

 アリアを乗せてやってきた出島さんが、キメ顔をしながら挨拶をしてきた。何かあるんだろうか?

 

「出島さんは、明日から夏休みなんだよ~」

 

「アナウンサーみたいだな……」

 

「という事は、明日から七条先輩のお世話は誰がするんですか?」

 

「よし! 私たちが手伝いをしようではないか!」

 

「えっ、俺も?」

 

 

 タカトシは何か言いたげだったが、我々で七条家の手伝いをする事が決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出島さんが夏休みに入ったので、シノちゃんんたちが代理で七条家のお手伝いさんを買って出てくれた。

 

「お嬢様、何なりとお申しつけください」

 

「シノちゃん、なかなか様になってるね」

 

「一度、メイド服を着てみたかったんだ」

 

「ロングスカート、いいよね~」

 

 

 昔ならここで、シノちゃんのスカートの中に忍び込んでイタズラしたかもしれないけど、今はそんな事はしない。思うだけで踏みとどまれるようになったんだよね。

 

「タカトシ君、お茶を淹れてくれるかな?」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

 

 タカトシ君が恭しく一礼してからお茶の用意をしてくれる。それにしても、様になり過ぎて本物の執事かと思っちゃったよ~。

 

「? 出島さんは何故ここにいるんですか」

 

「帰省したはずじゃ」

 

「親は近所に住んでいるので別に。つまり、今日は私を客人としてもてなしたまえ」

 

「(何だ、このウザさ……)」

 

「出島さんもお茶飲むの~?」

 

「タカトシ様が淹れてくださるのでしたら」

 

「……かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 

 

 出島さん用のティーカップを用意して、タカトシ君がもう一杯お茶を淹れる。

 

「さすがはタカトシ様ですね。この前一度教えただけで、だいぶ様になっているようです」

 

「それ程でも。お待たせしました、出島様」

 

「出来れば名前で呼んでくれないでしょうか? もちろん、普段は苗字で構わないのですが」

 

 

 出島さんもメイドとしてではなく客人としてなので、タカトシ君に名前で呼んでもらえないかと言っているのだろう。そういえば前に一度だけ名前で呼ばれて、その場で絶頂してたような気もするんだけど大丈夫かしら?

 

「……かしこまりました、サヤカ様」

 

「ありがとうございます!!」

 

「で、出島さん!? 鼻血出てますけど」

 

「凄い破壊力だったんだな」

 

 

 もう私たちは名前で呼ばれ慣れちゃったけど、タカトシ君に名前で呼ばれるって、これだけの威力があったんだって事を思い出した。まぁ、私も呼ばれるたびに大洪水してたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段しない事をした所為で、私と会長はかなりヘロヘロになったのだが、タカトシは特に問題なく仕事をこなしているのを見ると、やっぱりこいつは何でもそつなくこなせるんだなって思い知らされる。

 

「お嬢様、こちら前菜でございます」

 

「ありがと~」

 

 

 七条先輩への給仕も、タカトシが担当してくれているので、私たちは基本的には掃除くらいしかしてないんだけどね……

 

「あんた、このまま就職できるんじゃないの?」

 

「どうだろう……臨時の手伝いだから甘い評価をしてもらってるけど、実際に働くとなるといろいろと問題があると思うけど」

 

「そうだろうか? 私が見た限りだが、君の働きっぷりは出島さん以上だと思うぞ?」

 

「それは出島さんのだらしのないところしか見てないからでは?」

 

 

 確かにタカトシの働きっぷりは本職の出島さんと遜色ないように見えるけど、それは出島さんが私たちの前ではふざけるからなんだろうな……

 

「おっと、次の料理が出来たみたいだから、俺は行くよ」

 

「頑張って」

 

 

 タカトシを見送ると、七条先輩がこっちにやってきた。

 

「お嬢様、どうかなさいましたか?」

 

「私にだけかしこまらないでよぉ」

 

「ですが、今は主人と使用人という立場ですし……」

 

「下剋上プレイでいいから!!」

 

「それを我々にやれと?」

 

 

 タカトシがいないところでは相変わらずだなぁ……というか、そんな事を私がすると思ってるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通りの仕事が終わり、会長とスズが大きく伸びをしている。

 

「疲れましたね」

 

「漸く休めるな」

 

「まだ屋敷の見回りがありますよ。主人の身の安全を考えるのも、使用人の仕事です」

 

「……というか、まだいたんですね」

 

 

 いい加減帰ればいいのにと思ったけど、この人住み込みメイドだったんだっけ……

 

「……見回り、しないんですか?」

 

「いえ、出島さんをマークしておけば大丈夫かなと」

 

「もーっ、マーキングは電柱だけで十分ですよ」

 

「何言ってるのか分からないですね……」

 

「まぁ、セキュリティに問題があるとは思いませんが、一応見回りをしておきましょう」

 

「そうだな。タカトシの気配察知で問題ないとは思うが、これもメイドの務めだからな!」

 

 

 何故か意気揚々と先頭を進む会長を、俺は微笑まし気に眺めたのだった。




タカトシしか働いてないような気も……

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