桜才学園での生活   作:猫林13世

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一人おかしなことを考えている


寝苦しい夜

 従者の仕事として、我々は七条家内の見回りをする事になった。

 

「しかし夏休み中の出島さんが一緒に見回りをして良いんですか?」

 

「皆様だけでは、屋敷内の地図が完ぺきではないでしょうから。ちなみにこちらがお嬢様の寝室です」

 

 

 そう言って出島さんが部屋の前で立ち止まり、口に指を当てた。つまりは静かにしろという事だ。

 

「………」

 

「先輩、盗み聞きされてますよー!」

 

 

 萩村が大声でアリアに忠告すると、その声に反応したのかアリアが部屋から出てきた。

 

「すまんアリア、起こしてしまったか」

 

「萩村さんが騒いだばかりに……」

 

「えっ、私が悪いの?」

 

 

 萩村が心外だとばかりに出島さんを睨みつけるが、彼女にはあまり効果は無かった。

 

「ううん、ただ寝つけないだけだから」

 

「ふむ……」

 

「この暑さでもすもんね」

 

 

 萩村は仕方がないと言いたげだが、何とかしてアリアを寝かしつけてあげたいものだな……

 

「よし! これより、アリアを寝かしつけ大会を開催する」

 

「何か始まった……」

 

「相変わらず唐突だな……」

 

 

 後輩二人から冷たい視線を向けられているが、私はめげずにアリアの部屋に特攻した。

 

「うわぁ、暑いな」

 

「出来るだけエアコンは控えたいんだよね。エコ精神を鍛えた身としては」

 

「でしたら、扇風機にぬれタオルをかけると涼しい風がきますよ」

 

「へー、でもウチ扇風機無いんだよね」

 

「そうなんですか」

 

「でしたら、私がお嬢様の下着を濡らしますので、そこに風を送り込めば――」

 

「少し黙っててくれませんかね?」

 

 

 余計な事を言い始めた出島さんをタカトシが睨みつけ、とりあえず萩村案は却下された。

 

「なら次は私の番だな。少し待っていてくれ」

 

 

 私はアリアの部屋から食堂まで移動し、目ぼしい物を発見して部屋に戻る。

 

「お夜食をどうぞ」

 

「牛乳とアセロラ?」

 

「牛乳とビタミンCを一緒に摂取すると寝つきが良くなるのだ」

 

「意外な組み合わせが逆に良かったりする、ってやつだね」

 

 

 萩村とタカトシは知っているのか私の説明を聞いて頷いている。相変わらず知識の幅が広い二人だな……

 

「〇Vでも、不釣り合いな組み合わせに興奮したりしますものね」

 

「綺麗に纏まったんだから、余計な事は言わないでくれませんか?」

 

 

 再び出島さんに冷たい視線を向けるタカトシ。昔だったら私が蛇足で言っていただろうことを言う出島さんは、もしかしたら私たちの未来の姿だったのかもしれないな……

 

「では次は私が。シンプルにアロマを使ってみてはどうでしょうか? 特にラベンダーには心を落ち着かせる効果がるので、安眠効果もばっちりです」

 

「そういえば、会長からもラベンダーの香りがしますね」

 

「ああ、香水だ」

 

 

 学校では使えないが、今はお手伝いの最中なので軽く振りかけたのだが、意外と匂ってるものだな。

 

「あー良い匂い! (一緒に)寝たくなってきた」

 

「離せー!」

 

 

 出島さんが私に抱き着き、香水の匂いを至近距離で嗅いでくる。ここまでくると変態としか言えなくなってしまうな……

 

「大人しくなるか、外につまみ出されるか、どっちが良いですか?」

 

「お、大人しくします……」

 

 

 出島さんを引きはがしてくれたタカトシに頭を下げ、私は出島さんから距離を取った。

 

「普通に誰かがうちわであおげばいいのではありませんか?」

 

「しかしそれでは、人の気配で眠れないのではないか?」

 

「そんなタカトシじゃないんですから……」

 

「それじゃあ仕方ないですね……アリアさん、少し痛いかもしれませんが――」

 

「っ!」

 

 

 タカトシがアリアに近づき何かしたと思ったら、アリアの体勢がその場で崩れた。

 

「何をしたんだ?」

 

「ツボを押して強制的に寝かしつけました」

 

「(肉)ツボを(肉棒で)押して、強制的に寝かせつけた!?」

 

「いろいろと余計な事を思ってませんか?」

 

「め、滅相もありません!」

 

 

 最後の最後まで、出島さんはタカトシに怒られてるんだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝付けなかったからみんなに相談して、いろいろとしてもらったのは良いんだけど……

 

「私、いつの間に寝ちゃったんだろう?」

 

 

 確か、タカトシ君に近づかれたところまでは覚えてるんだけど、それ以降の記憶が無いんだよね……もしかして、タカトシ君に近づかれただけで失神しちゃったのかな?

 

「でも、カエデちゃんじゃないんだし、近づかれただけで気絶したりしないと思うんだよね……」

 

「おはよう、アリア! あっ、おはようございます、アリアお嬢様」

 

「シノちゃん、別に気にしなくて良いよ」

 

 

 私の声を聞きつけたのか、シノちゃんが部屋に入ってきて、慌てて従者らしい言葉遣いに直したのが可笑しくて、私は口元を抑えて笑った。

 

「良く寝られたか?」

 

「うん。でも、どうやって寝かしつけてもらったのか覚えてないんだよね……」

 

「それは仕方ないだろうな。タカトシのツボ押しで強制的に寝かしつけられたんだから」

 

「そっか……それでタカトシ君に近づかれたところで記憶が途切れてたんだね」

 

 

 タカトシ君のツボ押し術は、最早達人の域に達しているらしく、それくらいなら簡単に出来るって前にコトミちゃんに聞いたことがあったけど、まさか本当にツボ押しで寝ちゃうなんてね。

 

「後でお礼を言っておかないと」

 

 

 シノちゃんに着替えを手伝ってもらいながら、私はタカトシ君に感謝の言葉を告げなければと心に決めたのだった。




そして相変わらずスペックの高さ……

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