桜才学園での生活   作:猫林13世

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シノはドキドキですね


ドッキリ返し

 最近またストレスが溜まってきたので、久しぶりにヤンチャタイムと行こうではないか。

 

「(ということで、今日のヤンチャタイムはビックリ箱だ)」

 

 

 ふたを開けると仕掛けが飛び出す簡易的なビックリ箱だが、これでも十分驚かせることが出来るだろう。

 

「(さらに、この一文を書き足す事によって、人の好奇心を刺激する……我ながら完璧だな!)」

 

 

 ふたに書いた文字は「ぜったいにあけてはいけません!!」という、普通の人間なら好奇心に負けてふたをあけてしまうだろう一文だ。これなら誰かしらふたを開けてビックリしてくれるだろう。

 

「(よし、陰に隠れて観察しなければな)」

 

 

 まだ誰も来ていないので、私は隣の部屋に隠れて生徒会室を覗く事にした。

 

「あれ? シノちゃん何処に行ったんだろう?」

 

「トイレじゃないですか? 鍵も閉めてなかったですし、すぐに戻ってくると思いますよ」

 

「そうですね……まぁ、とりあえず仕事をしましょうか」

 

 

 一瞬タカトシの視線がこっちに向いたが、私は咄嗟に隠れる事で何とか他の二人には気づかれずに済んだ。

 

「(しまったっ!? みんな真面目だったから、あの一文の通り誰もふたを開けてくれない……)」

 

 

 せっかく仕掛けたのに、誰も開けてくれなかったらつまらないじゃないか……

 

「もーっ! せっかくのドッキリが、もーっ!!」

 

「っ!? か、会長……いきなりなんですか……」

 

 

 何だか意図したのとは違う方法で驚かせてしまったが、アリアとタカトシはビックリすらしてくれていない……

 

「だって、あけるなって書いてあるし……」

 

「普通だったら、好奇心に負けてふたをあけるだろぅ!」

 

「ごめんごめんシノちゃん、機嫌直して」

 

 

 アリアが謝りながら私の頭を撫でてきたが、そんな事で誤魔化される私ではないぞ!

 

「こんなコトしたって――って、タカトシ!?」

 

「撫でてたのはタカトシ君でした~」

 

「もーっ!」

 

 

 いつの間に示し合わせたのかは分からないが、アリアが謝ってタカトシが撫でてたとは……

 

「というか、何時まで遊んでるつもりですか……早く片付けて帰りましょうよ」

 

「そうですね。急ぎの用件は無いとはいえ、遊んでるところを畑さんにでも見られたら――」

 

「あら?」

 

「またかお前はっ!」

 

 

 萩村のセリフで窓の外を見ると、屋上からロープをたらして生徒会室を狙っていた畑と目があってしまった。

 

「津田副会長には気付かれてたけど、他の三人は誤魔化せてたのにな~」

 

「屋上からロープをたらしての盗撮は止めろとあれほど言っただろうが!」

 

「まぁまぁ、今回はこんなのしか撮れなかったので」

 

 

 窓から生徒会室に入ってきた畑が見せてきたのは、タカトシに頭を撫でられて雌の表情をしている私の写真……

 

「よし、消去だ」

 

「あ~ん、せっかく撮ったのに~」

 

 

 本音を言えば現像して部屋に飾りたいくらいなのだが、アリアと萩村の視線が痛いので消しておこう……

 

「お~す、生徒会役員共」

 

「何か用ですか、横島先生」

 

「随分と棘がある感じがするが……生徒会メンバーの集合写真を撮ると畑に言われて来たんだが」

 

「そういえばそんな事も言ったような気も……」

 

 

 新入生募集のパンフレットに、生徒会メンバーの写真を載せるとかなんとか言われて畑に頼んだんだった……

 

「それじゃあまずは試しに一枚」

 

「ピース」

 

「試しだから良いですが、真面目な写真ですよ?」

 

「そうですよ。それにピースサインってくぱぁを連想してしまう人がいるでしょうし」

 

「いるわけないだろ……」

 

「そうだな。全然思わんぞ」

 

 

 畑のボケにツッコんだ萩村に、意外な事に横島先生が同意した。この人が真面目な事を言う日が来るなんて――

 

「私は、人差し指と薬指でくぱって、中指は穴弄り役だし」

 

「シャッターチャンス!」

 

「おい撮るな!」

 

 

 少しは真面目な事を言うのかと思ったけど、結局横島先生は横島先生だったな……というか、なんて動きを見せてくれたんだか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室でうとうとしていたら、なんだか周りが騒がしくなったので、私は突っ伏していた顔を上げて周りを見回した。

 

「あっ、マキ。なんだか騒がしいけど、何かあったの?」

 

 

 ちょうど近くにいたマキに状況を尋ねる。するとマキの視線だけではなく、他の女子の視線も廊下に向けられている事に気付き、私も廊下に視線を向けた。

 

「あっ、タカ兄」

 

 

 どうやらタカ兄が来た事で騒がしくなってたらしく、私は席を立ちタカ兄の側に向かう。

 

「どうかしたの?」

 

「急にバイトが入ったから、今日の晩飯はこれで何とかしてくれ」

 

「お義姉ちゃんは?」

 

「義姉さんもバイトだ」

 

「そうなんだ……」

 

 

 ということは、今日はゲームし放題って事で――

 

「帰ってきたらちゃんとチェックするから、宿題は終わらせておけよ」

 

「……お見通しでしたか」

 

「お前は顔に出やすいからな」

 

 

 私の頭を軽くポンポンと叩いてから帰って行ったタカ兄を見送って、私は教室に戻る。すると物凄い数の視線が私に突き刺さってきた。

 

「えっと……?」

 

「妹だって分かってるけど、何とも羨ましい……」

 

「一度でいいから、津田先輩に『ポンポン』されてみたい……」

 

「相変わらず津田先輩の人気は凄いね……」

 

「そう言いながら、マキも凄い顔してるって……」

 

 

 私に同情してる風を装って、マキも私を睨みつけているのだ。我が兄ながら、この人気はどうにかならないものだろうか……




タカトシ人気は相変わらず……

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