桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシのままだと戯れになってしまうので……


意識する相手

 生徒会室で作業をしていると、新聞部の畑がやってきた。

 

「やっ」

 

「何か用か? また五十嵐からかくまって欲しいとか言われても困るんだが」

 

「今日は違いますよ。純粋に皆さんにインタビューをしに来ただけです」

 

「桜才新聞企画ですか?」

 

「えぇ。近頃大した話題がないので、生徒から関心が強い生徒会の皆さんの事で誤魔化s――いえ、もう一度桜才新聞に興味を持ってもらおうと」

 

「いま誤魔化そうと言ったか?」

 

「いえ、気のせいです」

 

 

 あからさまに視線を逸らしているんだが、まぁまともな企画なら付き合ってやらない事もないな。

 

「ではまず初めの質問ですが、皆さんは将来、何になりたいですか?」

 

「それは気になるな。特にタカトシは何になりたいんだ? お前なら何でもなれるだろうし」

 

「そんな事ないと思いますが?」

 

 

 タカトシはこう答えるが、私たちから見ても、こいつは何でもそつなくこなす。既に出島さんから七条家で執事として働かないかと誘われているところや、理事長から教師として働かないかと誘われているところを見たし、それ以外にも物書きや料理人など、様々な職業に向いていると思わせる素質があるのだ。

 

「とりあえず安定を考えるなら公務員ですかね。最近の公務員はどうもたるんでるイメージがあるので、あまり積極的になりたいとは思いませんが」

 

「なかなかに厳しい意見ですね。会長たちは?」

 

 

 畑の明らかに「ついでに聞いておこう」みたいな雰囲気を感じ取ったが、私は胸を張って答えた。

 

「私たち三人は女子アナだ!」

 

「三つの女子穴? 何当たり前な事を」

 

「わざと聞き間違えるな!!」

 

 

 ちょっと前までの私なら畑の冗談に乗って下ネタを重ねたかもしれないが、今の私はそんな事はしないぞ!

 

「皆さん、そんな事今まで言ってましたっけ?」

 

「知的な感じでカッコいいじゃないか」

 

「ひょっとして、今人気のミヤっちの影響ですか?」

 

 

 畑が私たちが影響された人物をピンポイントであげてきたので、私たちは少し気まずげに答えた。

 

「えぇ、まぁ……」

 

「あの人カッコ良くて好きなんだ~」

 

「うんうん」

 

「あー、俺もあの人好きですね。今はやりの感じではなく、ちゃんと知性で売ってる感じで」

 

「確かに今の女子アナは、キャラで売ってるのが殆どですからね~……って、会長たち? 何で頬を膨らませてるんですか? もしかして、津田副会長が好きだという言葉を『異性として』と取ったんですか?」

 

「そ、そんな事ないぞ! もちろん、人として好感が持てるという意味だって分かってるからな!」

 

 

 何となく居心地が悪くない、私は早口に否定して作業に戻る事にしたが、畑から冷ややかな目を向けられ、作業は捗らなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄に用があり生徒会室にやってきたのは良いけど、タカ兄は不在だったので待たせてもらう事にした。

 

「相変わらずスズ先輩は電卓使わないんですね」

 

「これくらいな暗算で出来るし」

 

「ハイスペックロリですもんね!」

 

「ロリっていうな!」

 

「あいたっ!」

 

 

 スズ先輩に脛を蹴られ、私は悶絶する。まぁ、スズ先輩は見た目相応の力しかないから、そこまで痛くは無いんですけどね。

 

「意味・感極まって泣いて語る事」

 

「涙腺共に下る」

 

「(国語の勉強かな?)」

 

 

 さっきからシノ先輩とアリア先輩が問題を出し合ってるのを見て、私は普段から勉強してるんだという事を実感した。この二人はどことなく私と同じように、普段ふざけてる感じがするのになとは思ってたけど、やっぱり普段から勉強してるんだ……

 

「ガリレオ衛星、イオ・エウロパ・カリスト、あと一つは?」

 

「ガニメデ!」

 

「(今度は理科? というか、ガリレオ衛星って何だろう……)」

 

 

 さっきは国語だったのに、今度は理科。やっぱり受験生だけあって広い知識が必要になってくるんだろうな。

 

「世界遺産にもなったキノコ型の岩――」

 

「カッパドキア!!」

 

「(次は地理? というか、問題の途中で答えるなんて、なんだかクイズ番組みたいだな……)」

 

「シノちゃん、クイズ得意だね~」

 

「今までのが戯れだとっ!?」

 

 

 てっきり勉強だと思っていた遣り取りは、なんとクイズだったと分かり、私は驚愕した。

 

「ほら『高校生クイズキング』って番組があるだろ? あれの優勝賞金は百万円らしいんだ!」

 

「そうなんですか~。何を買おうかなぁ」

 

「そもそも出てないよ~」

 

「コトミ、アンタ飛ばし過ぎじゃない?」

 

「そうですね~」

 

 

 そもそも私が参加しても、勝てる未来なんて見えないし、参加するとしたらタカ兄かなぁ……

 

「予選の参加、申し込んだぞー」

 

「会長が一番飛ばしてる!! というか、本気で出るつもりだったんですね」

 

「まぁ、参加するだけでも勉強になるし、このメンバーならそれなりに進めると思うしな」

 

「このメンバーって、ひょっとして私も!?」

 

「いや、普通に生徒会メンバーという意味だったんだが」

 

「……ですよね~」

 

 

 あービックリした……そもそも私じゃ戦力どころか足手纏いだし、普通にタカ兄だよね。

 

「ん? コトミ、なんか用だったか?」

 

「あっ、タカ兄。今日マキたちと遊んで帰るから、勉強はその後でお願いします」

 

「やる気があるだけ成長だと思っておこう」

 

 

 タカ兄から許可を貰い、私はマキとトッキーと遊んで帰る事にしたのだった。




まぁ、コトミなら戯れレベルじゃないだろし……

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