桜才学園での生活   作:猫林13世

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ペットと一緒に寝るから……


萩村スズの災難

 最近寒くなってきたので、ボアも犬小屋ではなく室内で寝る事が多くなってきている。そんなボアが今日は、私の部屋にやってきている。

 

「偶には一緒に寝ようか」

 

「わん!」

 

 

 ボアが何と答えたかは分からないけど、彼も部屋から出て行かないことを見るに、私と一緒に寝る事に否定的ではなさそうだ。

 

「(あっ、あったかいな)」

 

 

 ボアを抱えて寝ると、彼の体温が伝わってきて私の身体も温まる。横島先生じゃないけども、一人で寝るより誰かと寝た方がよく寝られるという気持ちが少しだけ分かるような気も……

 そんな事を考えて眠った翌朝、私は謎の温かさを感じて目を覚ました。

 

「? ……あっ、やったな!」

 

 

 布団をめくると、ボアがお漏らしをして布団に跡が出来ている。

 

「スズちゃん、どうかしたの……あら?」

 

「か、母さん! これはボアだからね! 断じて私じゃないからね!」

 

 

 めんどくさい相手に見られてしまい、私は慌てて否定する。こんなに慌ててると余計に私が漏らしたとか思われそうだけど、否定しないとそれはそれで私が漏らしたと思われそうだったので、私はとにかく否定する事にしたのだ。

 

「うーん……うん! 確かにこの臭いはスズちゃんじゃないね」

 

「犬かよ……」

 

 

 私が漏らしたわけじゃないと分かってもらえてよかったけど、そんな判断方法を取らなくても分かってほしかったと思ってしまった……

 

「――というわけで、今朝は大変な思いをしました」

 

「それは災難だったな」

 

 

 放課後になり生徒会で今朝起きた事を話すと、会長が同情してくれた。この人に同情されるのもあれだけど、前みたいに母と同じような反応をされないだけマシかな……

 

「そういえばこの間、出島さんが山の絵を描いてたよ」

 

「? ……っ!」

 

 

 一瞬何のことか分からなかったけど、理解してしまった。こんなことを理解してしまう自分が恥ずかしいが、あの人ならあってもおかしくないって思えるだけの付き合いがあるから厄介ね……

 

「そういえば、タカトシは何処に行ったんですか? HRの後から姿が見えないんですが」

 

「タカトシなら、カナからメールの件で新聞部を――というか、畑を問い詰めているところだろう」

 

「魚見さんから…ですか?」

 

「どうやら畑の奴が裏で運営していたタカトシのファンクラブサイトの件だ」

 

「そんなのがあったんですね……」

 

 

 私は全然知らなかったし、会長や七条先輩も知らなかったらしい。それなのになぜ魚見さんは知っていたのかしら?

 

「この間の濃厚キスシーン事件の事で、そのサイトが荒れたらしくてな。まぁ、原因も燃料投下したのも畑だと分かっているのだが」

 

「何をしたんですか?」

 

「私とタカトシのキスシーンに合わせて森を使って挿入した濃厚キスを思わせるSEが入った動画をファンサイトにアップして外部のファンを煽ったとかなんとか……詳しくは分からなかったが、さすがに封鎖する必要があると畑が判断したほど荒れたらしいぞ」

 

「それは……」

 

 

 あの畑さんがやり過ぎたと思う程炎上したという事は、それだけタカトシのファンが外部にいるという事で、私は顔も見た事ない相手に負けたくないと決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍しく宿題もなく、タカ兄もお義姉ちゃんもいないので、私はトッキーを誘って家でゲームをしていた。

 

「トッキーが部活休みで良かったよ~」

 

「まぁ偶になら構わないが、あんまり遊んでるとまた兄貴たちに怒られるんじゃねぇのか?」

 

「息抜きは大切だって、タカ兄やお義姉ちゃんだって分かってるだろうし、あんまり詰め込んでもキャパオーバーになるって分かってると思うしね~」

 

 

 テスト前ならいざ知らず、普段から詰め込まれても私は覚えきれないのだ。そうなると教えた先から忘れていくという、何とも非効率な結果になりかねないので、最近は一週間に二日は休脳日を設けてくれている。

 

「それにしても、この選手のコントロール、全然定まらないよ」

 

「お前の操作方法に問題があるんじゃね?」

 

 

 野球ゲームをしているのだけど、さっきからフォアボール連発でついには押し出しでトッキーに勝ち越しを許してしまった。

 

「ちょっとタイム」

 

「どうしたの?」

 

「トイレ」

 

 

 女子同士という事もあり、トッキーも気にした様子もなく理由を教えてくれた。

 

「こうなったら」

 

 

 私はトッキーが入ったトイレの前に立ち、携帯に保存してあるエロボイスを再生した。

 

『それで何がしたいんだ?』

 

「トッキーが興奮して、尿のコントロールが乱れるかなって」

 

『乱れるわけ無いだろうが! というか、くだらないものを保存してるって兄貴に報告するぞ!』

 

「そ、そんなことしたら、来月のお小遣いが……というか、いつの間にタカ兄の味方になったの、トッキー!」

 

『お前と兄貴を比べれば、誰でも兄貴の味方をしたくなるだろうが』

 

「そ、そうだね……止めるからタカ兄に報告するのは止めてください」

 

 

 これ以上タカ兄に呆れられたら、本気で家を追い出される可能性もあるので、私は扉越しに平謝りをしてリビングに戻り、トッキーが戻ってくるまでの間正座をして反省するのだった。




トッキーもタカトシの味方……当然ですが

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