桜才学園での生活   作:猫林13世

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周りの方が盛り上がってる


全国大会 二日目

 クイズ大会初日、シノっちたちは一回戦で敗退するも、敗者復活戦で見事に蘇りそこから快進撃を続け、今日の決勝にコマを進めた。その要因はもちろんタカ君で、一回戦は大人しくしていたが、敗者復活戦からその実力を全面に押し出し、他の追随を許さぬ活躍を見せたのだった。

 

「――というわけで、今日は私たちも応援に行きます」

 

「(何で桜才の生徒じゃない魚見さんが一番盛り上がってるんでしょうか)」

 

「(たぶん義弟である津田副会長の活躍が嬉しいんでしょう)」

 

「お義姉ちゃん、盛り上がってますね~」

 

 

 私と一緒に収録現場にやってきた畑さんと五十嵐さんは何かコソコソと話してますが、コトちゃんは私同様盛り上がっています。

 

「予選の時も思いましたが、最初から津田君が答えればよかったんじゃないですかね」

 

「これはあくまでチーム戦ですから、タカ君だけが答えては成り立たないんでしょう。まぁ、スズポンもアリアっちもですが、シノっちも知識十分ですから、そこにタカ君が加われば優勝も十分にあるでしょう」

 

 

 タカ君が隣に立っていてくれているだけで、普段以上の実力を発揮出来る気がするのは、恐らく私だけではないでしょうから、あの三人も普段以上の力を見せてくれるでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二日目も順調に勝ち進んで、いよいよクライマックスが近づいてきたんだけど――

 

「トイレに行きたくなってきたけど、目が離せないんですけど」

 

 

――急に尿意を催し隣で見ているカエデ先輩に相談する。

 

「知らないわよ。トイレに行けばいいじゃない」

 

「でも、せっかく盛り上がってるのに」

 

 

 タカ兄の活躍もあり、桜才チームは良い問題をゲットし、それに答えられれば決勝進出決定という場面なのだ。こんな場面でトイレになんて行ってる場合ではないのだ。

 

「じゃあ、これ使う?」

 

 

 カエデ先輩と反対方向の隣にいた畑さんから、空のペットボトルが手渡され、私はその意味を瞬時に理解した。

 

「助かります」

 

「不精しないでトイレに行きなさい!」

 

 

 

 収録中という事もあり小声ではあったが、カエデ先輩は私の手からペットボトルを奪い取り外を指差しました。

 

「仕方ないですね……まぁ、会長たちなら問題なく答えられるでしょうから、大人しくトイレに行ってきます」

 

 

 答える人があの三人以外だったら気になっただろうけど、正解するのは明らかなので私は簡易トイレではなくちゃんとしたトイレで用を足す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシが隣にいてくれるだけで、私たちは実力以上の力を発揮する事が出来る。それだけでもタカトシは十分な働きをしてくれているのだが、加えてこいつは頭が良い。知識の幅も広いので、相談出来る問題では非情に助かっているのだ。

 

「いよいよ最後の問題です。これに答えた方が優勝となります」

 

 

 最終問題は各チーム二人が選ばれ答える形式だ。私の隣にはもちろんタカトシが居り、緊張している私とは違い普段通りの表情で前を見ている。

 

「タカトシ、万が一私が分からなかった時は頼むぞ」

 

「そうは言いますが、シノさんたち全部分かってたじゃないですか」

 

「君や萩村のように自信があったわけじゃないからな。ここぞという場面で間違えたら申し訳ないから、答える前に相談させてくれ」

 

 

 解答権を得てもすぐに答える必要は無い。時間内であれば相談してもお手付きにはならないので、タカトシに確認してから答えれば大丈夫だろうが、私が分からなかったらどうしようもない。タカトシに頼むしかないのだ。

 

「それでは最終問題」

 

 

 司会のその言葉に、私たちは全員集中する。変に力まなくて済んだのは、隣にいるのがタカトシで、全く緊張していなかったからだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終問題、タカトシ君が難なく答えたお陰で、私たちは全国高校生クイズキングの本戦で優勝した。

 

「優勝は、桜才学園チーム! 敗者復活から見事に優勝です!」

 

 

 司会の宣言でスタジオは大いに盛り上がり、私たちは喜びのあまりそれぞれとハグをした。

 

「シノちゃん、抜け駆けは駄目だよ?」

 

「なにどさくさに紛れてタカトシに抱き着こうとしてるんですか」

 

「チームなんだから、仲間外れは可哀想だろ?」

 

 

 それっぽい理由でタカトシ君に抱き着こうとしたシノちゃんを、私とスズちゃんは全力で阻止する。

 

「お疲れさまでした」

 

「あ、あぁ……タカトシのお陰で優勝出来たな」

 

「いえ、殆ど答えたのは三人ですし、俺はいただけです」

 

 

 最終問題を軽々答えておいてこの余裕……さすがはタカトシ君という感じだね。

 

「この後ウチで祝勝会しない? 出島さんに電話すればすぐに用意してくれると思うし」

 

「良いな! この感動を少しでも多く分かち合いたいし!」

 

「私も構いません。母に事情を話せば、赤飯の用意はされないでしょうし」

 

「そういえば、門限を破るとお赤飯用意されちゃうんだっけ?」

 

 

 スズちゃんのお母さんはスズちゃんが大人の階段を上ったから門限に遅れたと考えるらしく、毎回大変だって前に聞いたことがあったな~。

 

「タカトシ君も、来るよね?」

 

「まぁ、今日くらいは出島さんにお願いします」

 

 

 毎回手伝おうとしてくれるタカトシ君だけど、今日は素直に祝われる立場に徹すると言ってくれた。これでこの後もタカトシ君と一緒にいられるね。




今回ばかりはタカトシも素直に祝われる側に

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