クイズ大会の祝勝会という事で、我々は七条家でお祭り騒ぎを繰り広げている。何故か参加していたタカトシより観客だったコトミの方が盛り上がっているのだが……
「というか、何故コトミがここにいるんだ?」
「だって、タカ兄がこっちに参加して、お義姉ちゃんがバイトじゃ私の晩御飯が無いじゃないですか」
「そういう事か……」
確かに一人増えたくらいで食料が足りなくなるという事は無いし、コトミにキッチンを使わせたらいけないという事は我々も理解している。だが、コトミが盛り上がるのはやっぱり違うんじゃないだろうか……
「それにしても、タカ兄を温存して勝ち進もうだなんて、会長たちも相手の事を下に見過ぎてたんじゃないですか?」
「それは……少しくらいタカトシに楽をしてもらおうと思っただけだ」
「でも結局、敗者復活戦からタカ兄大活躍での優勝じゃないですか。もう少し頑張った方が良かったんじゃないですかね~?」
「そういうコトミだって、普段からタカトシに迷惑を掛けてばかりではないか! 少しは頑張ったらどうなんだ!」
「うわぁ、藪蛇だった……私だって最近は頑張ってるんですから! 小テストだって、五十点は確実に取れるようになったんですから」
「威張るような点数じゃないけどな」
コトミの言葉に、タカトシが呆れながらツッコミを入れてきた。優勝の立役者だというのに、なんだか盛り上がりに欠けてるんだよな……
「タカトシ、もう少し盛り上がったらどうなんだ?」
「楽しんでますよ? ただまぁ、誰かが締めないとグダグダになりそうだなって事で、必要以上に騒いだりはしてませんが」
タカトシが視線を向けた先には、アリアと萩村がカラオケで盛り上がっており、出島さんが萩村家の犬であるボア君に話しかけている。
「その内酔っぱらいの介抱もしなければいけなくなるでしょうから、俺は適度に楽しんでるんです」
「君がいなかったら、我々生徒会はまともに機能しないってよく分かる構図だな……いつもすまない」
「いえ、こういう役回りに慣れてますし、最近はだいぶ大人しくなってきてくれているので、俺も必要以上に疲れずに済んでますから」
「やっぱり疲れていたのか……」
「そりゃ、まぁ……多少は」
疲れているという事を隠そうとしなかったタカトシに、私はもう一度頭を下げた。こいつに彼女が出来ない原因の一端は間違いなく私たちにもあるので、この程度で許しては貰えないかもしれないが、謝罪はしておくべきだしな。
「タカ兄は相変わらず真面目だよね~。もう少しはっちゃければいいのに」
「お前が不真面目過ぎるだけだと思うが? それよりも、この前義姉さんから聞いたが、小テスト赤点ギリギリだったそうだな? 前日にゲームなんかしてるからそんな事になるんだ」
「お義姉ちゃん、黙っててくれるって約束したのに」
タカトシをからかおうとして逆に起こられる結果となったコトミは兎も角として、私はアリアと萩村に相談をすべく移動する。
「シノちゃんも歌うの~?」
「いや、少し相談したい事があるんだ」
「相談? 賞金の使い道なら先ほど決めたじゃないですか」
優勝賞金は学園の為に使うという事で我々四人とも納得し、一万円だけ自分たちの為に使うという事で話が付いている。
「その事ではなく、タカトシの負担を減らす相談だ」
「そんなこと言っても、最近は私たちも大人しくしてるから、タカトシ君の負担と言えばコトミちゃんくらいじゃないの?」
「確かに下ネタは言わなくなったが、それ以外でも我々はタカトシにだいぶ負担を掛けていると思うが」
「自覚しているのなら、そこを改善すれば良いのではありませんか?」
「スズちゃんだって他人事のように言ってるけど、身長ネタだったり身体的特徴ネタの時はタカトシ君に負担を掛けてると思うんだけど?」
「先輩たちが指摘しなければいいだけなのではありませんかね?」
萩村の影がゆらりと揺れたような気がしたけど、とりあえずその事はスルーして、私たちは本格的な相談を始める。
「タカトシの負担を減らせば、アイツも彼女を作ろうと思うかもしれない。そうなれば我々もチャンスだという事だ」
「ですが、現状を冷静に見れば、タカトシが彼女にするなら森さんだと思いますが」
「サクラちゃんとタカトシ君は一緒にいても自然だし、最近特に仲良しさんだよね~」
お互いに遠慮が無くなってきたのか、以前に増して恋人感が出ているのだ。まぁ森は美少女と言っても差しさわりの無い見た目だし、タカトシの隣にいても霞んだりもしないしな……
「やはり胸なのだろうか……」
「それだけではなく、自然にタカトシの側に寄り添えるのもだと思います」
「後は神様に好かれ過ぎなような気もするけどね~。くじとか殆どの確率でサクラちゃんの勝ちだし」
「じゃんけんは弱いのにな……」
「というか、何でタカトシの事を私たちが話し合ってるんですか?」
「もう少し高校生らしい生活をさせてやりたいだろ? 今だって、酔い潰れた出島さんと暴走してるコトミをまかせっきりなんだから」
私たちの背後に広がるカオスをタカトシに押し付けている自覚がある萩村は、私の言葉を聞いて無言で頷いたのだった。
関係ない人が迷惑かけてるからな……