桜才学園での生活   作:猫林13世

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やりかねないのが怖い


慌てる理由

 タカトシ君とカナちゃんの代わりにコトミちゃんの勉強の監視と、家事をするために、私たち桜才学園生徒会役員女子とカエデちゃんは津田家を訪れた。ちなみに出島さんに「今日の晩御飯はいらない」と電話を入れると悲しそうにしていた。

 

「(出島さんは、後で機嫌を取ってあげないと駄目かな)」

 

 

 仕事っぷりは問題ないんだけど、出島さんは私の事が好きすぎるんだよね……まぁ嬉しいけど。

 

「それじゃあ、私と五十嵐でコトミの勉強を見るから、萩村とアリアは掃除や洗濯物を片付けておいてくれ。くれぐれもタカトシのシャツやパンツを持って帰ろうと思わないように」

 

「そんな事思わないよ~。精々匂いを嗅ぎたいな~くらいだし」

 

「それも問題だと思うんですが……」

 

「そうかな~? このくらいなら許容範囲だと思うけど」

 

 

 スズちゃんとカエデちゃんが険しい表情になったけど、シノちゃんとコトミちゃんは私の気持ちが分かってくれているみたいで「そのくらいなら仕方ない」と言いたげな表情を見せている。

 

「萩村さん、七条さんの監視をお願いね」

 

「分かりました。五十嵐先輩も、コトミと会長の相手をお願いします」

 

 

 タカトシ君がストッパー役として期待している二人が、それぞれ声をかけあって別れた。まぁ私たちだって最近は大人しくしてるんだし、この二人に負担を掛けるような事は無いだろうけどね。

 

「それじゃあまずは洗濯物を畳もうか」

 

「そうですね。先輩はコトミや魚見さんの物をお願いします」

 

「そんなにタカトシ君のパンツに触りたいの~?」

 

「そうじゃねぇよ! 先輩がおかしな行動を取らないようにしただけです」

 

「ほんとにそれだけ~? スズちゃんも、タカトシ君の匂いを嗅ぎたいんじゃないの~?」

 

「そんなわけないわ!」

 

 

 スズちゃんの絶叫に免じて、これ以上からかうのは止めておこう。

 

「それにしても、タカトシ君の用事って何なんだろうね?」

 

「急用としか言いませんでしたからね……」

 

「もしかしてサクラちゃんとデートかな?」

 

「そんな理由でタカトシが私たちに迷惑を掛けるとは思えませんが」

 

「そうだね~」

 

 

 タカトシ君は真面目なので、自分の都合で人に迷惑を掛ける事はしない。急用と言っていたんだから、それはきっと急用なんだろうな。

 

「コトミなら分かるんじゃないですかね? もしくは魚見さんとか」

 

「それじゃあ、カナちゃんにメールで聞いてみよう。まだバイトの時間じゃないだろうし」

 

 

 カナちゃんにメールを送ってから数分後、私たちはタカトシ君の急用を知る事が出来た。

 

「カナちゃんの家の方の用事で、タカトシ君はカナちゃんの代わりにバイトに出る事になったんだって」

 

「それならそういえば良かったのに」

 

「どうも早番だったらしくて、急いでたんじゃないかってカナちゃんは言ってるよ」

 

 

 急に代わることになったんだから、少しくらい遅れても仕方ないとか思えない辺り、タカトシ君の真面目さがうかがえるな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミに勉強を教えていて驚いたことだが、昔のように全て分からないという事にはならずに、ある程度は解けているのだ。これもタカトシやカナが苦労して教え込んだ結果なのだろうが、これだけ出来るのになぜ補習候補なのだろうか……

 

「会長、私の顔に何かついてます?」

 

「いや、そういうわけでないが……」

 

「それじゃあ何で私の顔をジッと見ていたんですか?」

 

「昔のように全てが分からないわけではないのに、どうして補習候補なのかと考えていただけだ」

 

 

 私が正直に告げると、私の隣で五十嵐も頷いた。恐らく同じような事を考えていたのだろう。

 

「私、本番に弱いんですよね~。いざテスト問題を見ると、急に全部分からないってなっちゃうんですよ……その後ゆっくり問題を見て、漸く分かるな~ってなった時には、もう半分くらい時間が過ぎちゃってたりして」

 

「もう少し冷静さを心掛ける事をお勧めする……」

 

 

 コトミの為ではなく、タカトシやカナの為に……

 

「タカ兄やお義姉ちゃんにも言われてるんですけどね~。いざ冷静になろうって思っても、そう簡単になれるものでもないですし……何かコツってないですか?」

 

「コトミは何故テストになると駄目なんだ? 普通に勉強してる分には問題なく出来るようになってきてるというのに?」

 

「さっきも言いましたが、本番に弱いんですよ~。周りの人たちは普通に解けてるのに、私だけまだ出来てないとか考えだしちゃって、終いにはタカ兄に怒られて絶頂する妄想をしちゃったり」

 

「テスト中は止めとけ?」

 

「誰かにバレちゃうかもという緊張感もまた」

 

 

 私とコトミの会話を聞いていた五十嵐が、呆れたような表情で頭を抑える。恐らく私たちの会話が脱線しかかった為呆れたのだろうと理解し、私は一度咳払いをして会話を立て直す事にした。

 

「兎に角、コトミは落ち着けば平均点くらいは取れる下地が出来てるんだから、後はそこに応用や冷静さが加われば普通に優秀な生徒にはなれると思うぞ?」

 

「本当ですか~! それじゃあ、もう少し頑張ってみます」

 

 

 まぁ、あくまでも「普通」に優秀であって、タカトシのように多方面でその才能を発揮する事は出来ないだろうがな……




コトミもマシになってきているとはいえ……

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