桜才学園での生活   作:猫林13世

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中身は変更しました


箱の中身はなんだろな?

 この間のヤンチャタイムは失敗だったので、どうもストレスが残っているな……

 

「ん? あれは……」

 

 

 目安箱が視界に入り、私は先日テレビで見た企画を思い出した。

 

「(あれはいろいろと楽しそうだし、ヤンチャタイムとは別でストレスを解消できるかもしれないな)」

 

「何を見てるんですか?」

 

 

 いつの間にか私の隣にやってきた萩村に、私は自分の気持ちを打ち明けた。

 

「この間テレビで見た『箱の中身はなんだろな?』をやってみたくなってな」

 

「はぁ……じゃあやります? 今日は比較的に暇ですし、タカトシと七条先輩は生徒会室にいましたから」

 

「よし! それじゃあさっそくやるぞ!」

 

 

 私は目安箱と同じ形の箱を用意して、生徒会室へ向かう。もちろん、廊下を走ればタカトシと五十嵐に怒られるし、他の生徒からはトイレを我慢していると思われるので、早歩き程度のスピードでだ。

 

「――というわけで、今から『箱の中身はなんだろな?』を開催するぞ!」

 

「事情は分かりましたが、随分と急ですね……」

 

「シノちゃんって、意外と流されやすいよね~」

 

「べ、別にいいだろ! それじゃあ各自、箱の中に入れるものを用意しよう。五分後に開始だ!」

 

 

 そう言って各自箱の中に入れるものを用意し、私は目隠しをして箱の中に入れる瞬間を見ないようにした。

 

「まずは私からです」

 

「ふむ……」

 

 

 萩村がトップバッターという事で、私は安心して箱の中に手を入れる。これがアリアとかなら、冗談で私が怖がるような物を入れるかもしれないが、萩村と私は、恐れるものが似ているのでその心配はしなくて良いのだ。

 

「ふむ……触れた感じは布だな……ゴムがあり穴が開いている事を考えると……」

 

 

 私は頭の中で二つの物を思い浮かべる。一つは萩村の脱ぎたてパンツだが、そんな事を言えば萩村だけではなくタカトシにも怒られそうだ……そもそも、萩村がそんな物を用意するはずもない。という事は――

 

「シュシュか?」

 

「正解です」

 

 

――もう一つの方で合っていたようだな。

 

「それじゃあ次は私の番だね~。シノちゃん、後ろ向いて、目隠ししててね」

 

「おう、任せろ!」

 

 

 私は再び目隠しをして、アリアが箱の中に何かを入れる瞬間を見ないようにする。

 

「(正直、アリアが何を持ってきたか見当がつかない……以前なら、大人な玩具とかだったんだろうが、タカトシが止めなかったという事を考慮すれば、一般的な物なのだろう)」

 

 

 だが、アリアの私物っていったいなんだ……? お嬢様だと言う事を考えると、私が想像し得ない物を持ってきているかもしれないし……

 

「準備出来たよ~」

 

 

 アリアの合図を受けて、私は目隠しを外しアリアを見る。

 

「(特におかしな感じはしないな……)」

 

 

 アリアの表情からは不審な点は無さそうだったので、私はゆっくりと箱の中に手を入れる。

 

「……ん? なんだこれは……」

 

 

 触った感じは堅い感触なのだが、所々に突起がある。そして何となく冷たい……

 

「……さっきの弁当箱に入っていたイセエビの殻か?」

 

「正解。簡単だった~?」

 

「いや、普通入れないだろ……」

 

 

 いくら即席で用意した箱とはいえ、匂いが強い物を入れるのは避けるべきなんじゃないか? まぁ、タカトシが止めなかったのを考えれば、多少のオイタで済まされるのだろうけども。

 

「それじゃあ、次は俺ですね」

 

「タカトシか……皆目見当もつかんな」

 

「普通の物しか持ってませんよ」

 

 

 そう言ってタカトシが箱の中に入れるものを用意し始めたので、私も目隠しをして合図を待つ。

 

「……どうぞ」

 

「うむ」

 

 

 この三人の中で、一番何を入れるか見当がつかないタカトシだから、私は恐る恐る箱の中に手を入れる。万が一生き物だったらどうしようとも思ったが、噛みついてこなかったので、生き物ではないようだ。

 

「……? どこかで触った事があるような……だが、なんだったか思い出せない……」

 

 

 アリアがイセエビの殻を入れた後だからなのか、タカトシが箱の中に入れたものはビニールの中に入っている。その所為で実際の感触が分からないのもあるが、絶妙に思い出せない物を用意してきたんだろうな……

 

「……駄目だ、分からない。ヒントをくれ」

 

「ヒントと言いましても、会長も持ってると思いますよ」

 

「私も持ってる……? あっ!」

 

 

 そこで私は、確認のためもう一度箱の中の物を触り確信した。

 

「携帯電話だ!」

 

「正解です」

 

 

 箱の中から出てきたのは、ジップロックに入ったタカトシの携帯電話。匂いやエビの汁などが付かないようにしたのだろうが、それがより難易度を上げていたのだ。

 

「これで満足しましたか?」

 

「なかなか楽しかったぞ! だが、まだ私が物を入れてないからな。タカトシ、君が当ててくれ」

 

「俺が? まぁいいですが……」

 

 

 そう言ってタカトシは後ろを向き、瞼をきつく結んだ。その隙に私は箱の中に私物を入れ合図を送った。

 

「……ハンコですか?」

 

「一瞬で見抜くとは……もうちょっと悩んでくれるかと思ったのに」

 

「いやまぁ、このくらいなら分かりますよ」

 

「お前はそういうやつだったな……だが、楽しかったな! またやろうじゃないか」

 

「それじゃあ、この箱は棚に置いておくね~」

 

 

 定期的にやることになり、あの箱はゴミから生徒会の備品へと昇格したのだった。




アリアの場合、そのまま説教コースになるので……

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