桜才学園での生活   作:猫林13世

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大福問題

 今日は生徒会役員の女子だけでお出かけをしている。本当はタカトシも誘ったのだが、都合がつかないということで女子会になったのだ。

 

「あれ、アリア?」

 

 

 さっきまで隣を歩いていたアリアの姿が見当たらず、私はキョロキョロと辺りを見回す。すると見知らぬ男性に声を掛けられている光景を目の当たりにした。

 

「ナンパか?」

 

 

 普段はタカトシが側にいる為にあまりナンパされているところを見かけないが、あの見た目ならナンパされても不思議ではない。むしろしてこない男共は枯れているのではないかとすら思える身体だしな……

 

「ゴメン、シノちゃん」

 

「何だったんだ?」

 

「モデルやらないかって誘われちゃった」

 

「あー」

 

 

 確かにアリアの見た目なら何を着ても似合うだろうし、あっという間に人気モデルの仲間入りをするだろうな。

 

「どうやって断ろうか悩んでたんだけど、名刺を見たらウチの系列グループの事務所だったから名前を言ったら諦めてくれたよ」

 

「それでペコペコ頭を下げていたのか」

 

 

 去り際に頭を下げていた男性を見て、こっ酷く振られたのかとも思ったが、グループ総帥のご令嬢だと分かって慌てていたのか……

 

「なあ萩村……萩村?」

 

 

 アリアが合流したので萩村に声を掛けようとしたら、今度は萩村の姿が見当たらない。人ごみに呑み込まれたのかとも思ったが、萩村の姿はすぐに見つかった。

 

「スズちゃんも声を掛けられてるね」

 

「道でも尋ねられているのだろうか?」

 

 

 萩村の事だからモデルに誘われているわけではないだろうし、相手は女性だからロリコン紳士でもない。そうなると道を尋ねられているくらいしか理由がないだろう。

 

「お待たせしました」

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ……迷子? って声を掛けられてました」

 

「あぁ……」

 

 

 私たちは萩村が高校二年生だと知っているから思いつかなかったが、私服姿の萩村は小学生に見えなくもないから、一人でいると思われて声を掛けられてたのか……

 

「というか、タカトシがいないだけで声を掛けられる率が上がってないか?」

 

「いろいろとストッパーだったんでしょう、タカトシの存在が」

 

「タカトシ君、いい意味でも悪い意味でも目立つもんね~」

 

「悪い意味?」

 

「ナンパ目的の男の人たちにとって」

 

「あぁ……」

 

 

 ナンパ目的の奴らにとって、タカトシは超強力な蚊取り線香って事か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園交流会が行われる為、今日は桜才学園に英稜生徒会の二人がやってきている。

 

「タカ君」

 

「魚見さん、一応学校内ですから呼び方を改めてもらえませんかね?」

 

「今は私とタカ君の二人しかいないんだし、生徒会室内なら別にいいでしょ?」

 

「切り替えがしっかりと出来るなら良いですが、言っておかないと忘れるでしょう?」

 

 

 実際生徒会長交換の際、義姉さんは予算会議の場で俺の事を愛称で呼んでちょっとした問題が発生したのだ。まぁ、事情を話せばすぐに納得してくれたから、大した問題ではなかったのだが。

 

「そんな事より、はいタカ君」

 

「大福?」

 

 

 義姉さんが鞄から大福を取り出してこちらに差し出す。何故鞄に大福が入っていたのかも気になるが、何故こちらに差し出したまま手渡そうとしないのだろう?

 

「あーん」

 

「……そういう事ですか」

 

 

 義姉さんの意図を理解し、俺は渋々口を開ける。こうなった義姉さんをどうにかするのは骨が折れるので、素直に従っておいたほうが疲労が少なく済むのだ。

 

「おっ、おやつタイムか?」

 

 

 義姉さんが人の口に大福を入れたタイミングで会長たちがやってきた。狙ったわけじゃないだろうが、タイミング悪すぎるな……

 

「いえ、タカ君に口移しで食べさせてもらうところです」

 

「なにっ!?」

 

「そんな事聞いてませんが? というか、大福が食べたいならどうぞ」

 

 

 義姉さんに大福を差し出す。俺は別に食べたかったわけじゃないし、義姉さんが食べたいというならそっちの方がいいだろう。

 

「えっと……これってタカ君がかじった大福ですよね?」

 

「そんなに食べてないですし、義姉さんが構わないならどうぞ」

 

 

 もう一度義姉さんに大福を差し出すと、義姉さんは少し恥ずかしそうにしながらも口を開けた。同じことをしろという意味なのだろうと理解し、俺は義姉さんの口の中に大福を入れた。

 

「タカ君の味がします」

 

「どんな味ですか……って、皆さんは何故そんな顔をしてるんですか?」

 

 

 視線を義姉さんからずらすと、四人が鋭い視線を俺と義姉さんに向けている。

 

「随分と甘々な空気だったな」

 

「はぁ? 大福が欲しいって言うからあげただけですが」

 

「タカトシ君と間接キスだけでも羨ましいのに、あまつさえ『あーん』までしてもらうなんて、カナちゃんズルいよ!」

 

「私だってタカ君がこんなに積極的になるなんて思ってなかったですよ」

 

「何だって言うんですか……」

 

「これでタカトシとキスした事ないのは私だけになったわけね……」

 

「待てっ! 私もしてないぞ!」

 

「会長はガラス越しにしたじゃないですか。私はガラス越しですらしたこと無いんですが?」

 

「サクラ、何とかしてくれ」

 

「タカトシ君の所為でしょ」

 

 

 助けを求めたが、サクラにそっぽを向かれてしまった……間接キスくらいで大袈裟じゃないのか? 確かに行儀は良くないとは思うけど……




さすが無自覚ラブコメ野郎……

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