桜才学園での生活   作:猫林13世

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絶対にわざとだ


カメラに映ったもの

 ちょっとした用事を済ませて生徒会室に戻ってくると、部屋の中が明るかった。いや、もともと暗い部屋ではないんだが、そういう事ではない。

 

「電気を消すの忘れてたのか……」

 

「まぁ、すぐに帰ってくるつもりでしたから仕方ないのではありませんか?」

 

「みんなちょっと出るだけだからって思ってたんだと思うよ」

 

 

 私の後ろからやってきた萩村とアリアの言葉に、私も生徒会室を出て行った時の事を思い返し、確かにちょっとくらいと思ったのを思い出した。

 

「まぁまぁ、このような失敗は誰にでもある事ですよ」

 

「畑……何の用だ?」

 

 

 どことなく嫌な感じを覚え身構えたが、時すでに遅し……

 

「実はカメラをこの部屋に忘れちゃって。うっかり録画状態だったんですよ」

 

「絶対に嘘だろ!」

 

「では私が嘘を吐いている証拠を」

 

「そ、それは……」

 

 

 畑の事だから確信犯だと言い切れるだけの根拠はあるが、証拠と言われると困ってしまう。そもそも嘘を吐いた証拠など見つける方が難しいのだ。

 

「まぁとりあえず中を確認してみましょう」

 

 

 そう言って畑は録画した映像を再生し始める。特に疚しい事はしてなかったはずだし、見られても問題ないだろう。

 

「シノちゃんが腕組みしてる」

 

「腕をせわしなく組み替えてますね」

 

「しっくりしないのでしょうか」

 

「………」

 

 

 どうやら三人には分かっていないようだが、この時私は腕を組みかえるフリをして乳腺を刺激してどうにかバストアップ出来ないかと試行錯誤していたのだ。

 

「(皆には黙っておこう……)」

 

「次はスズちゃんが生徒会室にやってきたね」

 

 

 私が退室してすぐに萩村がやってきたようだが、当の本人は興味なさそうにカメラから離れていった。

 

「おっ、萩村が脱ぎだした」

 

「しかも捲って肌を露出してる」

 

「そ、そんな事してません!」

 

 

 慌ててカメラに駆け寄ってきた萩村にネタ晴らしを行う。

 

「(制服を)脱いでる」

 

「(袖を)捲って肌を露出してる」

 

「正確に物事を伝えろ!」

 

「でも慌てたって事は、してみたいって思った事があるんじゃないの?」

 

「そんな事あるわけ無いだろ!」

 

 

 憤慨した萩村がカメラを取り上げ停止しようとしたが、次のアリアがやってきたのでその指が止まった。

 

「七条先輩の事ですから、何かとんでもない事をしてるんじゃないですか?」

 

「そんな大したことしてないけどな~」

 

 

 私も興味があったので萩村の頭上からカメラを覗き込む。何か取り出そうとしているのか?

 

「って!? 何でブラを取り出してるんだ!」

 

「脱いでどうするんですか!」

 

「違う違う。ちょっと暑いなって思って、出島さんが用意してくれた通気性がいいブラに替えようと思って」

 

「こんなところで着替えないでくださいよ!」

 

「……おい、何故ブラを置いたまま何処かに行った」

 

「ちょっと用事を思い出して、部屋を出たんだよ」

 

「……そこにぶら下がったままのブラって、七条先輩のだったんですね」

 

 

 さっきから気になっていたが、確かにホワイトボードの上にブラが引っ掛かっている……あの大きさ、私には縁がないだろうな……

 

「おっ、津田副会長がやってきましたね」

 

「タカトシ君に見られちゃったって事になるのかな」

 

 

 最後に生徒会室にやってきたタカトシは、ホワイトボードの方を向いている。

 

「もしかしてスクープゲット?」

 

「何があっても目をつぶろう」

 

 

 タカトシがそんな事するわけ無いと分かっているが、アイツも年頃の男子だ。周りの目を気にしなくていい状況なら何をするか分からないしな……

 

「一瞬見ただけで興味を失ったかのように作業し、何か用事を思い出し部屋を出て行きましたね」

 

「ある意味いつも通りですか……つまらないです」

 

「タカトシ君、私の胸に興味ないのかな……」

 

 

 アリアが零したセリフは聞かなかった事にして、私は録画したデータを削除して畑にカメラを返す。

 

「次こんなことをしたら容赦なく新聞部を活動休止にしてやるからな」

 

「だから、ちょっとした失敗ですよ」

 

「あれ? 皆さんお揃いで何をしてるんですか?」

 

「タカトシ君、私の胸見たい?」

 

「は?」

 

 

 アリアの唐突な質問に首を捻ったタカトシだったが、畑がいる事で全てを察したように目を瞑った。

 

「畑さんの隠し撮り動画でも見たんですか? というか、七条先輩も人が来ないからってこんなところに下着を置きっ放しにしないでください」

 

「津田副会長はこの下着が七条さんのだと分かったんですね」

 

「まぁ、何度か洗濯したことありますから」

 

 

 つまり、タカトシには私たちの下着のサイズを知られているという事か……

 

「美人の先輩のブラを見ても興奮しないとは……津田副会長はh――」

 

「どうやら死にたいようですね」

 

「じょ、冗談じゃないですか……じゃあ!」

 

 

 タカトシの殺気から逃げるように生徒会室から出て行った畑を見送って、私たちはホッと一息吐いた。

 

「ところでタカトシは何処に行ってたんだ?」

 

「横島先生が生徒会予算で一人飲み食いしたので、その説教をしに」

 

「何だそれ?」

 

「この領収書、巧妙に隠してますが完全にプライベートのですし、問い詰めたら飲み代だったと白状したのでついでに説教してたんです」

 

「……馘で良いんじゃないか?」

 

「ほんの出来心で、回収するつもりだったが見つからなかったと言ってました。とりあえず厳重注意で済ませましたので、次があれば理事長に報告します」

 

 

 相変わらず会長の私より会長らしいが、タカトシの報告に私たちは注意を強めようと心に決め頷きあった。




下着程度では動じないタカトシ

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