桜才学園での生活   作:猫林13世

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そりゃ乱れるわな……


乱れる心

 最近校内の風紀が乱れてきている気がする。天草さんや七条さんといった、主だった問題児たちが大人しくなってきているのに、この乱れはいったい何なのだろう……

 

「失礼します」

 

 

 風紀の乱れについて生徒会と話し合おうと思い生徒会室にやってきたが、生憎タカトシ君と萩村さんは不在で、室内にいたのは天草さんと七条さん、そして横島先生の三人だった。

 

「五十嵐か。何かあったのか?」

 

「いえ、少しご相談をと思っていたのですが、また改めて相談に――」

 

「カエデちゃん的には、私たちじゃ頼りないってこと~?」

 

「そ、そういうわけではないのですが……」

 

 

 確かにこの相談内容をこの二人にしても良いのだろうかとは思ったが、頼りないと思ったわけではない。というか、横島先生がいたから何か大事な事を話しあっているのだと思って出直そうと思ったんだけど……

 

「五十嵐はタカトシがいなくて不満だったんじゃないか?」

 

「そんな不純な気持ちはありません!」

 

「おっ、五十嵐も津田狙いなのか。こりゃアイツの貞操も何時まで無事か分からないな」

 

「教師がそんな事を言わないでください! そもそも、私の相談事に横島先生も無関係というわけではないのですがね」

 

「私が? いったい何だって言うんだ」

 

 

 まるで風紀を乱している自覚がないような横島先生に、私は少し苛立ってしまう。普通なら取り締まるべき側である教師が、風紀を乱してる自覚がないなんて……

 

「この数ヶ月、横島先生が男子生徒に声をかけ、無人教室に連れ込もうとしているという報告が多数風紀委員に上がっています。その事について生徒会の方々と話し合いをと思ってきたのです」

 

「別に喰ってないぞ? 殆ど袖にされてるからな」

 

「殆どという事は、何回かは襲ったという事ですか?」

 

「双方合意だ。襲ったわけじゃないぞ」

 

 

 天草さんと話す横島先生を睨みつけるが、横島先生は私の視線に気付いていないのか天草さんとの話を続ける。

 

「最近出会いが無くてな。手ごろなところで出会えるならそれでも良いかなと思って」

 

「そんな気軽に男子生徒を狙わないでください」

 

「私は誘ってるだけで、強引に襲ったりしてないぞ。だいたい、そんなことすれば津田に怒られるしな」

 

「強引じゃなくても、怒られるでしょうが!」

 

 

 私の癇癪に、横島先生だけでなく天草さんと七条さんも驚いた表情を浮かべる。何故私が怒鳴ったのかが分からない、と言いたげな顔だ。

 

「だいたい、校内恋愛禁止だと生徒に言っておきながら、自分は校内で出会いを探すなんて最低です!」

 

「別に恋愛をしたいわけじゃない。心が繋がってなくても、身体さえ繋がっていればそれで良いんだ」

 

「なお悪いじゃないですか! だいたい、神聖な校内でそんな事――」

 

「ゴメンなさい、カエデちゃん。実は私、昔の癖でカエデちゃんの三つ編みを見るとお尻の穴がムズムズしちゃってたの」

 

「っ!?」

 

 

 七条さんのカミングアウトで、私は意識を失いそうになる。まさか私の髪型が風紀を乱す原因になっていたなんて思っていなかったのもあるけど、あまりにも衝撃が大きすぎたからだ。

 

「確かに五十嵐の髪型は、ア○ルビーズを想像させるよな」

 

「あれを男子生徒の穴にぶち込んで調教するのか……五十嵐もなかなかの鬼畜だな」

 

「そ、そんな事しません! というか、そんなことを堂々と言わないでください!」

 

 

 私が大声を上げたタイミングで、生徒会室の扉が開かれ、何事かと言いたげな表情のタカトシ君と萩村さんが部屋に入ってきた。

 

「何かあったんですか?」

 

「いやなに、五十嵐の髪型がア○ルビーズみたいでムズムズするって話してただけだ」

 

「またくだらない事を……というか横島先生」

 

「何だ?」

 

 

 タカトシ君がため息を吐いて、厳しい表情を浮かべたので横島先生の方も居住まいを正す。どうしてタカトシ君相手にしかこの態度を取れないのだろう……

 

「次何か問題を起こしたら、三ヵ月の減俸とボーナスカットだそうですので」

 

「な、何で津田がそんな事を知ってるんだ?」

 

「あぁ、先ほど学園長に会いまして、タカトシから伝えた方が効果があるだろうって言われてました」

 

「た、確かに津田から言われた方が衝撃が大きいが、私は別に問題行動を起こしたりは――」

 

「自覚してないのが問題なのではありませんかね? 反省の色なしということで、今すぐ学園長に報告しても良いんですが」

 

「は、反省してます! だから報告するのだけは……それと五十嵐。たぶんお前の髪型を見て興奮してる男子生徒もいると思うから、暫くは結ばない方がいいぞ!」

 

 

 タカトシ君から逃げるようにそれだけ言って横島先生は生徒会室から去って行った。

 

「五十嵐、悪い事は言わないから、私からも髪を下ろす事を勧めておく」

 

「ふ、風紀を守る為にも、そうした方がい良いのでしょうか?」

 

 

 私の髪型が風紀を乱す原因になっているのならば、少しは考えた方がいいんだろうな……

 

「なんだかよく分かりませんが、カエデさんが悪いわけではないと思いますが」

 

「まぁ、邪な考えをする連中が多いからね……」

 

 

 タカトシ君と萩村さんは私の所為じゃないと思ってくれているようだけど、暫くは下ろしてみようかな……




横島先生はしっかりと反省した方がいい

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