桜才学園での生活   作:猫林13世

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昔やった事あったなぁ……


暗闇の中で

 家事スキルを磨くためにマネージャーになったんだけど、最近では柔道部の皆さんのお手伝いが出来る事に喜びを感じるようになっている。まぁ、まだ「役に立つ」レベルに達してないので、早く成長したいんだけどね……

 

「主将、例の件どうなりました?」

 

「大丈夫。責任は私が取るから!」

 

「(おぉ、カッコいい)」

 

 

 ムツミ先輩が言うと説得力があってよりカッコいい感じに聞こえるなぁ……私が知っている限り、あの説得力を出せるのはムツミ先輩とタカ兄くらいだろうけど。

 

「おいコトミ、股割り手伝ってくれ」

 

「はーい」

 

 

 最近では選手の手伝いも任され始めているので、私はトッキーの背中を押す役に就く。さすがに全体重をかけたりしないけども、内心やってみたいと思ったりもしているんだよね。

 

「いててっ、(いろいろと)裂ける!」

 

「大丈夫、責任は私が取る!」

 

「っ!?」

 

「あれ? 使いどころ間違えた?」

 

 

 何だか微妙な空気が流れ始めたのを感じ、私はトッキーに尋ねる。

 

「人の身体を裂いて責任を取るって、なんだか違うだろ? そもそもお前も私も女だし」

 

「あー、そういう風になっちゃうのか~。なんだったら、私が責任を以てトッキーをタカ兄のお嫁さんに――」

 

「タカトシ君のお嫁さん!? トッキーとタカトシ君はそんな仲なの!?」

 

「……違います」

 

 

 ムツミ先輩が凄い勢いで食いついてきたのを受けて、トッキーが私に冷めた視線を向けてくる。なんだか癖になりそうな感じもするけど、とりあえずムツミ先輩を落ち着かせる方が先か……

 

「別にトッキーはタカ兄と深い仲になりたいわけじゃないですよ」

 

「そっか……なら安心だね」

 

 

 ムツミ先輩が何に安心したのかはあえてツッコまないでおこう。そもそもムツミ先輩自身が理解してないだろうしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 随分と集中していた所為か、気が付いたら辺りが真っ暗になっていた。

 

「今日は遅くなっちゃったなー」

 

「夜道って何か出てきそうで怖いねー、モンスターとか」

 

「お前はゲームのやり過ぎだ」

 

 

 コトミは相変わらずゲーム脳なようで、仮定の話でもあり得ないだろう可能性を上げてきた。最近少しはマシになってきたと思ってたんだが、根本的には変わってないようだな……

 

「ピンチの時に王子様が助けに来てくれる展開って、女の子の夢だよね」

 

「そーか?」

 

 

 そもそも主将は助けてもらわなくても大抵の相手には勝てそうなんだけどな……まぁ言わないけど。

 

「おじさま? 主将はおじさん好き?」

 

「違うけど、そのくらいがリアルだな」

 

 

 モンスターや王子様に比べれば、おじさまはまだリアルだろう。だがまぁ、おじさまが倒せるくらいの相手なら、主将が後れを取るはずもないんだが……

 

「ありゃ、門閉じてる」

 

「乗り越えちゃお!!」

 

「誰かに見られたらどうするのさ」

 

「その時は謝ればいいって」

 

 

 中里先輩の忠告を軽く流し、門を乗り越えるべく飛乗った主将が、慌てて門から降りた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「見られた……」

 

「はっ?」

 

 

 主将の言葉に私たちは門の向こう側に誰かいる事に漸く気が付き、目を凝らしてその相手を確認する。

 

「あっ、タカ兄」

 

「何だ、柔道部はまだ残っていたのか?」

 

 

 コトミは兄貴に声をかけたが、反応したのは生徒会長だった。

 

「タカ兄、ムツミ先輩のパンツ見たの?」

 

「人の気配があるのは分かってたから、門を開けようとしたら三葉が乗り越えようとする気配を感じたから、とりあえず視線はそらしてた」

 

「それで私の事見詰めてたんだね~」

 

「いえ、別に見詰めてはいませんが」

 

 

 相変わらず常人とはかけ離れた能力を持ってる人だな……普通気配なんて分からないと思うんだが。

 

「とりあえず今開けるから、柔道部は少し待っていてくれ」

 

「早くしてくださいね~」

 

 

 会長の言葉にコトミが無邪気に応える。柔道部の一員なのかと問われれば微妙だが、マネージャーだから別に良いのかもしれないけど、普通主将が応えるべきなのではと思ったが、主将は兄貴にパンツを見られたかもしれないと未だにあわあわしている。

 

「大丈夫だって、ムツミ先輩。タカ兄にならむしろ見せつけるつもりで挑まないと勝てませんよ?」

 

「お前は何を言ってるんだ!」

 

「えっ? だってタカ兄はアンラッキースケベだから、率先して見せようとしなければ見てもらえないから」

 

「兄貴に怒られた方がいいんじゃないか?」

 

 

 ただでさえあの人に苦労を掛けているだろうに、これ以上酷い事を言うのは可哀想だ。その考えは私だけでなく、柔道部の大半が思っている事なのだが、迷惑を掛けている本人がその事を自覚していないのだ。

 

「待たせたな」

 

「ムツミは後日、門を乗り越えようとした件で生徒会室に来てもらうわね」

 

「ハイ、すみませんでした……」

 

「まぁまぁスズちゃん。私たちにパンツを見られたので、ムツミちゃんの件は不問にしてあげようと」

 

「活発少女の白パンはなかなかそそるものがあるな」

 

「会長、タカトシが物凄い感じで睨んでますが」

 

「……今後同じような事をしないと約束できるなら、出頭はしなくてもいいぞ」

 

「反省してます……」

 

 

 うちの学校、兄貴がいなかったら駄目だったかもしれないな……




友達と二人でまず友達が外に出て、自分がチャリを持ち上げて外に出し、最後に自分が飛び越えた記憶があります

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