桜才学園での生活   作:猫林13世

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多少ゾッとするのは仕方ない


写真の真相

 生徒会室で作業をしていたら、突然ノック音が聞こえた。

 

「はて、今日は会議の予定はなかったはずだが……」

 

 

 本来生徒会室は関係者以外立ち入り禁止なのだが、ここ最近は用が無くても遊びに来るヤツもいるから、今回もそんな感じだろうと思いながら扉を開くと、コトミが立っていた。

 

「コトミ、何か用か?」

 

「タカ兄にちょっとお願いがありまして……」

 

「タカトシに?」

 

 

 コトミがやってきたという事を気配で分かっていたのか、タカトシはこちらに一切興味を向けていない。この対応を見る限り、コトミの「お願い」というのはろくでもない事なのだろうな……

 

「とりあえずタカ兄、これ差し入れ。皆さんにもどうぞ」

 

「ちょうど休憩にしようと思っていたところだ。よく分かったな」

 

「ふっ、私には人の心を読む力があるので」

 

「会長たちを懐柔してお願いを聞かせるよう援護射撃を狙っただけだろ」

 

「ぎくっ!?」

 

 

 タカトシの心の裡を見透かしたようなツッコミに、コトミは声に出して驚いた。まぁ、人の心を読むのはコトミではなくタカトシだしな……

 

「それで、何の用だ」

 

「明日トッキーとマキと遊ぶので、お小遣いの前借をお願い出来ないでしょうか」

 

「少しは無駄遣いを控えろといっただろうが」

 

「はい、ゴメンなさい……」

 

「そもそも、先月も先々月も前借をしてたはずだが」

 

「その通りです……」

 

 

 タカトシが説教モードに入ったので、私はコトミの隣から自分の席に戻る。あの場所にいると私まで怒られてるような気になるんだよな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見回りをしていると、畑さんが私たちを見つけて慌てて写真を隠した。

 

「何を隠したんですか?」

 

「いえ、皆さんには関係ないものです」

 

「そんな事言って、またろくでもない事を考えてるんじゃないんですか?」

 

 

 普段はタカトシにまかせっきりなので、今日くらいは私が畑さんを問い詰めようと決意して話しかけたので、私も必要以上にぐいぐい畑さんに詰め寄る。後ろでタカトシが呆れてるような気もするけど、少しくらいはタカトシの負担を減らしたいし……

 

「またデータを消されたくないからって、テキトーな事言って誤魔化そうとしてるんじゃないですか?」

 

「そんな事はありませんが、貴女の事を思って見せないようにしてるんです」

 

「私の為? まさか私の着替えシーンでも盗撮したんですか!?」

 

「いえ、貴女の心霊写真だけど」

 

 

 待ってましたと言わんばかりのタイミングで、畑さんが隠した写真を私に見せてきた。限界まで詰め寄っていたので、私は取り出された写真をしっかりと見てしまった……

 

「そ、そういう事は早くいってくださいよ」

 

「おっ、これって資料室の掃除をしてる時の写真か」

 

「えぇ」

 

「加工したんじゃないの~?」

 

「してませんよ」

 

 

 か、加工してないって事は本物の心霊写真という事?

 

「(も、もうあの部屋には入れないわね……)あれ? 携帯が無い……」

 

「掃除の時壊したら大変だからって言って、棚の上に置いてなかった?」

 

「じゃあ資料室だな」

 

「うわぁ!?」

 

 

 早速資料室に用事が出来てしまった……

 

「それじゃあさっそく行くぞ! 心霊写真が本物かどうか突き止めてやる!」

 

「何でそんなにノリノリなんですか……私は出来る事なら行きたくないんですけど」

 

「スズちゃんは怖いの~?」

 

「行ってやろうじゃないの!」

 

「………」

 

 

 七条先輩の分かりやすい挑発に乗った私を、タカトシが微妙な顔で見つめている……何を言いたいのかは私にも分かるけど、そんな目で見ないで……

 

「とりあえず中を確認しよう」

 

 

 資料室に到着して、私と会長とで資料室の中を確認するために、ゆっくりと扉を開け中を覗く。

 

「うわぁっ!? いる!?」

 

「……ん? この顔、どことなく横島先生に似てないか?」

 

「本当だ~」

 

 

 窓に写っている顔が横島先生のものだという事はつまり……

 

「生霊っ!?」

 

「落ち着け」

 

 

 さすがに取り乱し過ぎたのか、タカトシが冷静にツッコミを入れてくれた。

 

「とりあえず横島先生に聞きに行くか!」

 

「そうですね。このままでは記事に出来ませんので」

 

 

 ノリノリで職員室に向かう会長と畑さんの後ろで、私は生霊ではありませんようにと心の中で祈っていた。

 

「……確かに私の顔だな」

 

「な、何でそんなところに先生の顔があるんですか?」

 

 

 真相を知りたくないと願う一方で、ここで聞かないと今日寝られなくなるんじゃないかという不安から、私は勇気を出して横島先生に尋ねる。

 

「外から掃除の様子を見てたら、ガラス豚鼻プレイをしたくなって、ファンデーションがついちゃったんだな」

 

「なーんだ」

 

「それじゃあこれは心霊写真じゃなくて、ちょっとしたホラー写真として掲載します。少し手を加えて、ゾっと出来るような写真に」

 

「捏造は駄目だと言っているじゃないか」

 

「じゃあ、廊下をビクビクしながら歩いてる萩村さんの写真を、トイレを我慢してるシーンとして掲載するのは?」

 

「うーん……駄目だな」

 

「即答しろぅ!」

 

 

 終始呆れ気味なタカトシが印象的だったけども、とりあえず無事に携帯を回収出来、心霊写真の謎も解決出来たので、今日はぐっすり眠れそうね。




やっぱり駄目教師だな……

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