桜才学園での生活   作:猫林13世

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萩村一人じゃ厳しいな……


別荘での一時

 ビーチでの勝負は結局五分五分で終わってしまったが、一時休戦という事で七条家が保有している別荘で一泊する事になった。だが――

 

「ギャー!? 蛇口から血がー!!」

 

「赤さびだよ。最近使ってなかったから仕方ないね」

 

 

――とか。

 

「冷蔵庫から血が!!」

 

「トマトジュースが倒れてた」

 

 

――とか。

 

「タンポンに血が!!」

 

「ひゃーー!」

 

「……スズ、もう何か、流れで怖がってない?」

 

 

 ……終いには出島さんにからかわれてタカトシに呆れられちゃうし。お世話になるから文句は言えないけど、もう少し別荘のメンテナンスをちゃんとしておいてくれても良かったんじゃないですかね。

 

「皆様、お風呂の用意が出来ましたのでご案内します」

 

「じゃあ俺は、晩飯の下ごしらえでもしてますよ」

 

「誰を食べるおつもりなのですか?」

 

「アンタは何の話をしてるんだ?」

 

「あぁ! タカトシ様の視線が癖になる!」

 

 

 いろいろとダメな人な出島さんはタカトシに任せて、私たちは浴場に向かう事にした。別に案内されなくても七条先輩が知ってるし、そもそも案内板が出てるからね。

 

「……ム!? あ、何だ疲れてるのかな」

 

「どうしたんですか?」

 

 

 案内板の前を通り過ぎたタイミングで会長が大声を出したので、私は足を止めてその真意を問う。

 

「矢印が食い込ませパンツに見えてしまった……昔の癖が出てしまったのかな」

 

「深刻ですね……というか、タカトシがいないところでも気を付けてくださいよ」

 

 

 出島さんの相手をタカトシに押し付けた罰なのか、会長たちの相手は私がしなければいけなくなってしまった。森さんは魚見さん専門だしな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君が別行動なので、英稜三、桜才三の計六人でお風呂に入る事になった。それにしてもこんなに広いお風呂があるなんて、さすが七条家だなぁ……

 

「お風呂に入ると、温泉卵食べたくなるなー」

 

「そうですか?」

 

 

 天草さんに萩村さんが興味なさげな相槌を打つ。既にツッコミ疲れなのか、萩村さんの顔色はあまり良くない。

 

「卵と言えば、子供の頃スーパーで買った卵を孵化させようとした事あります。思い出したら恥ずかしくなってきますが」

 

 

 少しでも萩村さんの気を紛らわせようと、私は昔の失敗談を語る。どうやら興味はこっちに向いてくれたようで、七条さんが話題に食いついてきた。

 

「それ、私もやったことある」

 

「本当ですか?」

 

「うん。でも、入らなくて断念したよ」

 

「私はそこまでやってない!!」

 

 

 というか、何でそっちに話が流れて行ってしまうんでしょう……やっぱり最強のストッパーであるタカトシ君がいない所為なのでしょうか?

 

「そもそも卵なら毎月――」

 

「その話題はここまでだ!」

 

 

 魚見会長が話題に加わろうとしたので、私は強制的に話題を打ち切り、先に浴場から逃げ出した。後ろから萩村さんの視線が突き刺さってきたけど、これ以上この場にいたら危険だと警鐘が鳴っているのだ。

 

「ん? サクラ……走ってきてどうしたんだ?」

 

「い、いえ……タカトシ君がいないとあの人たち、昔のままだから逃げてきた」

 

「やっぱりか……とりあえず、水飲むか?」

 

 

 息を荒げて膝に手をついていた私の前に、水の入ったコップが差し出される。相変わらず用意がいい人だな……

 

「ありがとう……ふぅ、落ちついた」

 

「さすがに風呂の中まで面倒見れないからな」

 

「そもそも一緒に入れないよ」

 

「そうだな」

 

 

 タカトシ君の冗談に、私は漸く落ち着きを取り戻した。やっぱり、タカトシ君が側にいてくれると安心出来るんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ君と出島さんが用意してくれた夕食、バーベキューを堪能して、私たちは寝室に案内された。ちなみに、当然だけどタカ君は別室に案内され、その部屋に忍び込もうとした出島さんが庭に吊るされている。

 

「ん~……」

 

「シノちゃん、寝付けないの?」

 

「枕変わるとなー。前は問題なかったんだが、オーダーメイドの枕を作ってからというもの、外泊がきつくなってきた」

 

 

 この間アリアっちと一緒に枕を作ったって聞いてたけど、そんなに使い勝手が良いんだね。

 

「やっぱり枕は使い慣れている物が一番ですよね」

 

 

 実を言うと私も寝付けなくて困っていたので、シノっちたちが会話を始めてくれたお陰で、気が紛らわせることが出来る。

 

「――というわけで、タカ君、腕枕よろしく」

 

「……何で呼び出されたのかと思いましたが、このボケの為ですか? 別に起きてたから良いですが、こんな時間に呼び出しておいて何をするのかと思ったら」

 

 

 私の懇親のボケにシノっちとアリアっちは驚いた顔をしたけども、タカ君は何時も通りの冷静な表情で私に説教を開始する。

 

「というかタカ君。こんな時間に異性がいっぱいいる部屋に連れ込まれたっていうのに、何の期待もしてなかったの?」

 

「何の期待をしろと言うんですか……というか、文化祭の件はどうするつもりなんですか?」

 

「「あっ……」」

 

 

 タカ君の言葉に、私だけでなくシノっちも反応を示す。すっかり忘れていたのはどうやら私だけではなかったみたいですね。

 

「重要な事を私たちだけで決めては駄目だろう」

 

「では、今度は学校対抗で勝負ですね!」

 

 

 タカ君の非難めいた視線から逃げる為に、私とシノっちは事を盛大にして誤魔化したのだった。




結局何も解決してない……

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