桜才学園での生活   作:猫林13世

530 / 871
ほんと残念だ……


残念な思考

 タカ兄たちがいないので、私は久しぶりに昼頃までゴロゴロしていたんだけど、不意に物音を聞いた気がして飛びあがった。

 

「まだタカ兄が帰ってくる時間じゃないし、お義姉ちゃんは予定があるって言ってたから来るはずない……もしかして泥棒さん?」

 

 

 もし男の泥棒さんだったら、見つかった時点で捕まえられてそのまま犯されたりされちゃうんだろうな……それを避ける為には――

 

「何か武器になるものは……」

 

 

 部屋中を探し回った結果、水鉄砲を見つける事に成功した。相手を倒す事は出来なくても、少し隙を作るくらいならこれでも十分だろう。その隙に家を飛び出して、近くにいる人に助けを求めれば、私の処女は守られる。

 

「でも、武器はあったけど弾(水)がなぁ……」

 

 

 二階にはトイレもないし、空っぽじゃ脅しにもならないだろうしな……

 

「うーん……ん? トイレ……はっ!」

 

 

 ちょうどもよおしてきたので、私はそれを水鉄砲に詰めようと思い立ったが、さすがにJKの聖水を泥棒さんにぶちまけても喜ばれるだけかもしれないし……

 

「仕方ない。空砲で誤魔化せますように」

 

 

 私は物音を立てないように階段を降り、泥棒さんがいると思われるリビングに水鉄砲を構えて飛び込む。

 

「動くな! 両手を頭の後ろに回せ!」

 

「え? ……こう?」

 

「これは違うと思いますが」

 

「てっ、あれ? タカ兄とアリア先輩?」

 

 

 私の忠告を聞いて、アリア先輩がタカ兄の頭の後ろに手を回し、なんだかキスする前の格好のようになっているではないか……

 

「お前、なにやってるんだ?」

 

「えっと、タカ兄が帰ってくる時間には早いし、お義姉ちゃんは来るはずないから、てっきり泥棒さんかと思ってたんだけど……」

 

「途中で出島さんが車で拾ってくれたから、予定より早く帰ってきただけだ。そんな事より、こんな時間まで寝てたのか?」

 

「そ、そんな事ないですよ~?」

 

 

 視線が明後日の方に向いてしまっているので、タカ兄には私の嘘はバレバレなんだけども、素直に認めるのもあれだし……

 

「というかアリアさん、何時までこの格好なんですか?」

 

「えっ? だってコトミちゃんに動いていいって言われてないから」

 

「もうっ! アリアは最近抜け駆けし過ぎだ!」

 

「あっ、シノ会長たちも来てたんですね」

 

 

 てっきりタカ兄がアリア先輩を選んだのかとも思ったけど、どうやらいつものメンバーで遊びに来てたのか。

 

「とりあえずアリアさん、離れてもらえます? このままだと動けませんので」

 

「もうちょっとこうしてたかったけどな~」

 

「七条先輩、乙女同盟の件でお話があります」

 

「乙女同盟?」

 

「タカ兄には、関係ない事だよ」

 

 

 まぁ、タカ兄の事に関する同盟なんだけども、その事をタカ兄に説明するのもね。まぁ、何となく分かってるのか、タカ兄はそれ以上追及してこなかったけども……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 萩村と二人でアリアをこってり絞ってリビングに戻ると、タカトシが冷たいお茶を用意してくれていた。

 

「すまんな」

 

「いえ、お気になさらずに」

 

 

 タカトシは私たちにお茶を配ってすぐ、別の事を片付ける為に部屋から出て行ってしまう。

 

「相変わらずの主夫っぷりだな……」

 

「コトミちゃん、最近柔道部で家事スキルを磨いているんなら、少しくらいタカトシの手伝いをしたらどうなの?」

 

「そうなんですけど、私が一つ片づける間に、タカ兄は五個から十個片付けちゃうので、私が手伝おうにも戦力になれないんですよね」

 

「まぁ、タカトシならそれくらい出来そうだしな」

 

 

 コトミも最近頑張ってるからか、平均並みくらいには出来るようになってきている――料理の腕は相変わらずのようだが。

 

「洗濯だって、タカ兄がした方が綺麗に洗えてる気がしますし」

 

「いや、洗濯機を使ってるんだろ? だったら誰がやっても変わらないとは思うが」

 

「分かってはいるんですけど、タカ兄のテリトリーを侵略してる感じがするので、大人しくしてようかと」

 

「相変わらずの厨二病ね……」

 

 

 どれだけ成長しようとも、コトミのこの病気は治らないようだな……まぁ、私たちの下ネタ好きも完全に治ったわけではないしな……

 

「それにしても、最近暑いよな」

 

「ですね。いよいよ夏本番って感じがしてます」

 

「夏は嫌いではないんだが、こうも汗が止まらないとな」

 

 

 津田家ではエアコンを付けてもその場に留まらないという理由から、設定温度を高めにしてあるし、ついさっきまでコトミが寝ていた所為で、エアコンが稼働していなかったことから、私はさっきから汗をぬぐっている。

 

「汗っかきの人って、下の方も濡れやすいって聞いたことがあるよ」

 

「なにっ!?」

 

「汗をかきやすい人は、新陳代謝いいから健康的ですよ」

 

「濡れやすい体質で良かった」

 

「会長は下が汗っかきなんですね! これは畑先輩に教えてあげないと」

 

「余計な事をするな! ところで、その畑なんだが、最近見ないな」

 

「カエデちゃんたちと海に行ってたらしいよ」

 

「そこで、歩きながら撮影して、五十嵐先輩に怒られたとか」

 

「どういう意味だ?」

 

「手振れがハメ撮りみたいになるって実験をして、カエデちゃんに映像を消去されたんだって」

 

「何故そんな事を知ってるんだ?」

 

「カエデちゃんからメールで聞いたんだ~」

 

「なるほど……」

 

 

 そう言えば私、五十嵐の連絡先なんて知らないな……




畑さんは何がしたいんだか……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。