桜才学園での生活   作:猫林13世

533 / 871
嫌な借り物競争になりそう


桜才VS英稜 体育祭編その1

 文化祭にアイドルを呼ぶという目的が被った桜才高校と英稜高校。そのオファー権を駆け、体育祭で両校が激突する事になった。――のだが……

 

「英稜の文化祭って何時ですか?」

 

「えっとね、この日ですね」

 

「その日程なら遊びに行けます」

 

 

 周囲の空気は割とどうでもいい感じだった。そもそも両校の会長がムキになっているだけなので、全校を巻き込んだこの勝負に気合いが入っていなくても仕方がないのかもしれないな……

 

「タカ兄は参加しないんでしょ?」

 

「いや、別に規制はされてないが」

 

「でもタカ兄が参加したら圧倒的じゃない? ただでさえウチにはムツミ先輩というチート選手がいるんだから」

 

「いや、チートって……」

 

 

 確かに三葉の運動能力を考えれば、そう表現したくなる気持ちも分からなくはない。無いのだが、味方であるコトミが使うのはどうなんだろう……

 

「津田副会長」

 

「畑さん? 何かありましたか?」

 

 

 運営本部に詰めていた畑さんが俺の所まで来たという事は、何かあったという事か、単純に飽きて交代して欲しいかのどちらかだろう。

 

「借り物競争で使うお題の紙が紛失したそうです」

 

「それは困りましたね……? 確か、お題の紙の管理って新聞部の担当だったはずでは」

 

 

 この人が意図的に紛失したのではないかと疑い、俺は畑さんに視線を向ける。だが畑さんは特に動揺した様子もなく、むしろこの質問が来ると予想していたような表情を浮かべていた。

 

「普段の行いを考えれば仕方がありませんが、今回に限って言わせていただけるのでしたら、断じて故意ではありません」

 

「……分かりました。ですが、来月のエッセイは休載しますからね」

 

「っ! ……ゴメンなさい、過去の資料を処分する時に一緒にシュレッダーにかけてしまいました」

 

「そういう事なら、素直に言ってください。故意ではないのなら、怒りませんから」

 

 

 何かを隠しているという事は分かって脅してみたら、あっさりと白状した。というか、俺はそんなに怒りやすいヤツだと思われているのか……

 

「では作り直しましょう」

 

「ですね。なんて書きましょう?」

 

「みんなが持っていそうなもので」

 

 

 それほど盛り上がっていないとはいえ、一応勝負なので、その体裁を保てる程度のレベルで問題ないだろう。万が一誰も持ってい無さそうなものを書き出したら、本当にエッセイを休載すればいいだけの話だし。

 

「……ちょっと待て」

 

 

 そう思っていたのだが、畑さんが紙に書いたのは『副会長の体操着(上)』『女子生徒会役員の体操着(下)もしくは下着』『風紀委員長のブラ』など、体裁を保つ以前の問題がある物だった。

 

「えっ、ダメですか?」

 

「これがダメかどうか分からない貴女の頭がダメです……」

 

 

 仕方ないのでシノ会長とサクラを呼んで、どっちの学校にも有利・不利が発生しないよう公平な物を書いてもらう事にした。本当は最後まで監督したかったんだけど、これから二人三脚に参加しなくてはいけないので。

 

「よろしくね、タカトシ君」

 

「あぁ、よろしく」

 

 

 俺のペアは三葉か……まぁ、三葉の脚力に対抗出来る男子がいなかったというだけだろうな……いや、俺も怪しいけど……

 

「よろしくね」

 

「夫婦も二人三脚っていうし、私たちなら大丈夫だよね」

 

 

 隣のペアは生徒会でも把握している恋人同士なので、そのような会話が聞こえてきても不思議ではないのだが、一応校内恋愛禁止という校則が生きている以上、大っぴらにイチャイチャするのは止めてもらいたい。

 

「あ、あはは……それとこれとは違うよね?」

 

「三葉、何を動揺してるんだ?」

 

 

 夫婦生活は二人三脚、それはあくまでも比喩表現であって、本当の二人三脚と比べる必要は無いんだが。

 

「そうだよ、三葉さん」

 

「義姉さん」

 

 

 どうやら英稜ペアの一人は義姉さんのようだ……まぁ、気配で分かってたけど。

 

「夫婦生活は脚を結ぶんじゃなくて絡めるんだよ」

 

「?」

 

「そういう事じゃねぇよ!」

 

 

 意味が分かっちゃう自分が何となく嫌だけど、三葉が毒されないようにこの話はここで止めておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当はタカ兄が参加するはずだった借り物競争。だけどタカ兄の脚力を考えて交代すべきだという声が英稜サイドから上がり、私が参加する事になった。

 

「(そもそも、タカ兄の代わりなんて誰も務まらないって……)」

 

 

 もめにもめた結果、血縁者という事で私が選ばれたんだけど、男子ばっかりの中に参加しろって、下手をすれば肉便器に成れと言われてる感じがするよ。

 

「(うわっ! タカ兄が凄い目で睨んでるよ……)」

 

 

 私がろくでもない事を考えている事に気付いているようで、タカ兄から視線で「真面目にやれ」と怒られてしまった……

 

「(えっとお題は……『嫁キャラ』?)」

 

 

 この字はシノ会長が書いたお題か……それにしても、これ良いのかな?

 

「タカ兄、来て」

 

「お題は?」

 

「それを説明してる暇はないよ! このままじゃ負けちゃうから!」

 

 

 タカ兄の腕を引っ張って、私はゴールに駆け込んだ。途中からタカ兄に引っ張られたおかげで、何とか英稜の選手より先にゴール出来たようだ。

 

「それじゃ、お題を確認……まぁ、この中じゃ津田兄が一番か」

 

「ですよね」

 

「……性別的な問題は良いのかよ」

 

 

 審判である横島先生が納得し、英稜の先生も事情を知っていたようでOKをくれた。だけどタカ兄だけは今一つ納得出来ないという表情だった。




いや、確かに主夫だけどさ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。