体育祭勝負は一進一退の状況でお昼休憩に入った。私はそれなりに活躍出来てるとは思うけど、やっぱりタカ兄や生徒会の皆さんと比べれば貢献度は低いよね……
「コトちゃん、お疲れ様」
「お義姉ちゃん。あれ、タカ兄は?」
「タカ君なら、飲み物を買いに行ってるよ」
「タカ兄なら準備してると思ってたんだけど」
「それは、コトちゃんががぶがぶ飲んじゃった所為でしょ」
「いや~……普段運動して無いものでして」
マネージャー業とは使う筋肉とかが違うし、私は元々運動が得意じゃないから疲れちゃったんだよね……その所為でタカ兄が飲み物を買いに行ってるのか……少し反省しよう。
「お待たせしました」
「お帰り、タカ君……何故シノっちたちも一緒にいるのでしょうか?」
「私たちはチームメイトだ! カナこそ何故ここにいるんだ! 今日は敵同士だろうが」
「だって、私のお弁当はタカ君たちのと一緒の重箱に入っているんですから」
「昨日タカ兄とお義姉ちゃんの二人で作ってたんですよ~。私も少し手伝いました」
「灰汁取りと味見だけだろうが……」
タカ兄にあっさりバラされて、私はそっぽを向いて口笛を吹く。確かにそれだけだけど、全く手伝わなかったころと比べればマシになってきているのだ……間違っても私がお弁当を用意しようものなら、食中毒が発生するかもしれないし。
「魚見会長に呼ばれて来たんですが……」
「サクラっち、お疲れ様」
「結局この面子なのか……」
「まぁまぁシノちゃん。仲間外れにされなかっただけマシだって考えようよ」
「そうですよ。というか、私たちが勝手についてきただけですけどね……」
「萩村、それは考えたら負けだ」
どうやらシノ会長たちはタカ兄を見つけてついてきただけのようだ……この点だけ見ても、やっぱりタカ兄は生徒会のメンバーを特別視しているわけではないんだなぁ。
「おっ、相変わらずのタカトシハーレムか?」
「横島先生……何ですか、その呼称は」
「前に畑が言っていたのを聞いたんだが、なかなか的を射ている表現だと思ってな」
「またあの人は……ところで先生」
「何だ? 私もハーレムに入れてくれるのか?」
「英稜の先生から相談されまして。英稜男子生徒に声をかけてくる桜才の教師がいるんですがって」
「それじゃあ!」
どうやら横島先生は英稜の男子生徒を喰らおうとしていたようだ……タカ兄にあれだけ怒られてるのに、懲りない人だ……
様々な競技をを終え、いよいよ最後のリレー勝負を残すのみとなった。点差は十点と、このリレーで一位を取った方が勝ちという、今まで何のために戦ってきたのか分からないような展開になっている。
「――以上が参加選手となります。なお、戦力バランスが崩れるという事で、津田副会長にはこちらで解説をお願いします」
「何なんですか、そのノリ?」
「まぁまぁタカトシ君。ここは畑さんのノリに付き合ってあげようよ」
ちなみに、七条さんも英稜の男子生徒を刺激し過ぎるという理由でこちらで解説をお願いしている。しかし、七条さんは駄目で魚見さんはOKとは……あの人もそれなりに大きかったと思うのですが……
「長時間戦って来て、このレースで結果が決まるなんて、なんだかお約束な展開ですよね」
「選手の戦意を削ぐような事言わないでもらえますかね? 皆さん、手抜きなどせず戦ってきたんですから」
「ですが、これでアンカー勝負になったら、それはもうお約束すぎる展開だと思いませんか? もっと言えば、最後の最後で足をもつれさせて転べば、何処かに演出家がいるんじゃないかって思うくらいに」
「……今時そんなべたな展開を狙う演出家がいるでしょうか?」
津田副会長はあんまり気にしていないようですが、十点負けている我が校の方が、その展開になる可能性があるというのに……
「さて、ここまでは若干英稜リードの展開ですが、その差は精々一秒程度。やはりアンカー勝負になりますね」
「胸の差でカナちゃんが有利かもしれないね~」
『アリア! 後で覚えてろ!』
『ふっふっふ……プルン』
「カナも覚えてろよ!」
「もうすぐスタートだっていうのに余裕だな、あの二人……」
結局べたな展開も起らず、普通に意気込んでいた天草会長が魚見会長を抜き去りゴール。体育祭勝負は桜才学園の勝利で終わった。
この勝負の目的は、どちらが文化祭にトリプルブッキングを呼ぶかを決めるものであり、勝った我々にその権利が与えられた。
「なかなかいい勝負だったな」
「えぇ。負けましたが、すがすがしい気分です」
カナとがっちりと握手を交わし、この勝負は幕を下ろす――はずだったのだが。
「あっ、出島さんからメールだ。トリプルブッキング、どっちの文化祭にも参加してくれるって」
「「へっ?」」
「今彼女たちが出演しているCM、ウチがスポンサーでね。掛け合ってみてくれたんだって」
私とカナは顔を見合わせて、同時にアリアの手を握った。
「本当に無駄な一日になりましたね」
「思っても黙ってろ?」
畑が零した一言は、なかなかの重みを感じたが、熱い戦いが出来ただけ善しとしようじゃないか……じゃないと、本当に無意味な一日になってしまうから……
結局学校ぐるみではしゃいでただけになった……