桜才学園での生活   作:猫林13世

535 / 871
この反応は予想できるだろ……


想像以上の反応

 生徒会室で作業していたら、会長たちが購買から戻ってきた。まぁ急ぎの作業でもないから別に良いんだけど、この書類は会長が処理すべきではないのだろうか……

 

「最近すぐイライラしてしまうんだ。だから牛乳を飲んでカルシウム不足を解消しよう!」

 

「ですが、牛乳のカルシウム量はそれ程でもないと聞いたことがあります」

 

「えっ!? 最近常識だと思ってた物が嘘だったってパターンが多いな……」

 

「まぁ、悪気があったわけじゃないですし」

 

 

 何気ない会話だったが、どうやら会長はその話を知らなかったようで、スズが想像してた以上のショックを受けたようだ。というか、作業してるの分かってるんだから、もう少し声量を落として欲しいんだが……

 

「だが昔信じてた、男汁を飲むと美肌になるというデマは、作為的なものを感じていたな」

 

「ミルクタイムの邪魔しないで」

 

「というか、作業の邪魔をしないでくれませんかね?」

 

「す、すまん……」

 

 

 スズがツッコんだついでにツッコミを入れたが、どうやら怒られたと勘違いして想像以上に凹んでしまった。

 

「別に怒ってるわけではありません。急ぎの案件でもありませんし」

 

「だが、邪魔をしたのには違いないだろ? だから、悪かった」

 

「かいちょー! ちょっとご相談したい事があるんですがー」

 

 

 会長やスズ以上に邪魔なヤツが来たな……

 

「コトミ……赤点でも取ってタカトシに怒られないように助けて欲しい、とかなら無理だからな?」

 

「そんな事相談しませんよ。というか、そんな事になったら、タカ兄にバレないように全力で逃げますから」

 

「いや、お前の成績って、タカトシに教えられているんじゃなかったか?」

 

「そうですね。もし赤点など取った場合、すぐに俺のところに情報が来るようになってますね」

 

「……とりあえず、赤点は取ってないよ」

 

「……で、相談事とは?」

 

 

 とりあえずコトミを椅子に座らせて、会長が相談を聞く体勢を取った。

 

「実はですね、今日の午前中の授業で先生に注意されたんですよね。集中力が散漫になっているって」

 

「よそ見してたんだろ」

 

「ギクッ!? ……私、どーも人の話を聞いていられないようでして。集中力を上げる方法とかないですか?」

 

「それならビタミンCを摂りなさい。中でもグァバが良いらしいぞ」

 

「へー」

 

 

 会長のアドバイスを受けて、コトミがメモを取る。だが、その内容は酷いものだった。

 

「クパァ……ビラ見……C……と」

 

「お前は本当に話を聞いていないな……今度注意を受けたら小遣いを減らすって言ったの忘れたのか?」

 

「そ、そんな事言われてないよね?」

 

「さて、どうだったかな」

 

「つ、次からはしっかりと人の話を聞くから! どうかお小遣いを人質に取るのだけは勘弁してください」

 

 

 相変わらず小遣いを人質に取られると弱くなるな……俺だって苛めてるみたいでこのやり取りはしたくないんだが、こうでもしないとやる気を出さないからな、こいつは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先日萩村に牛乳のカルシウム量は大したこと無いと言われたせいか、あまりイライラは解消されていない。こうなればまたヤンチャタイムを実行するしかないな。

 

「よし! 今日のヤンチャはノックダッシュだ」

 

「実行するのは構いませんが、生徒会長として廊下を走るのは止めてくださいね? 俺としても、全校生徒が見る可能性がある場所で会長を説教したくないので」

 

「た、タカトシ!? いつの間に背後にいたんだ、お前は……」

 

「最初からに決まってるでしょうが……」

 

「と、とにかくソフトなピンポンダッシュみたいなものだから、それほど本気で移動するわけではない。というか、怒られたくないからノック逃げにしよう」

 

 

 早足程度なら怒られないだろうし、この角から生徒会室の扉はそれ程離れていないので、走らなくても何とかなるだろう。

 

「今生徒会室にいるのは萩村一人。彼女の歩幅なら何とかなるだろう」

 

「別の問題があると思うんですけどね」

 

「何だ、その別の問題とは?」

 

「いえ、大したことではないですので」

 

 

 何となく気になる言い方だが、とりあえず生徒会室の扉をノックして驚かせよう。

 

『はい?』

 

 

 私がノックした事で中から声が返ってくる。私は急ぎ廊下の角に移動して、萩村が出てくるのを静かに待った。

 

「あれ、誰もいない……おばけー!?」

 

「……これがタカトシが不安視していたことか?」

 

「まぁ、スズは心霊現象の類いが絡むと弱いですから……」

 

「誤解が生まれたので謝ってくる」

 

 

 私は室内に逃げ込んだ萩村に事情を説明する為、もう一度扉をノックする。

 

「萩村、いるか?」

 

『か、会長……?』

 

 

 な、なんだ……何故また廊下の角に移動したい衝動に駆られているんだ私は……

 

「すまない萩村。さっきのノックも私だったんだ。実はノック逃げというヤンチャをしたのだが、想像以上に萩村が驚いてしまってな……」

 

「お、驚かさないでくださいよ……本気でお化けだと思ったじゃないですか」

 

「うん……実は実行する前に、タカトシからその可能性があるんじゃないかと遠回しに注意されていたんだが、萩村がそういう事が苦手だという事をすっかり忘れていてな……本当に悪かった」

 

 

 私が本気で謝罪しているという事は萩村にも通じたようで、そんなに怒られること無く許してもらえた。何となくイライラは解消されたが、別のモヤモヤした気持ちが残ったな……




やっぱりスズはこd……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。