桜才学園での生活   作:猫林13世

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赤点だったらね……


文化祭を楽しむ為に

 この間の体育祭勝負以降、タカ君と会える時間が一気に減ったような気がする……そりゃ家事のお手伝いとかで津田家を訪れる事は多いけど、私が行く場合は大抵タカ君が忙しくてコトちゃんの世話に手が回らない時だから、タカ君は家にいないのだ。

 

「――というわけなのですが、どう思いますか?」

 

「私にそんな事言われましても……そもそも、私の方が会長よりタカトシさんと会う確率が低いと思うのですが」

 

「でもサクラっちはたまにタカ君と一緒のシフトでしょ?」

 

「ここ最近は会長と一緒の事が多いので、会ってないことは会長が一番よく分かっているのではないでしょうか?」

 

「そうだったね」

 

 

 タカ君は新人の指導とかいろいろある為、最近私たちと一緒のシフトになることが減っている。それだけ頼りにされているという事なのだろうけども、タカ君の優秀さが今だけは邪魔だと思えます……

 

「あっ、タカトシさんからメールだ」

 

「何でサクラっちに!? って、私にも着ましたね」

 

 

 サクラっちに嫉妬してすぐに自分にもメールが着ていたと知り、ちょっと恥ずかしいです……

 

「えっと、どうやらまたシノっちがタカ君の家にお泊りを企画してるらしいですね」

 

「そのようですね。後で文句を言われたくないと天草さんが仰ったようで、それでタカトシさんが報告のメールを送ったようです」

 

「相変わらず大変そうですね、タカ君は……」

 

 

 普通なら男子が女子を家に泊まらないかと誘うなんて、そういう事を期待しているのではないかと疑って当然だと思うのだが、タカ君からのお誘いからはそのような思惑は感じ取れない。むしろ私たちの方がタカ君の事を襲いそうになりそうなくらいですし。

 

「楽しい文化祭を迎える為に、コトちゃんやトッキーさんの試験勉強の為とは、シノっちも考えましたね」

 

「というか、タカトシさん一人で十分教えられると思うんですけどね……まぁ、私もタカトシさんや萩村さんに教えていただくことがあるので、ありがたいお誘いではあるんですが」

 

「サクラっちは自力だけでも十分一位になれると思うんですけどね」

 

「いえいえ、タカトシさんや萩村さんのように、最初から地力が違うわけじゃないので、努力は必要です」

 

「タカ君だって、最初から凄かったわけじゃないみたいですがね」

 

 

 地力があったのかもしれないが、スズポンという強敵のお陰で力を伸ばしていったらしいですし……まぁ地力も自力もあったという事なんでしょうね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノ会長から、私たちのテスト準備だという事でトッキーを誘っておくようにと指示が来た。私たちの為とか言ってるけど、会長たちがタカ兄と一緒にいたいだけなんだろうなと思いつつ、赤点を取った時点で家を追い出される私としては、何ともありがたい申し出だった。

 

「――というわけでトッキー、部活が終わったら一度トッキーの家に寄ってからウチに行くよ」

 

「いろいろと言いたい事はあるけど、世話にならなきゃ私も危ないからな……」

 

「そもそも私とトッキーは、タカ兄たちに面倒を見てもらわないと赤点確実だしね」

 

「威張って言う事ではないと思うがな……」

 

 

 タカ兄やお義姉ちゃんのお陰で基礎は何となく理解出来ているが、試験前の詰め込みが無ければまだ赤点回避は難しいのだ。というか、今回の試験は範囲が広いので、一人で勉強してたら範囲の復習が終わる前にテストが終わる――つまり、私の人生が終わると言っても過言ではないだろう。

 

「しかしまぁ、毎回集まる必要あるのか? 兄貴と英稜の会長の二人いれば、何とかなるだろ」

 

「タカ兄の負担を減らそうという事らしいけど、サクラ先輩以外のメンバーは多かれ少なかれタカ兄に苦労させてると思うんだけどね」

 

「その最たる私たちが言えることじゃねぇと思うんだが」

 

「トッキー、それは言わない約束だよ……」

 

 

 そもそも私とトッキーが自力で赤点を回避する事が出来れば、わざわざ勉強会など開かなくても済むのだ。それは私だって分かっているけど、タカ兄と私とではそもそもの地力が違い過ぎるので、どうしてもタカ兄を頼りたくなってしまうのだ。

 

「そういえば主将や中里先輩も、兄貴からテスト範囲の要点をまとめた問題集を貰ったとか言ってたよな」

 

「……柔道部って、タカ兄がいなかったらいろいろと危ないんじゃない?」

 

「………」

 

 

 主将のムツミ先輩やエースのトッキーが赤点候補という時点でいろいろとアウトなのに、それ以外の先輩たちもタカ兄が用意してくれた問題集のお陰で赤点を回避していると聞いたことがある。もしそれが無かったら部が存続していたかどうか……

 

「今度、全員でタカ兄にお礼を言った方がいいんじゃない?」

 

「そうだな……テストが終わったら主将に話してみる」

 

「私が言える事じゃないけど、タカ兄って苦労を背負いこみやすいタイプなんだろうね」

 

「本当に、お前が言うべき事じゃねぇな……」

 

 

 タカ兄の頭痛の種ナンバー1であろう私が言うべきではないとトッキーも思ったんだろうが、私だけでも大変なのにと思っているので、私が言っても問題ないよね……たぶん。




柔道部影の立役者、タカトシ

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