桜才学園での生活   作:猫林13世

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休み慣れてないから……


休んでないタカトシ

 風紀委員とコーラス部の用事を済ませてタカトシ君の家にやってくると、丁度休憩時間のようでコトミさんと時さんが机に突っ伏していた。

 

「これは、どういう状況なんでしょうか?」

 

「さっきまで教えたことを理解出来ているかどうかのテストをしていたからな。二人とも六割は理解しているようで安心した」

 

「それでいいんですか? 六割じゃ先に進めないと思うんですが」

 

「まだ初日だからな。それに、ラスボスが上に控えているから、私たちはある程度教えておけば大丈夫だ」

 

「あぁ、本番前のタカトシ君のテストですか……的中率が高いから、畑さんが裏で販売したいとさえ言っている」

 

 

 タカトシ君が考える問題と、先生方が考える問題の類似率はかなりのもので、タカトシ君が作ったテストで合格点が取れれば、本番でも似たような点数が取れると言われている。

 

「それで、そのタカトシ君は? 一応挨拶しておきたいんですけど」

 

「タカ君なら部屋にいると思いますよ。さすがに働きすぎだという事で、今は休んでもらっているのですが……大人しく休んでるかどうか怪しいものです」

 

 

 義姉である魚見さんが心配そうに天井を見詰める。なんだか義姉弟が板について来ている気がするのは、それだけ魚見さんが津田家に入り浸っているからなんでしょうね……

 

「それじゃあ、ちょっと挨拶してきます」

 

 

 天草さんたちに断りを入れて、私は階段を上がる。本来ならこの家の住人であるコトミさんに許可をもらうべきなのでしょうが、コトミさんは生憎の状態ですし。

 

「タカトシ君、ちょっといいですか?」

 

『はい、構いませんよ』

 

 

 私が声をかけると、中からすぐに返事があった。恐らく気配で私が部屋に近づいている事に気付いてたんでしょうね。

 

「いらっしゃい、カエデさん」

 

「お邪魔してます。何してるんですか?」

 

「えっ、あぁ……三葉や柳本用のテスト対策プリントの作成と、コトミや時さんの試験対策テストの作成、後はエッセイの手直しと自分の分の復習を少々」

 

「……ほんとに休んでいませんね」

 

 

 魚見さんが心配していた通り、タカトシ君は殆ど休んでいなかった。

 

「自分の事だけしてればいいので、普段より楽でしたけどね」

 

「半分以上、タカトシ君がしなくてもいいような事だと思うんだけど」

 

「そう言われるとそうなんですが……っと、そろそろ昼食の準備をしなければいけませんね。下に行きますが、カエデさんも来ますよね?」

 

「えぇ」

 

 

 ここで『部屋に留まる』なんて言い出せば、きっと冷たい目を向けられるでしょうし、留まってもする事ありませんしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が用意してくれたごはんをみんなで食べて、私とトッキーは再び勉強漬けになる。普段から勉強に力を入れていればこんなことにならないって分かっているのだけど、どうしても他の事にかまけてしまうのだ。

 

「会長、これはどういう意味ですか?」

 

「あぁ、それはだな――」

 

 

 タカ兄とお義姉ちゃんが基礎を徹底的に叩き込んでくれたお陰で、ある程度の事は理解出来るはずなんだけど、応用になるとまるっきしダメなのだ。

 

「時さん、そこはさっきの問題と同じ考え方で大丈夫」

 

「ありがとうございます」

 

 

 向こうではトッキーがスズ先輩とサクラ先輩に教わっている。その向こうではアリア先輩とカエデ先輩が自分の勉強をしている様子が見える。

 

「コトちゃん、よそ見しちゃダメだよ」

 

「ゴメンなさい、お義姉ちゃん」

 

「集中力の低さは相変わらずか……勉強しようとするだけ成長してるんだがな」

 

「これでも一日五エロに減ってるんですからね」

 

「まだ威張れる回数じゃないけどね」

 

 

 高校入学時は一日十エロは当たり前だった私からすればかなりの進歩なのだが、やっぱりまだ多いようだ。

 

「そういえば、タカ兄はまた部屋に戻っちゃったんですか?」

 

「タカトシは夕食の買い出しに出かけると言っていたぞ」

 

「タカ君、休んでるようで全然休んでないですから」

 

「私が言える立場じゃないですが、タカ兄は働きすぎですから」

 

 

 私がそう言うと、シノ会長とお義姉ちゃんから『お前が言うな』という感じの視線を向けられる。だから先に私が言える立場じゃないと断ったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五十嵐先輩と交代して、私は自分の勉強をする事にした。とはいっても、試験勉強ではなく、最近疎かになっていた外国語の勉強だ。

 

「スズちゃん、コーヒー淹れたけど飲む?」

 

「いただきます」

 

「お砂糖、幾つ入れる?」

 

「二つでお願いします」

 

 

 七条先輩が用意してくれたコーヒーを飲みながら、私はふと周りを見渡す。だいたいの人は砂糖を入れて飲んでいるが、森さんだけがブラックで飲んでいる。別に他の人も砂糖を入れているのだから気にしなくても良いのかもしれないが、何となく自分が子供っぽく感じてしまう……

 

「(そういえば、タカトシもブラックよね……)」

 

 

 今この家にいる高校二年生で、ブラックが飲めないのは私だけ……

 

「(私もいつかは飲めるようになるのかしら……)」

 

 

 別にブラックコーヒーが飲めないからといって、それほど気にする事ではないという事は分かっているのだけど、同い年の二人がブラックを飲んでるのを見ると、やっぱり気になっちゃうものなのよね……




シノたちも砂糖入れてるから気にしなくてもいいのに

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