桜才学園での生活   作:猫林13世

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どっちの生徒会もあんまり変わらないな……


関係性の違い

 英稜高校生徒会は現在、女子三人で切り盛りしています。書類整理や他の作業なら何とかなるのですが、力仕事などの時は男手が欲しいと思ってしまうのも仕方がないのかもしれません。

 

「やっぱりこういう時は男手があった方が良いのかもしれませんね」

 

「でも気楽で良くないですか? 何処でもお化粧出来ますし」

 

「ここでしちゃダメよ」

 

 

 英稜の高速では化粧を禁止してはいないが、生徒の模範となるべき生徒会役員があまり派手なメイクをしたり、校内でメイク直ししてると知られたら歯止めが利かなくなるかもしれないという理由で、会長が生徒会役員はファンデーションを使うくらいにするようにと決めたのだ。

 

「でもメイク中の女子って、変顔フェチに需要があるよ?」

 

「収束に向かった話を変な方向に広げないでください。というか、タカトシ君の前以外でも自重してくれませんか?」

 

「これくらい女子トークの普通だよ。ねっ、青葉っち?」

 

「そうですね~」

 

「……桜才ほどじゃないけど、この生徒会もおかしい」

 

 

 今の桜才生徒会は昔ほどではないにしろ、かなり酷い状況だとタカトシ君の苦労を見て知っているけども、英稜も負けず劣らず酷い気がしてきた……

 

「あっ、ちょっとトイレに行ってきますね」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 青葉さんがトイレに出て行ったのを見送って、魚見会長が身を縮こませる。

 

「今日は少し寒いね」

 

「そうですか? 重い物を運んだあとだけじゃなく、今日は暖かいと思いますけど」

 

「これが若さか……」

 

「一つしか違わないじゃないですか」

 

 

 前にもこのボケを聞いたことがある気がする……高校二年と三年の一学年でそれ程違うとは思えないし、そもそも暑さ寒さに歳の差など関係ない気がする……

 

「カーディガンを脱ごうっと」

 

 

 汗を掻くまではいかなくても、今日はカーディガンは不要な陽気だし、私はカーディガンを脱いで椅子に掛ける。

 

「ピンク」

 

「? ……っ!?」

 

 

 会長が背中を覗き込んで呟いた言葉の意味を理解し、私は瞬時にカーディガンを羽織り直す。ついでに猫背になってしまったのは、無意識に背中を守ろうとしたんだろうな……

 

「戻りました――副会長、寒がりですか?」

 

 

 カーディガンを脱ぎ、袖を捲っている青葉さんにそう言われてしまった……まぁ、会長はあくまでも普通に範囲でカーディガンを羽織ってるけど、私は身を守るように猫背で腕で身体を抱いているのだから、そう思われても仕方がないのかもしれない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は珍しくタカ君とサクラっち、そして私の三人でシフトに入っていたので、帰りは恒例の寄り道タイムとなった。ちなみに、コトちゃんの晩御飯はタカ君がお弁当を作ったついでに冷蔵庫に入れておいたので、それを温め直して食べるよう言ってある。

 

「三人そろうのは久しぶりだね」

 

「そうですね。私と会長はたまに一緒になりますけど、タカトシ君とは殆ど一緒になりませんしね」

 

「新人研修でどうしても被らなかったからな」

 

 

 私たちはケーキと紅茶を注文して、タカ君はコーヒーだけ。甘いものが苦手ではないけど、あまり好んで摂取しないタカ君は、こういう店に入ってもコーヒーだけの時が多いのだ。

 

「タカ君もたまには食べればいいのに」

 

「そうだよ。何なら一口食べる?」

 

 

 サクラっちが差し出したケーキを、タカ君は特に意識せずに食べる。こういうところを見せつけられるから、タカ君とサクラっちが付き合ってないって言っても信じられないんだよね……

 

「ケーキとは違う甘さを感じます」

 

「何言ってるんですか?」

 

「タカ君とサクラっちはそういう事を平然とやってのけるから気にならないのかもしれませんが、『はいあーん』を目の前で見せられた私の気持ちを少しは考えてくれませんかね?」

 

「別にそんな意図はなかったんですが……」

 

「間接キスくらいで大袈裟な」

 

「じゃあタカ君、こっちも食べて」

 

 

 サクラっちに対抗意識を燃やした――わけではないですが、何となく面白くなかったので私もケーキを一口タカ君に差し出した。ちなみに、サクラっちと同じケーキなので、食べ比べにはならない。

 

「なんなんですか、いったい」

 

 

 呆れながらもタカ君は私の差し出したケーキも食べてくれた。そしてそのフォークを使って食べた次の一口は、さっきまでとは違った味がした気がしました。

 

「タカ君の味がします」

 

「なんですか、それ……」

 

 

 二口食べたからか、タカ君はコーヒーを啜って少し顔を顰める。ケーキの甘さと私たちの甘さが合わさった口の中に、ブラックコーヒーがより苦く感じられたのかもしれない。

 

「タカ君はこの後コトちゃんの勉強を見るの?」

 

「自分一人で宿題に取り込もうとしているのは良いんですが、ご存じの通り一人では終わらせることが出来ないので」

 

「途中までは出来てるのにね」

 

 

 私とタカ君が苦労して教え続けたお陰で、コトちゃんもある程度は理解出来ているようだけど、どうしても最後まで一人で宿題を終わらせることが出来ないのだ。

 

「また手伝いに行くね」

 

「すみません」

 

「いいの、お義姉ちゃんだから」

 

 

 私とタカ君の会話を、サクラっちがどこか羨ましそうに眺めていた気がしたけど、私からしてみれば、サクラっちの方が羨ましいんだけどな。




珍しくウオミー絡みで甘くなったな……

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