桜才学園での生活   作:猫林13世

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強そうでそうでもなさそう……


フェスに向けて

 会長の思い付きで我々生徒会役員は、雪合戦フェスというものに参加する事になった。その練習の為今日は七条家が運営しているスキー場の一部を借りてルールの確認などを行う事になったのだが――

 

「雪だるまできたー!」

 

「やっぱりこういうのはやっておかないとな!」

 

「練習するんじゃなかったのかよ……」

 

 

――いつも通りのグダグダな感じで始まったのだ……

 

「皆さん、今回監督を務めます、七条家専属メイドの出島サヤカです」

 

「監督が必要なんですか?」

 

「このフェスはチーム戦ですから、監督も当然必要です。まぁ我々が出るのはライトな大会ですから、気楽にやりましょう。えーと、参加するには一チーム七人」

 

「えっ、三人足りない」

 

「友達を誘ってみます」

 

 

 そう言ってタカトシが携帯を操作してメンバー集めを開始する。

 

「三葉、今度の日曜日って大会だっけ?」

 

『うん、そうだよ~』

 

「そっか、じゃあ無理だな……練習の邪魔して悪かったな」

 

『何かあるの~?』

 

「雪合戦フェスに参加するのに人数が足りないんだ」

 

『じゃあコトミちゃんを貸してあげるよ~。大会って言っても、今回はマネージャーは帯同しないから』

 

「コトミか……」

 

 

 タカトシが確保できたのはムツミではなくコトミのようね……正直戦力になるかどうか分からないわ。

 

「こっちも、古谷先輩が出てくれるそうだ」

 

「あと一人、どうしましょう?」

 

「横島先生はどうだ? あれでも顧問だからな。生徒会活動に参加する必要があると思う」

 

「これ、生徒会活動なんですか?」

 

「……とにかく、これでメンバーは揃ったな。どうやら英稜も出るらしいから、負けられないな」

 

「義姉さんたちですか……」

 

 

 そう言えば何で魚見さんたちを誘わなかったのかと思ったけど、既に敵チームとしての参加が決まっていたのね……また面倒な事にならなければ良いけど。

 

「ではメンバーも決まったところで、ルールを説明します。勝利条件としては、相手全員に雪玉を当て失格にするか、敵の雪玉に当たることなく敵陣に置かれたフラッグを奪うかのどちらかです。実際にやってみた方が良いでしょうから、お嬢様・天草様チーム対タカトシ様・萩村様チームでやってみましょう」

 

 

 出島さんの提案でタカトシとチームになれたけど、この競技はどちらかと言えば私向きかもしれない。まず七条先輩の攻撃を躱しながら先輩に雪玉を当て、会長の攻撃を掻い潜ってフラッグを奪取した。

 

「タカトシばかりに気を取られていた感も否めないが、萩村やるなー」

 

「タカトシばかりに任せてはいられませんから」

 

「(的が小さくて雪玉が当たり辛いとは、言わない方が良いよね)」

 

「………」

 

「タカトシ、どうかしたか?」

 

「いえ、何でもないです」

 

 

 一瞬出島さんを見て何か考えていたように見えたけど、結局タカトシは何も言わずに出島さんに追加の説明を求めた。

 

「雪玉はあらかじめ用意されている物を使います。フォワードは自分で補充出来ないので、バックスフォローが必要です」

 

「じゃあ私はスズちゃんの雪玉を」

 

「タカトシの玉は私が管理する。あぁ、玉を管理と言っても――」

 

「余計な事を考えてる暇があるなら、少しでも多く練習を積んだ方がいいと思いますがね?」

 

「す、すまん……寒くて昔の癖が」

 

「どんな理由だよ……」

 

 

 会長が昔の癖を出し掛けたので、タカトシが盛大にため息を吐く。でもやっぱり、タカトシのツッコミを聞くと安心するのは、私では処理しきれないからなのかしらね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度練習を積み、戦い方の指針も固まってきたので、私たちはもっと具体的な対策を考える事にした。

 

「敵の目を欺くため、白い恰好をしたら背景に溶け込んで惑わせられるんじゃないかな」

 

「いい案ですね」

 

「うん。当日は白い恰好をしよう」

 

「そうですね。ところで皆さんの肌、白くて綺麗ですよね」

 

「よしみんな!!」

 

「良しじゃねぇよ! というか、アンタも昔の癖が出てるぞ!」

 

 

 出島さんの言葉を聞いたアリアが脱ごうとしてタカトシに怒られる。やはり寒いと昔の癖が出てしまうんだな……よかった、私だけじゃなくて。

 

「会長、少しご相談したい事が」

 

「どうした?」

 

 

 タカトシがアリアに説教をしてるのを横目に萩村が手招きをしてきたので、私は二人に聞こえないように相談したい事があるのだろうと考え、萩村に近づく。

 

「それで、何か問題でも?」

 

「敵として英稜生徒会も出場するんですよね? またタカトシとサクラさんの間にラブコメフラグが建つのではないでしょうか?」

 

「敵同士だし、さすがにそんな事は無いだろ。あったとしても、建った時点で雪玉をぶつけて折ればいいだけだしな!」

 

「そう簡単に折れれば苦労しないと思いますが……何しろあの二人は同じ境遇というアドバンテージからあっという間にカップルに見えるくらいまで仲良くなったわけですし」

 

「気にし過ぎだろ……」

 

 

 萩村に言われて私も何だか不安になってきたが、公衆の面前でキスをするような事は無いだろうと思いたい……一回は私がミスをしてキスをさせてしまったが、今度は頭ではなく背中を狙えばいいんだし……




気になるのも仕方がない

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