桜才学園での生活   作:猫林13世

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ちゃんと売り上げに貢献するんです


店長の思惑

 バレンタインのシフトは、何故か私と魚見会長、そしてタカトシ君の三人。だけどタカトシ君がシフトに入っている理由は仕事をしてもらいたいからではなく、タカトシさんにチョコを渡しに来た女子高生が一つでも商品を買ってくれるのではないかという浅はかな理由からなのです。

 

「相変わらずタカ君はモテモテですよね。お義姉ちゃんとしては鼻高々ですが、あそこまでモテると何だか複雑な思いが」

 

「どっちなんですか」

 

 

 さっきからタカトシ君は次々と店にやってきてチョコを渡して満足している他校の生徒の対応に追われている。私たちは開店休業中のような感じでレジに立っているだけで、むしろタカトシ君をシフトに入れたのは店長の失敗だったのではないかと感じている。

 

「暇ですね」

 

「さっきから立ってるだけですから」

 

「まぁ、これでお給料がもらえるなら楽な仕事ですけど、このままじゃ何もしないで一日が終わりそうですね」

 

「さすがにそこまでは無いんじゃないですか? タカトシ君が店に迷惑をかけるって何か買っていくように言ってくれてますし」

 

 

 そんな会話をしてすぐ、タカトシ君にチョコを渡した女子高生たちがジュースやポテトなどを注文してくれ始めた。

 

「さすがタカ君ですね。店の利益を考える余裕があるとは」

 

「会長は何処目線なんですか?」

 

 

 そんなこんなで一日が終了し、私たちは三人そろった時には恒例となっている寄り道をする事にしました。ちなみに、タカトシ君がもらったチョコは、何故か外で待機していた七条家の人たちが津田家へと搬送してくれています。

 

「タカ君、今日はお疲れ様」

 

「殆ど仕事してませんけどね」

 

 

 タカトシ君はバイト時間の殆どを女子高生の相手に費やしたため、お給料はいらないと店長に言っていましたっけ……でも結果としてタカトシ君につられてお客さん倍増だったので、店長はちゃんと支払うと言っていましたが。

 

「もう見飽きたかもしれませんが、これチョコです」

 

「私からも。タカトシ君ならいっぱいチョコを貰うだろうと思って、チョコチップクッキーにしておきました」

 

「ありがとうございます、義姉さん。サクラも、ありがとう」

 

 

 もうチョコ系はいらないと思うけども、タカトシ君はしっかりと会長と私からのチョコを受け取ってくれる。

 

「タカ君の為にクーラーボックスをいっぱい用意してくれた七条家の人たちにも感謝しないとね」

 

「食べきる自信が無いんですがね……コトミにも手伝ってもらいます」

 

「それでもちゃんとお礼をするタカ君が、お義姉ちゃん大好きです」

 

「そういうの良いんで……」

 

 

 会長に対するツッコミも疲れ切った感じですが、それでも私たちに付き合ってくれたタカトシ君。やっぱり優しい人ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大量にタカ兄がチョコを貰って来たお陰で、私は糖分補給に困らなくなった。でも他の問題が発生している。

 

「こんなに食べたら太っちゃうよ~」

 

「なら食べなきゃいいだろ」

 

「でも、勉強して頭を使ったら甘いものが食べたくなるでしょ?」

 

「いや、限度があるだろ……」

 

 

 人間というものは不思議な生き物で、沢山あると沢山食べたくなってしまうのだ。実際、貰って来たタカ兄よりも私の方がチョコを食べている気がするくらい……

 

「そうそう、会長たちがチョコの感想を聞きたがってたから、テキトーにお茶を濁しておいたよ」

 

「濁す必要が何処にある……知り合いからのは俺が食べてるんだから」

 

「それ以外も食べてる気がするけどね~」

 

 

 名前も知らない相手からのチョコでもちゃんと食べるあたり、タカ兄の人の好さがうかがえる。私だったら、何か変なものが入っているかもしれないって思い、食べないで捨ててしまうかもしれないのに。

 

「そういえば、何でサクラ先輩はクッキーだったの? 普通お返しがクッキーじゃないの?」

 

「チョコは沢山もらうだろうからって言ってたが、気にしなくても良かったんだがな」

 

「ふーん」

 

 

 なるほど、気遣い出来ますアピールか……さすがは私のもう一人のお義姉ちゃん候補筆頭なだけはある。

 

「変な事考えてる暇があるなら、もう少し勉強したらどうだ? 今度の試験だって、赤点ギリギリなんだろうし」

 

「さ、最近は二人の頑張りのお陰で六十点は採れるようになってるから……」

 

「はいはい。晩飯は食べるのか?」

 

「一応……でも、少しだけにしておくよ」

 

 

 私はタカ兄のように普段から運動をしているわけでもなければ、節制が得意なわけでもない。これだけチョコを食べておきながら何時も通りに晩御飯を食べたら、間違いなく太ってしまうだろう。

 

「勉強しながら運動出来れば一番なんだけどな」

 

「やってやれないことは無いだろ? 英語のCDを聞きながら走るとか」

 

「私の集中力じゃ、事故るか聞き流すかのどっちかだよ……」

 

「じゃあ素直に勉強して、食べる量を減らすんだな」

 

「はーい……」

 

 

 マイルドに撃退され、私はトボトボと部屋に戻る。もう少しタカ兄に相手してもらいたいけども、テストの結果が芳しくないとこの家から追い出されるという恐怖から、私は粘れなかったのだ……




コトミが摘まんでたら太るだろうな……

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