桜才学園での生活   作:猫林13世

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自前の部員では無理なんだろうな


出演依頼

 魚見会長のスキンシップは結構激しく、ところかまわずハグをしてきたりします。少しは人目を気にした方がいいのではないかと何度か注意してきたのですが、一向に改善される様子はありませんでした。ですがこの頃、人目がある所ではもちろん、生徒会室内でもスキンシップをする事はなくなりました。

 

「(漸く分かってくれたのかな)」

 

 

 加減をしてくれるなら問題なかったのですが、改善されたので余計な事は言わないでおこう。

 

「そういえば最近会長、ハグとかしてませんよね」

 

 

 私が黙っておこうと思っていても、青葉さんが会長に質問してしまった。まぁ聞いたところで復活するとは思えないので、私も話題に乗っておこう。

 

「再三注意したので、少しは私たちの気持ちが分かってくれたんですか?」

 

「ううん、静電気がきつくてスキンシップ自重してるの」

 

「暖かくなってきたら再開するのか……」

 

「それにタカ君が怖い顔で睨んでくる時があるから、相手の機嫌を見てしようと思ってる」

 

「それはありがたいですね」

 

 

 タカトシ君の邪魔をしようとしたとか、集中してるところに近づいたとか、そういう事なのだろうけども、私には出来ない方法で魚見会長を大人しくしていたタカトシ君に、私は改めて尊敬の念を懐く。

 

「(もう少し、タカトシ君に近づけたらいいのかもしれませんけど、私には出来ないですからね)」

 

 

 タカトシ君には最終奥義として、力ずくで黙らせるという方法もありますし……最近では手を出さずに脅すだけで大人しくなってくれているので、その光景を目にする事はなくなりましたけども。

 

「とりあえずは静電気の季節が終わるまでは自重するつもり」

 

「静電気の季節が終わっても自重してくれるとありがたいのですが」

 

「一番分かり易い愛情表現でしょ? 日本でももっと取り入れるべきだと思うの」

 

「会長は日本人ですよね?」

 

「血筋は日本でも、心は海外さ!」

 

「コトミさんに影響されてます?」

 

 

 義妹であるコトミさんと一緒にいる時間が多いせいか、最近会長が厨二病なのではないかと思えてくるのですが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに生徒会室に相談者がやってきた。今日は特に急ぎの案件も無いので、ゆっくりと相談に乗ってやるとするか。

 

「高校生映画コンテスト?」

 

「はい。我が映画部も出展しようかと」

 

「映画部か……」

 

 

 前にショートムービーとしてホラー映画を観たが、確かにそれなりのレベルはあるのだろう。まぁ、素人目に見ての事なので、あまり当てにはならないのかもしれないが。

 

「出展の話は分かった。だが何故それを生徒会室に? 普通職員室だと思うんだが……」

 

「実はですね、出展にあたって、映画の主人公とヒロイン役は生徒会の方々にやってもらおうという話になりまして!」

 

「んー、ちょっと恥ずかしいな」

 

「私も恥ずかしいです」

 

「私も、恥ずかしいのは好きだったけど、ちょっと荷が重いかな」

 

 

 私たち三人が難色を示すと、映画部の女子は残念そうな表情を浮かべた。事前に相談されていれば覚悟も決まったかもしれないが、出展する作品を取り始めるのは来週からだという話だし、そんな急には覚悟出来ないからな。

 

「津田君はどうかな?」

 

「俺も気が乗りませんが、全員が断るのも悪いですからね。撮影スケジュールを教えてもらえますか?」

 

「えっとね――」

 

 

 女子が携帯を取り出してスケジュールをタカトシに見せる。自分の頭の中の予定表と照らし合わせているのか、タカトシは何度か小さく頷いた。

 

「スケジュール的には問題ありません。俺で良ければ手伝わせていただきます」

 

「ありがとー。それじゃあ後はヒロイン役を探さないと……」

 

「しょーがない、私もやろう」

 

「私も……」

 

「じゃあ私も」

 

「皆さん、急にどうしたんですか?」

 

「………」

 

 

 私たちが急にやる気を出したのを見て、女子生徒は首を傾げたが、タカトシは私たちの邪な気持ちを見抜いているようで、呆れた表情を浮かべている。だって、もし映画がラブロマンスで、演技とはいえタカトシと恋人になれるというなら、参加したがる女子生徒は大勢いるだろう。ただでさえ出遅れてる感じがする私だ。この機会を逃す手はない。

 

「こまったな……さすがに私一人じゃ選べないし、ヒロインはオーデイションをして決めようと思います」

 

「参加者は私たち三人か?」

 

「他の配役も探さなければいけないので、もう少し募集してみます。その中からヒロインに相応しい人を探して、他の人にも映画に出演してもらおうかと思ってます」

 

「それが一番いいかもしれませんね。他に役者を探すのも大変でしょうし」

 

「というか、何でもっと早く準備してなかったんだ? 来週から撮影なんだろ?」

 

「実は、脚本を頼んでいたんですけど、完成したのが昨日でして……」

 

「なるほど、それでか」

 

 

 ある程度の希望は出しているだろうが、どういった脚本になるのか分からなければ役者も決められない。それでこんなキツキツなスケジュールなのか……

 

「それじゃあ、職員室に許可をもらいに行きましょう」

 

「そうですね。それじゃあ会長たちは、オーデイション参加者募集のポスター作りをお願いします」

 

 

 映画部の女子とタカトシが自然な流れで職員室に向かったが、何故タカトシもついていく必要があったのだろうか……




タカトシが出ると言った途端にこれだ……

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