桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシがいればスムーズに進む


撮影開始

 早速映画部の撮影が始まったのだが、さすがは二年生学年トップの二人だけあって、一回もミスすることなく撮影が進んでいく。

 

「カット、オッケーです」

 

「お疲れ様~。スズちゃんもタカトシ君も凄いね~。私だったらセリフ覚えられなかったよ」

 

「じゃあ何でオーディション受けたの?」

 

「いや~、それは出てみたかったからだよ~」

 

 

 休憩中三葉と話す萩村を見ながら、私は横目でタカトシの様子を窺う。この後私とのシーンだから、少しくらいは緊張してくれているのだろうか。

 

「さすが津田だな。主役を引き受けてくれて良かった」

 

「別にお前の為に引き受けたわけじゃないんだが……というか、俺が断ったら誰が主役をやる予定だったんだ?」

 

「その時は俺がやるしかなかっただろうな」

 

 

 本気でタカトシが主役で良かったと思った瞬間だな……まぁ柳本君が主役だったら、私たちも協力したかどうか分からないし……

 

「それでは次、津田と会長のシーン、行きます」

 

「おっ、出番だな」

 

「会長、頑張ってくださいね」

 

「あぁ!」

 

 

 コトミに背中を押され、私はやる気満々で撮影に臨む。

 

「カット! 会長、もう少し恥じらった表情でお願い出来ますか?」

 

「難しいものだな」

 

 

 私としては十分恥じらいを持った表情で演技していたつもりなのだが、どうやら足りなかったようだ。しかしこれ以上どうやって恥じらいを持てばいいんだろうか……

 

「このシーンって確か、バストアップで撮影するんですよね?」

 

「えぇ」

 

「だったらスカートを脱いで下半身露出しながら撮影すれば――」

 

「阿呆な事言ってる暇があるなら、少し裏方でも手伝って差し上げたらどうだ?」

 

「ヒェ、タカ兄……」

 

 

 コトミはあっさりタカトシに撃退されたが、さてどうやって恥じらえば良いのか……

 

「シノちゃん、シノちゃん」

 

「何だアリア?」

 

 

 手招きするアリアに近寄り、私は耳を貸せと言われて身体ごとアリアに傾く。

 

「昔の行動を思い返せば、恥じらいを出せるんじゃない?」

 

「……そんなに恥ずかしい事をしてたのか、私は?」

 

 

 アリアに言われて思い返してみると、確かに恥ずかしいことこの上ない行動をしてたんだな、私は……

 

「か、会長? 顔真っ赤ですけど、何かありました?」

 

「な、何でもない! さっさと撮影を始めてくれ!」

 

「はぁ……それじゃあ再開します」

 

 

 アリアの所為で恥ずかしい思いをしたが、そのお陰か撮影は成功した。まぁ、半分以上は私の自爆なんだがな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エキストラとして映画に参加する事になった私は、タカ兄とシノ会長が会話をしている隣の席で食事をしている女子高生を演じている。

 

「おい、エキストラがカメラ目線とか、目立ちすぎるだろうが」

 

「えー、せっかく出演するんだから、少しくらいは目立たないと」

 

「主役はあくまでも兄貴たちで、私たちはおまけだろ」

 

「でも、メインキャラよりサブキャラの方が人気になるなんて、結構あると思うんだけど」

 

「お前は何の話をしてるんだ?」

 

 

 ゲームやアニメにあまり関心がないトッキーには伝わらなかったけども、私はそういう現象を何度も見てきたから知っている。ここで目立っておけばいつか、私にもチャンスが――

 

「ってトッキー」

 

「あん?」

 

「もっと背筋伸ばした方が良くない?」

 

「私は別に目立つつもりないからこれでいいんだよ」

 

「でも背中丸めてると、思いっきりブラ透け映っちゃうけど?」

 

「っ!?」

 

 

 物凄い勢いで背筋を伸ばしたせいか、そのタイミングでカットが掛かってしまう。

 

「エキストラの方はもう少し大人しくお願いします」

 

「あっ、すんません……」

 

「ダメじゃんトッキー」

 

「お前に言われたくない!」

 

 

 この後は特に目立つことなく私たちの出番は終了。轟先輩の編集のお手伝いをする事になった。

 

『お姉さんにおまかせー』

 

「うわぁ、最新のCG技術って凄いですね」

 

「コトミちゃんも少し勉強すれば出来るようになるんじゃない?」

 

「いや、普通の勉強で手一杯でして……」

 

「まぁ私も、最近こっち方向ばっかり勉強してたから成績は良くないんだけどね」

 

 

 そう言えば轟先輩は最近、平均点に届くか届かないかの瀬戸際だって聞いたことがあるっけ……

 

「おっ、タカ兄とシノ会長が見つめ合ってますね」

 

「津田君は平常心だけど、会長は少し照れくさそうだね」

 

「あっ、そうだ! 轟先輩、ちょっとご相談が」

 

「ん、なになに?」

 

 

 私は思いついたことを轟先輩に耳打ちし、先輩はすぐに作業に取り掛かってくれた。

 

「会長、観てください!」

 

「何だ?」

 

「タカ兄と見つめ合ってるシーンにひと手間加えて――」

 

 

 私の言葉に合わせるように、轟先輩が加工後の写真を画面に表示する。

 

「唾液ブリッジを加えて濃厚な感じに」

 

「遊んでないでちゃんと編集してくれませんかね?」

 

「ちょっとした息抜きだよ~。まぁ、コトミちゃんの発案で面白いと思ったからやったんだけど」

 

「またお前か!」

 

 

 柳本先輩に白状した轟先輩の所為で、タカ兄に雷を落とされてしまった。まぁ確かに邪魔しかしてないって自覚してるけども、あそこまで怒らなくても……

 

「あっスズ先輩」

 

「なに?」

 

「明日の撮影夜からなんで、お漏らししないように気を付けてくださいね」

 

「べ、別にビビったりしないわよ?」

 

 

 既に震えてるんだけど、そう指摘したらまた怒られるかな……




やっぱコトミは邪魔しかしない……

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