桜才学園での生活   作:猫林13世

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そりゃ人気出るわ……


桜才学園マスコット

 最近どこの市や県でもその場所のキャラクターが存在している。それを見た私は生徒会メンバーには内緒で桜才学園のキャラを作る事にしたのだ。

 

「――で、今日は生徒会作業は休みだって聞いたんですが」

 

 

 放課後にタカトシを生徒会室に呼び出して、やってきたのと同時に不機嫌そうな声音で言われる。恐らく久しぶりの休みに予定を入れていたのだろう。

 

「実は桜才学園でマスコットを作ろうという話があってな」

 

「初耳ですね」

 

 

 そりゃそうだろう。私が密かに進めていたのだから……もちろん、学園長の許可は取ってあるので、もしかしたらタカトシの耳に入っているかもとは思っていたが。

 

「今さっきその試作品が出来たと言われてな」

 

「そうですか」

 

「それでタカトシを呼んだんだ」

 

「はぁ……」

 

 

 何となく察しているのか、先ほどから表情があからさまに嫌がっている。

 

「サイズ的にもタカトシしか出来ないんだ」

 

「そういう事は事前に相談して欲しかったですね」

 

 

 着ぐるみを受け取ったタカトシは、不服そうに眺めてから一応着てくれた。しかし相変わらずタカトシが怒っている時の目は恐ろしいものがある。

 

「(何故コトミは何回も怒られているのに改心しないのだろう?)」

 

 

 ふとそんな事を思ったが、アイツはアイツで考えがあるのかもしれないな。

 

「それで、着てどうするんですか?」

 

「この後畑の取材が――」

 

「ちわー、マスコットの取材に来ました」

 

「来た」

 

 

 着ぐるみでタカトシの表情は分からないのだが、何故だか私はタカトシが嫌そうな顔をしていると確信している。

 

「それにしても、なかなかのクオリティですね。あっ、ポーズお願いします」

 

 

 畑が写真を撮っている横で、私は満足げに頷く。これなら知名度も出るだろう。

 

「このマスコットの名前は?」

 

「仮でだが、さくらたんと名付けてある」

 

「ほほぅ、英稜の森副会長みたいな名前ですね」

 

「桜才の桜から取ったんだ!」

 

 

 畑に言われて、森の名前を冠した着ぐるみをタカトシが身に付けていると思い、急に腹立たしくなる。だが気にしなければ良いと思い直し、私はタカトシに話しかける。

 

「少し息苦しいか?」

 

「まぁ我慢出来ない程ではないですが、篭ってるのでそれなりに」

 

「せっかくですから、外に出てみんなの反応を見てみませんか?」

 

 

 畑の提案に、私は期待と不安の二つの感情が芽生えた。

 

「生徒たちは受け入れてくれるだろうか? 生徒会予算の無駄遣いとか言われないだろうか? あぁ、やきもきする」

 

「そういう事は反応を見てから考えればいいんですよ。そもそも、学園長公認なんですから、生徒から何と言われようが今後活躍してもらうんですから」

 

「そうだったな」

 

 

 畑の言葉で決心がついた私は、さくらたん(タカトシ)を連れて外に出る事にした。ちょうど放課後だし、下校中の生徒たちの反応をしっかりと見ておこう。

 

「何アレー!」

 

「かわいーっ!」

 

 

 外に出てすぐ、女子生徒たちがさくらたんに群がり始める。あっという間にさくらたんの周りには女子が集まり、次々に携帯で写真を撮っていく。

 

「良かったですね、大人気じゃないですか」

 

「そうなんだが、なんだかやきもきする」

 

「それはやきもちじゃないですか? 彼女たちは中の人が津田副会長だって知らないですけど、会長は知っているのですからね~」

 

「なっ! そんな事ないぞ!」

 

 

 そうだ。彼女たちはあの中がタカトシだと知らないで群がっているんだ。タカトシが他の女子たちと写真を撮っているわけではないんだから、やきもきする必要は無いんだ。

 

「会長、あのキャラ何ですか?」

 

「えっ? あぁ。今度桜才学園のマスコットキャラクターとして採用されるさくらたん(仮)だ」

 

「遂にこの学園にもマスコットが出来るんですね! 生徒会メンバーもかなりのマスコットキャラだと思ってましたけども、実際にこういうのがあるのは良いですよね」

 

「私たちはマスコットじゃないぞ!?」

 

 

 一般生徒から見たら、私たちはそんな風に思われていたのか……

 

「ところで、あの着ぐるみの中って誰が入ってるんですか? 大門先生とか?」

 

「あっ、何となく分かる。ああいうのって外身は可愛いんだけど、中身はがっしりとした人が入ってるのが普通だもんね~」

 

 

 随分と夢の無い話をされた……確かに着ぐるみの仕事は意外と重労働で、鍛えた人が中に入ってる事が多いと聞くが、だからって大門先生にこんなことは頼めないだろうが……

 

「それで、誰なんですか?」

 

 

 女子生徒の一人が気になり過ぎてさくらたんに直接尋ねる。別に教えても問題ないんだが、何となく知られたくないと思ってしまうんだよな……

 

「………」

 

 

 答えて良いのか困っているのか、タカトシがこちらを見ている。いや、視線が何処に向いているのかなんて分からないが、間違いなく私に委ねている。

 

「取っていいぞ」

 

 

 そう言うとさくらたんは頷いて頭の部分を外す。

 

「意外と熱いんですよね、これ」

 

「えっ、津田君だったの!?」

 

「うそ!? もう一回、その状態で写真撮ってもらえますか!?」

 

「頭を外した状態で?」

 

 

 何故そんな事を頼まれたのか分からないタカトシは首を傾げたが、タカトシとツーショットなんて言ったら女子の間で発狂ものだからな。

 

「撮影会はこれまでだ! タカトシ! 生徒会室に戻るぞ!」

 

「はぁ」

 

 

 私は何となくイライラしてきたのでタカトシを連れて生徒会室へ戻る。結局さくらたんは本採用となったが、二度と頭を外した状態で歩かせないと心に決めたのだった。




半分くらいシノの自爆のような気も……

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