桜才学園での生活   作:猫林13世

571 / 871
劇場版第二段、まさかの決定


子供への教え方

 生徒会室で作業していると、萩村が鞄から何か紙を取り出して唸りだした。

 

「うーん、難しいなぁ」

 

「(あの萩村が問題を見て難しいだと? いったいどんな問題なんだ?)」

 

 

 私は好奇心に負け、作業中の書類を机に置き萩村の背後に回る。もしかしたら私じゃ読めない外国語で書かれた問題かもしれないが、覗かないまま作業を続けるのは無理だ。

 

「(どれどれ?)」

 

 

 紙を覗き込むとそこには――

 

『たろうさんはスーパーでみかんを3こ、りんごを5こかいました。あわせていくつ?』

 

 

――と書かれていた。

 

「萩村が阿呆の子になったっ!?」

 

「はい? あっ、これ私ようの問題じゃないですからね」

 

 

 私の反応で勘違いされた事に気付いた萩村が、事情を説明してくれることになった。

 

「実は最近、近所の子の勉強を見てあげているんですが……その問題作りがけっこう骨が折れまして」

 

「そういう事か」

 

 

 てっきり萩村がどこかに頭を打って、残念な頭になったのかと思ってしまったぞ……まぁ、そんな事は小説の中でしか起こらないだろうけども。

 

「じゃあ問題作りのプロに聞けばいいんじゃないか?」

 

「おっ、私を呼んだか?」

 

 

 私の発言に、生徒会室の隅でタカトシに怒られていた横島先生が反応を示す。ちなみに何故怒られていたのかと言うと、空き教室を個人的目的で使用しようと計画していたのがタカトシにバレたからだ。

 

「いえ、私が言った問題作りのプロは、横島先生ではなくタカトシです」

 

「はい?」

 

 

 まさか自分が指名されると思っていなかったのか、タカトシは腕組みしながら厳しく横島先生を睨んでいた表情から一変、困惑気味の表情になった。

 

「確かにタカトシなら出来るかもしれませんが、その子女の子なんですよ」

 

「この案は却下だな」

 

「いや、問題作成の手伝いくらいなら出来ますけど」

 

「(直接会わせなければ問題ないか?)」

 

「(恐らく)」

 

 

 タカトシが直接赴いて教えるのは問題だが、問題作成の手伝い程度なら何とかなるか? まぁこの問題を解くくらいの年代なら、タカトシに魅了されるという事は無さそうだが、念には念を入れて。

 そのようなやり取りがあった数日後、萩村が嬉しそうに私たちの報告してくれた。

 

「この間の問題のお陰で『塾でたいへんよくできましたもらったー』と言ってくれました」

 

「良かったな」

 

 

 女の子の真似だったのか、萩村の声が一瞬幼稚さを増したような気がしたが、あまり違和感なかったな。

 

「萩村! 何処で知り合ったんだ!」

 

「何ですか、いきなり……」

 

 

 ドアを思いっきり開けて生徒会室に飛び込んできた横島先生に、私たちは冷たい目線を向ける。

 

「だってお前今『ヘンタイとデキました』って! 詳しく聞かせてくれ」

 

「真剣な顔で何言ってるんですか。完全なる聞き間違いです」

 

 

 勘違いして飛び込んできた横島先生を追い返して、私たちは生徒会作業を進める事にした。だって、タカトシが怖い目で睨んでたから、ふざけるとああなると思って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後少し小腹が空いたので、柔道部に顔を出す前に購買部に寄る。あまりお小遣いは残っていないけども、少しくらいなら買い食い出来るだけの余力は残っている。

 

「あれ? おばちゃん、このパン賞味期限切れてるよ?」

 

「ありゃ、ほんとかい? じゃあ売れないね」

 

 

 食べようと思っていたパンが賞味期限切れで下げられてしまったので、私は違うパンを買って道場へ向かう途中トッキーに愚痴をこぼす。

 

「どうせ捨てちゃうならタダでくれって思っちゃうよね」

 

「そんな単純な事じゃないんだろ?」

 

「そうかな~?」

 

 

 私はまだ納得出来ない感じを見せると、丁度廊下の反対側からやってきた会長が会話に加わってきた。

 

「トッキーの言う通りだと思うぞ。男に営みの際『どうせ脱ぐんだからスカートめくらせろ』って言われたら困るだろ?」

 

「私はそういう意味で言ったんじゃ――」

 

「別にいいと思いますけど?」

 

「お前も変な答えをすんな!」

 

 

 トッキーに怒られながら、私は道場へ逃げ込む。すると丁度ムツミ主将が他の部員に活を入れているところだった。

 

「今日もがんばろー」

 

「お疲れさまです。主将はほんと裏表のない人ですよね~」

 

「そーかなー?」

 

 

 自覚が無いのか、ムツミ主将はしきりに首を傾げる。こういう仕草は女の子っぽくて可愛らしいのだが、ひとたび試合になると男でも簡単に投げ飛ばすから凄い人なんだよね。

 

「えぇ。タカ兄がそう言っていました」

 

 

 タカ兄も裏表がない――とある部分では思いっきり裏があるけども――人なので、特別な意味があっていったわけではないのだろうけども、確かにムツミ主将は裏表がないと私も思う。

 

「ひょっ、ひょんなコト言ってたんだっ」

 

「主将、声が裏がってます」

 

「ひゃって、タカトシ君に褒められると何だか照れ臭いんだもん……他の人に言われてもそうならないのに、なんでなんだろう?」

 

「まさか、自覚していない…だと……」

 

 

 ムツミ主将がそう感じる理由なんて考えるまでもないはずなのに、まさか本人が自覚していなかったとはな……これが天然ピュアっ子というわけか……




劇場版やるなら三期やって欲しい……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。