昨日テレビを観ていたら、討論番組がやっていたのでつい見入ってしまった。そして、なかなか白熱した討論に興奮したのだ。
「――というわけで、今日はディベートをやるぞ!」
「なんですか、急に」
私の宣言に、タカトシが呆れたのを隠そうともしない視線を向け、アリアと萩村は少し興味を持ったような視線を向ける。
「いろいろな意見をぶつける事で、相手の事をより理解出来るんじゃないかと思ってな」
「別にそれは良いですけど、四人でやったところで大した収穫はないんじゃないですかね」
「そうかもしれないな! というわけで既にメンバーを増やしておいた!」
「かいちょー! ムツミ先輩と来ましたよ~」
「ディベートって何ですか?」
「やっ!」
「風紀について相談があると聞いてきたのですが」
「よーす」
「……奇数になったので、俺は参加しなくてもいいですか?」
「いや、横島先生にはジャッジを頼むから、タカトシも参加するんだ」
最初から乗り気ではないタカトシが逃げようとしたので、すかさず逃げ道を塞ぐ。そもそも横島先生とディベートをしても楽しくないだろうしな。
「それで、議題は何なんだ?」
「その前にこのくじを引いてくれ! 肯定派、否定派に分かれてから発表する」
それぞれがくじを引き、私は余りものを引く。何時も先に引いてタカトシと別々だから、今回は最後に引いたのだ。
「それじゃあはっぴょーするぞ。肯定派は天草、畑、萩村、津田妹。否定派は七条、五十嵐、津田兄、三葉だな」
「なぜだっ!?」
「会長?」
発狂しかけた私を、萩村が見た事も無いような表情で見つめる。というか、何故私は毎回タカトシと別チームになってしまうんだ……
「タカトシ君、よろしくー」
「というか三葉、ディベートの意味は聞いたのか?」
「ううん、聞いてない。でもタカトシ君がいるから大丈夫かなーって」
「タカトシ君、今日は味方同士頑張りましょう」
「私は何時だってタカトシの味方だぞ!」
「シノちゃん、今は対立派閥なんだから」
私がタカトシと五十嵐に割って入ると、アリアからやんわり注意された。だがアリアの表情は、何処か勝ち誇ったもののように見えたのは、私の心がすさんでいるからだろうか……
「かいちょー、今日こそタカ兄に勝ちましょう!」
「意気込みは買うが、お前は舌戦でタカトシに勝てると思ってるのか?」
「………」
相手の実力を思い出したのか、コトミはそれ以降困ったような表情で笑う事しかしなくなってしまった。
「それではテーマを発表するぞ。天草が持ち込んだテーマは『学生のアイドル活動』だ」
横島先生から開始の合図があり、私は先制パンチをする事にした。
「近年のアイドルの年齢が下がっているのは知っての通りだが、その事でより身近にアイドルを感じているファンも増えていると思う」
「なるほどな」
「ちなみに、近年愛ドールのロリ化も――」
「余計な情報を付け加えないでください」
否定派の五十嵐が物凄い剣幕で注意してきたので、私はとりあえず意見を述べるのを止める。
「学生アイドルは仕事の為学校を休むことが多いと聞きます。そうなると当然学習時間が削られ、学力低下につながります」
「なるほど、おバカが露呈して一人Hが好きだと世間に知られてしまう危険性があるわけですね」
「なにくだらないこと言ってんだ、お前は」
「ヒェ!? た、タカ兄……」
私の隣に座るコトミが余計な事を言ってタカトシに睨まれた所為で、私まで怒られた感じになってしまったではないか……
「最近見たテレビ番組で言っていたのですが、アイドル活動の一環でいろいろな国に赴き、そこで経験した事を知識として蓄えられるそうです。アイドル活動のお陰で見聞を広げられるのも事実ではないでしょうか」
「でも、旅行ならいつでも行けると思うよ? 見聞を広げる為なら、なおのことだけど」
「それは七条さんがお金持ちだから言える事ですよ。というか、津田君だって自分の彼女がトップアイドルだったらどう思う? 国民的人気のアイドルのプライベートを独り占め出来るんだよ?」
「はぁ……」
畑の攻撃に、タカトシはあまりピンと来ていない様子。まぁタカトシならそうだろうとは思ったが、もう少しくらい興味を持っても良いんじゃないか?
「ほら、彼女が恋愛ドラマとかに出演したら、NTR気分を味わえるわけだし」
「………」
「コトミ、さすがに今のは無いと私だって分かるぞ」
「あ、あれ?」
タカトシが完全に興味を失ったところで、今回の討論は終了となった。
「それじゃあ判定の横島先生、我々の意見を聞いて、今回の議題について、どう思われましたか?」
「いろいろな意見を聞いた結果、今回は『是』だな。否定派の意見も的を射ていたが、最終的には活動をする個人の考えが大切という意見が胸に刺さった」
「……そんな意見出ましたっけ?」
「まさか横島先生、途中寝てました?」
「さ、さーて、そろそろ下校時間だぞ。お前らも帰る支度しろー」
あからさまに視線を逸らし、話題を逸らしたのを見て、私たちは揃ってため息を吐いたのだった。
今年一年ありがとうございました。来年もア○ル締めてがんばろー!