桜才学園での生活   作:猫林13世

583 / 871
取材熱心なのは認めるんだが……


畑の興味

 夏休みに入り、我々は桜才・英稜生徒会合同で宿題を片付ける為に図書館へ集まろうと計画し、都合がつくものだけで集まった。ちなみに、桜才は四人全員集まり、英稜はカナと森の二人だけだ。

 

「それにしても、タカ君もスズポンもすさまじい集中力ですね」

 

「まだそれほど夏休みになって時間も経ってないのに、殆ど終わってるからな」

 

「スズちゃんは兎も角、タカトシ君は何時の間に宿題をやってたの?」

 

 

 タカトシは家事の他にバイトもあるから、宿題に費やせる時間がそう多くないと思うんだが……しかもコトミの面倒を見たりしなければいけないから、更に時間が無くなってるはずだというのに……

 

「効率の問題では? それか、夏休みに入ってエッセイに時間を割かなくて良くなったので、その分の時間を使ってるからでは?」

 

「タカ君のエッセイの新作が読めないのが、夏休み唯一の不満ですね」

 

「本屋にでも行って本職のエッセイでも買って読めばいいじゃないですか……」

 

 

 そう言ってタカトシは再び集中力を発揮して宿題を片付けていく。

 

「というか、コトミも呼んだはずなんだが?」

 

「コトちゃんなら、柔道部の練習で朝から出かけてるよ」

 

「なるほど、柔道部……ん?」

 

 

 今の発言に、私は引っ掛かりを覚える。何故カナのヤツはコトミが朝から出かけている事を知っているんだ?

 

「義姉さんは昨日からウチにいましたから」

 

「何でだっ!」

 

「お静かに。単純に俺が昼からバイトだったので、コトミの面倒を見てもらってたんですよ」

 

「夏休みだから、そのままタカ君の家にお泊りしちゃった」

 

 

 タカトシとカナは親戚同士だからそういう事もあり得るのか……

 

「というか、さっきから手が止まってますよ?」

 

「ちょっと集中力が散漫になり始めてるのかもな……おや? あれは畑じゃないか」

 

 

 壁面のPCコーナーに見知った人を見つけ、私はカナとアリアを引き連れて畑の側へ移動する。

 

「はぁ……会いたい、ユウマ」

 

「「「ユウマ?」」」

 

 

 いったいユウマとは誰の事なのか……畑も遂に一般的な女子高生みたく男性に憧れだしたというのか。

 

「おや、皆さん」

 

「畑、ユウマとはいったい?」

 

「はい? あぁ、これですよ」

 

 

 畑が見ていたサイトを私たちにも見えるように移動する。そこにはUMAの文字……なるほど、そっちか。

 

「我々はUMAの目撃情報を得て張り込みまでしたのに……」

 

「あぁ、あの河童の件か」

 

 

 私たちも興味があって随行したが、結局河童は現れる事無く、その後も大した成果も出ていないらしい。

 

「それで、今回はどんな目撃情報なんだ?」

 

「これです」

 

 

 畑の説明では、○○山で目撃された獣人の写真が出回っているとの事。

 

「女型の獣人らしく、イメージ画まで作られているんですよ。実物を写真に収めれば確実に儲k――いえ、話題になるでしょう」

 

「今、儲かるって言った?」

 

 

 畑の本音が垣間見えたが、私たちはそこには追及しない事にした。

 

「イタズラじゃないのか? ネコミミをつけて走り回っているところを目撃されたとか?」

 

「いえ、有志の調べで、この形のネコミミは存在しないことが分かっています。ですから、これは本物の獣人に違いありません」

 

「あまいな。自分のブラを頭に被って走り回らされる羞恥プレイの最中だったかもしれないだろ」

 

「ほほぅ、そんなマニアックプレイがあったとは……ですが、獣人である可能性を否定するには弱すぎる意見です。今回は目撃情報もあるんですから」

 

「そうなのか?」

 

「はい。全身茶色っぽい姿をしていたと。これは獣人である何よりの証拠」

 

「汚物プレイヤーって可能性は?」

 

「……はっ! その可能性を忘れていたとは……」

 

 

 ガックリと膝をつく畑。しかしそれも一瞬で、次の瞬間には立ち上がり声を潜めて我々に食って掛かる。

 

「そこまで言うのならば、我々と勝負しましょう! もしUMAが本当に存在したら、津田君を我が新聞部に移籍させていただきます」

 

「私たちが勝ったら?」

 

「その時は、皆さんの恥ずかしい写真を返還いたします」

 

「ちょっとまて。何だその恥ずかしい写真というのは」

 

 

 そんな物を撮られた覚えも無いが、畑の事だからまた盗撮でもしていたのだろう……というか、これは一度新聞部にガサ入れに行かなければ。

 

「皆さんが油断した瞬間を収めた、ちょっと見られたくない写真とかですよ。決して天草会長が誰もいない生徒会室で――」

 

「お前は何を言うつもりだ? ん?」

 

「シノっち、何をしてたんですか?」

 

「何もしてないからな?」

 

 

 カナに疑惑の念を懐かれてしまったようだが、私は断じて何もしていない、うん……

 

「では勝負は成立という事で良いですね? 集合は明日の朝、場所は学園の前で」

 

「良いだろう。何としてもその写真の流出は避けなければ……まて? 結局我々しかリスクを負ってないじゃないか」

 

「バレました? では見つからなかったら津田副会長の写真を皆さまに特別提供させていただくという事で」

 

「……分かった」

 

 

 タカトシの写真とはかなり貴重なものなのだろうな……これは何としてもUMAを探し出さなくてはと思っていたけども、ちょっと考えてしまうな……




動機が不純なんだよな……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。