桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは成長してるんだかしてないんだが……


だらしない恰好

 夏休みという事で、今日はタカ君の家に来ている。名目は家事を手伝いに来たなんだけど、タカ君としてはコトちゃんの相手をしてもらう程度にしか思っていないようだ。

 

「あらら、またコトちゃんは散らかして……少しは片付ける癖をつけてもらいたいわね」

 

 

 義妹が散らかしたものを片付けながらそう呟くと、近くを掃除していたタカ君に聞こえてしまったようで少し笑われてしまう。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、義姉さんがコトミの姉ではなく母のような事を言っていたのが少し面白かっただけです」

 

「さすがにあんなに大きな娘はいないよ? というか、まだ処女だから。まぁ、タカ君との子共ならすぐにでも欲しいけど」

 

「暑くておかしくなってます?」

 

 

 タカ君から冷ややかな視線を向けられ、私は慌ててコトちゃんが散らかしたものを片付ける。危うく失禁してしまうところだった……

 

「ところで、そのコトちゃんは?」

 

「その辺でだらしなくしてると思いますよ」

 

 

 タカ君がそう言ったのと同じタイミングで、リビングにコトちゃんがやってきた――物凄い恰好で。

 

「わぁ、本当にだらしない」

 

「別に上半身裸じゃないですよ? こうやって、貼り付け型のビキニですけど」

 

「なーんだ……やっぱりだらしないよ?」

 

 

 何でそれをしていれば大丈夫だと思ったのか一瞬考えてしまったけども、どう見てもだらしない恰好でしかない。ここが浜辺とかなら良いのかもしれないけども、家の中だし。

 

「勢いで買ったのは良いんですけど、思ったより露出高くて人前で着れなくて」

 

「それだったら自分で紐をつけてアレンジ」

 

「おー! でも、これじゃあ普通のビキニと大差ないんじゃ」

 

「いやいや。紐解けばポロリ詐欺ドッキリが出来るよ?」

 

「それは良いですね! 今度シノ会長たちに仕掛けてみますよ~」

 

「遊んでんじゃねぇ。コトミ、散らかした物は自分で片づけろ。じゃないと全部捨てるからな」

 

「それは勘弁して!」

 

 

 タカ君に怒られてコトちゃんはすぐに散らかしていた物を全て部屋に持ち帰る。というか、何でリビングであんなに散らかるまでになるんだろう……

 

「あら?」

 

 

 少し考え事をして立ち止まっていたら、私の股の間をムラサメ君が潜り抜ける。タカ君とコトちゃん以外にはあまり懐いていないって聞いてたけど、結構人懐っこい猫君じゃない。

 

「おっ、ムラサメはドMだったのか」

 

「何言ってんの?」

 

 

 片づけ終わったコトちゃんがその光景を見てそんな感想を漏らし、タカ君から再び冷ややかな視線を浴びることになったのだった。

 

「つ、冷たいといえば! 見てください! こんなにお腹周りがゆるゆるー」

 

 

 何とか話題を変えようとしたのか、コトちゃんが急にウエストを自慢してきた。

 

「暑くて食欲なかったからー」

 

「それで冷たい物ばかり食べてたの? でもそれじゃあ身体に悪いよ」

 

「………」

 

 

 私の言葉を聞いたからなのかは分からないけども、コトちゃんが急に震えだす。

 

「おっ、お腹の中もゆるく……」

 

 

 ダッシュでトイレに駆け込んでいったコトちゃんを、タカ君が残念な人を見るような目で見ていたのが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がトイレに籠っていたからかは分からないけども、晩御飯はお腹に優しい物をタカ兄が作ってくれた。

 

「コトちゃん、ちゃんとタカ君にお礼を言っておいた方が良いよ?」

 

「分かってはいるんですけどね~」

 

 

 食事を済ませ片付けはタカ兄がやってくれているので、私はお義姉ちゃんと一緒にお風呂に入っている。我が家の風呂はそれ程広くはないが、女二人で入るくらいは出来る広さなので、お義姉ちゃんがお泊りする時はこうして一緒に入る事が多いのだ。

 

「それにしても、我が兄ながら女子力の高さには驚きを隠せませんよ」

 

「それだけコトちゃんがタカ君に迷惑をかけてきたって事じゃないの? 普通に生活してたなら、タカ君だってあそこまで料理上手にはなってなかったかもしれないし」

 

「それは別に私だけの所為じゃないですよ~! お母さんたちが出張ばっかりで家にいなかったのも原因ですから」

 

「でも、コトちゃんがちゃんとお手伝いしていれば、タカ君だってあそこまで疲れ切った感じにはならなかったんじゃないの? コトちゃんだって、もう少ししっかりとした子に育ってたかもしれないし」

 

「あはは、お義姉ちゃん何だかお母さんみたいですね」

 

「それ、お昼過ぎにタカ君にも言われたよ」

 

「そうなんですか?」

 

 

 どちらかと言えばタカ兄の方がお母さんっぽいんだけどな……性別を無視すればの話だが、私の知り合いの中で一番お母さんっぽいのはタカ兄だ。

 

「夏休みもまだ残ってるけども、少しはコトちゃんも自立できるように頑張った方が良いよ?」

 

「少しは頑張ってるんですけどね~。今日だって、部屋を片付けようとしてましたし」

 

「リビングを散らかしたままだったからじゃないの?」

 

「はい、その通りです……」

 

 

 あれだって後で片づけようと思ってたんだけど、ついつい押し入れから出てきたマンガを読みふけっていた所為で忘れちゃったんだよね……それでお茶を飲みにリビングに行って漸く思い出した流れなのだ。

 

「今後はしっかりとしていきたい所存であります」

 

「よろしい」

 

 

 お義姉ちゃんにそう宣言して風呂を出て、さっそくバスタオル姿でうろうろするなとタカ兄に二人揃って怒られたのだった……




成長した分だけ別のところが酷くなってる気が……

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