桜才学園での生活   作:猫林13世

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山盛りはいらないな……


大食いチャレンジ

 最近合同企画が少ないとシノっちから相談を受け、我々英稜生徒会メンバーと桜才生徒会メンバーで集まり会議を開く事にした。

 

「「第一回学園行事企画会議」」

 

「「わー」」

 

「楽しそうっすね」

 

「タカトシ、森さん、私は何もツッコまないから任せた」

 

「少しは手伝ってくださいよ。私は英稜メンバーで手一杯ですから」

 

「はぁ……」

 

 

 ノリノリのアリアっちと青葉っち、そして広瀬ちゃんとは対照的に、二年生三人のノリはあまり良くない。

 

「何か良いネタが無いか、皆で話し合おうという集まりなんだから、タカ君もサクラっちもスズポンも手伝ってください」

 

「わざわざ喫茶店に集まる必要はあったですかね?」

 

 

 タカ君に睨まれ、私とシノっちはそれぞれ違う方向へ視線を逸らす。するとシノっちが何かを見つけたように声を上げた。

 

「これだっ!」

 

「ご注文ですか?」

 

「あっ、いや……」

 

 

 シノっちの視線の先には「大食いチャレンジ」のポスター。そしてそこに描かれているのは山盛りのかき氷だ。

 

「とりあえず、やる?」

 

「まぁ残暑厳しいですから、食べたいところではありますね」

 

「では人数分をお願いします」

 

「やるなんて言って無いぞっ!?」

 

 

 シノっちが早々に人数分を注文したので、スズポンが慌てて止めようとしたが、店員は既に奥に下がってしまった。

 

「仕方ないね……」

 

「何で俺まで……」

 

 

 既に諦めの境地に達しているのか、サクラっちとタカ君はスズポンのようにシノっちに食って掛かる事はせず二人揃ってため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人数分の山盛りかき氷が運ばれてきて、私は注文した事を早くも後悔し始める。

 

「こうしてみると、かなり多いな……食べきれるか不安だ」

 

「せっかくですし、罰ゲームを懸けて競争しませんか?」

 

「むっ、そうなってくると弱音を吐いてる場合ではないな」

 

 

 英稜の新メンバー、広瀬に勝負を挑まれ私はやる気を取り戻す。我ながら単純だとは思うが、戦う前から負けを認めるなど出来ないからな。

 

「それで、何を懸けるんだ?」

 

「そうっすね……」

 

 

 何かを考える広瀬をジッと見つめる。すると何か思いついたのか声高らかに宣言した。

 

「じゃあ負けた方は、勝った方にこのパフェを奢るって言うのはどうっすか?」

 

「それ、君以外は勝った方も罰ゲームだと思うが……」

 

「そんな事ないと思うっすけど……あれ?」

 

 

 同意を求めようと残りのメンバーに視線を向けたが、誰一人同意することなく視線を逸らしている。あのタカトシですら、引きつった笑みを浮かべて視線を逸らすくらいだから、広瀬の感性がズレているのが証明された。

 

「とりあえず食べましょうか。早くしないと溶けちゃいますし」

 

「だな」

 

 

 やる気なさげだったが目の前に運ばれてきて覚悟を決めたのか、萩村がスプーンを動かし始める。それを合図にそれぞれ食べ始めるが、やはり量が多い……

 

「アリアはレモン味か」

 

「うん。子供の頃おしっこを掛けてレモン味って遊びをしたっけ」

 

「っ!?」

 

 

 アリアと同じくレモン味を食べていた青葉のスプーンが止まる。

 

「まさか同じ味の相手の戦意を削ぐ作戦とは……アリアっち、やりますね」

 

「食事中に汚い話をするな」

 

 

 アリアにタカトシからのツッコミが入り、何とかその話を引っ張る事は無く済んだ。

 

「おっと……零してしまった」

 

 

 タカトシの視線に動揺したわけでは無いが、私はイチゴ味のかき氷を胸の辺りに零してしまう。

 

「早く拭かないとシミになってしまうな」

 

「なんだかシノっちの乳首が透けて見えているように思えますね」

 

「なんて事だっ!?」

 

「やる気ないなら帰れば?」

 

 

 昔の癖が出始めているのを受けて、タカトシは我々がやる気をなくしていると判断したようだ。別にそんな事は無いんだが、注文した手前途中棄権は避けたい。

 

「………」

 

「どうしたの? かき氷をジッと見詰めちゃって」

 

「いえ、ちょっと苦い思い出を思い出してしまっただけです」

 

「苦い思い出……」

 

「白くて苦いものを掛けたの?」

 

「ダイレクトな思い違いをするな!」

 

「はぁ……」

 

 

 我々が暴走し始めてしまったので、結局山盛りかき氷企画は見送る事にした。というか、広瀬以外のメンバーは食べきるのにやっとで、企画云々など話してる余裕はなかったんだがな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途中でとんでもない勘違いをされて食欲を失い掛けたけども、タカトシ君のお陰で何とか完食する事ができた。

 

「ありがとね、タカトシ君。私一人だったら絶対に止められなかったと思う」

 

「まぁ、ふざけてたのは殆どこっち側だから、サクラが気にする事は無いんじゃないか?」

 

「でも、魚見会長もふざけてたし」

 

「あの人は俺の関係者でもあるから、サクラ一人が気に病む事ではないだろ」

 

「そうかもしれないけどさ……」

 

 

 なんとなく申し訳なく思ってしまうのだけども、タカトシ君にこう言ってもらえると心が落ち着く。同じことを違う男子に言われても落ち着かないと思うと、やっぱりタカトシ君は特別な存在なのかなって思っちゃう。

 

「ところで、広瀬さんはほんとにパフェ食べるの?」

 

「奢ってくれるなら食べます」

 

「凄いね……」

 

 

 いち早く食べ終えてまだ食べ足りないという広瀬さんに、私は呆れるのを通り越して少し尊敬してしまった。




てかパフェもいらない……

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