桜才学園での生活   作:猫林13世

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引率の役目を果たすつもりがあるのか……


覆面調査

 生徒会作業をしていたら、アリアが何処かそわそわした雰囲気を醸し出している。

 

「アリア、何かあるのか?」

 

「えっ?」

 

「なんだかそわそわしてるようだから」

 

「うん、実は――」

 

 

 アリアから説明を受けて、私と萩村は首を傾げる。

 

「「覆面調査?」」

 

「うん。うちが経営しているお店にね。本当は出島さんが行く予定だったんだけど、急用ができちゃったんだって。それで私が代理で行くことになったんだけど、皆も一緒にどう?」

 

「皆と言うと、私と萩村、後は所用で席を外しているタカトシの四人でか?」

 

「学生だけで入れるお店なんですか? タカトシが私服でいればなかなか学生だってバレないでしょうけども」

 

「そうだね……」

 

 

 アリアが何かを考えていると、所用で席を外していたタカトシが横島先生と一緒に生徒会室に戻ってきた。

 

「何の話してるんだ?」

 

「実はですね――」

 

 

 横島先生に説明をすると、先生は何か納得したように頷いてから、提案してきた。

 

「引率で私が行ってやってもいいぞ」

 

「タダ酒呑みたいだけじゃないんですか?」

 

「自分の分くらいは払うに決まってるだろ?」

 

「それじゃあ、お願いします。あっ、皆のはバイト代としてうちが出すから安心して」

 

 

 我々の食事代は七条家が払ってくれるそうで、私たちは安心して覆面調査の依頼を引き受ける事にしたのだが、タカトシは少し困ったような表情を浮かべている。

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ、今日はバイトなので」

 

「それじゃあ仕方ないな……」

 

「話は聞かせてもらった! そのバイト、私が参加します」

 

「コトミか……」

 

 

 盗み聞きしていたのか、タイミングよくコトミが生徒会室に入ってきた。タカトシは分かっていたようだが、急に室内に入って来られるとビックリするんだよな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄の代役で覆面調査員のバイトで七条グループが経営しているフレンチ店にやってきた。

 

「リーズナブルな値段で楽しめるフレンチ店か。いいな!」

 

「リーズナブルって言っても、私のお小遣いじゃ無理ですねー」

 

 

 普段こんなところに来ることなんてないから、値段ばかり気になってしまう。いくら七条家の奢りだと言っても、食べ過ぎないようにしよう。

 

「ところで、アリアは何そわそわしてるんだ?」

 

「正体ばれないよう気を付けないといけないから」

 

「だから伊達眼鏡で変装してるんですか?」

 

 

 アリア先輩は今、普段下ろしている髪を結い、伊達眼鏡をかけている。普段とは違う雰囲気に、私でも意識してしまう。

 

「本当は伊達キノコで男装しようって出島さんに言われたんだけど、橋高さんに止められちゃったからね」

 

「あの人は本当に碌なこと言わないですね……」

 

 

 タカ兄がいない為、スズ先輩がアリア先輩にツッコミを入れる。

 

「お待たせしました。野菜と海のミルクのスープです」

 

「美味しそー」

 

 

 運ばれてきた料理に、私は歓声を上げる。しかし食べる前に、少し気になったのでスズ先輩に質問をする。

 

「スズ先輩、海のミルクって何ですか?」

 

「牡蠣のことよ」

 

「牛乳のように栄養素が豊富、ということだ」

 

「へー、スタミナ付きそうですね」

 

「そして夜には下から海のミルクを出すわけだな」

 

「なるほどー」

 

「食事中に変な事を言うな! というか、もう酔ってるのかっ!?」

 

 

 この人は何時もそうだけど、酔っ払って何時も以上にエンジンが掛かっているようで、スズ先輩が何とかして止めようとしている。が、タカ兄程上手くは操縦できないようだ。

 

「白身魚のポワレとクリーム添えです」

 

 

 次の料理が運ばれてきて、スズ先輩が一口食べて感激した。

 

「ほっぺたが落ちそうっ」

 

「はい」

 

「?」

 

「ほっぺたからクリームが落ちそうですよー?」

 

「ぐはー!?」

 

 

 せっかく大人っぽい料理を食べていたのに、やっぱりスズ先輩は子供っぽい感じになってしまう運命なんですね~。

 

「いやー、美味かった。さすがは七条家の娘がお薦めするだけのことはあるな!」

 

「っ!?」

 

 

 酔っぱらった横島先生がアリア先輩を見ながら大声でそんな事を言うものだから、店中に緊張が走った。私でも分かるくらいだから、恐らく全員がそれを感じ取ったことだろう。

 

「なにいってるんですか~。私は津田ですよ~」

 

「? あ、あぁ……そうだったな」

 

 

 アリア先輩から底冷えするような視線を向けられ酔いがさめたのか、横島先生が申し訳なさそうに頭を掻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会計を済ませて店の外に出てから、私と会長で七条先輩を問い詰める。

 

「何故津田姓を名乗ったんですか?」

 

「咄嗟に異性の苗字が出てこなかったんだよ、タカトシ君以外」

 

「別に異性の苗字である必要は無いだろ? あの場にいなかった出島さんの苗字でも、カナでもよかっただろうが」

 

「うーん……苗字が変わるならタカトシ君かなーって思っちゃったんだと思うよ。出島さんやカナちゃんじゃ、私と結婚は出来ないし」

 

「何となく言いたい事は分かりましたが……というか、横島先生が余計な事を大声で言わなければよかっただけですけどね」

 

「いやー、すまんすまん。ついいい気分になってな」

 

 

 七条先輩から殺気を浴びせられた所為で酔いがさめているので、横島先生は素直に頭を下げる。というか、七条先輩もあんな雰囲気を出せるんだなぁ……




やっぱり余計な事しか言わない横島先生……

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