桜才学園での生活   作:猫林13世

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あり得そうだからな……


ドジコンボ

 最近また部室に私物を持ち込む生徒が多いと聞き、抜き打ちで部室チェックを行う事になった。

 

「最後はロボット研究部ですね」

 

 

 元女子高ということもあって部室にタカトシが入るのを断ってくる部活もあったが、そう言う時は大抵生理用品とかが出しっぱなしだったりした。まぁ、今更タカトシが生理用品を見て興奮したりするはずもないので、二回目からはタカトシに突入させると脅しておいた。

 

「あれ、スズちゃん?」

 

「ネネ、抜き打ちで部室チェックよ。神妙にしなさい」

 

「べ、別にいけないものは持ってきてないよ?」

 

 

 明らかに動揺しているネネを見て、私は何か余計なものを持ち込んでいると確信し、タカトシに目で合図を送った。

 

「失礼します」

 

「だ、だめ!」

 

 

 タカトシが部室の扉に手を掛けると、ネネが大声で制止しようとする。だがタカトシはネネを一瞥しただけで、躊躇なく扉を開け中に入った。

 

「随分な数を持ち込んでますね」

 

「部室に私物を持ち込んじゃイカンぞ」

 

「ゴメンなさい」

 

 

 タカトシに続いた会長が部室の中を見て、軽くネネに注意する。

 

「にしても、ずいぶん綺麗に保管されてるわね」

 

「私にとっては大切な子供だからね」

 

 

 随分と大事にしているのか、ネネはフィギュアを子供と表現する。前にロボットたちも子供と言っていたから、それと同等の思い入れがあるのだろう。

 

「お尻に入れてもいたくないっ」

 

「それを言うなら目……あれ、マジで言ってる?」

 

 

 ネネならありえそうで嫌だな……というか、没収するのが嫌になってきた……

 

「ちゃんと持ち帰ってくださいね。一週間後にチェックに来ますので、もし持ち帰ってなかったら生徒会と風紀委員で没収しますので」

 

「ゴメンなさい! 没収は勘弁してください!」

 

 

 タカトシが違反切符を手渡し、期限を設けて持ち帰るよう注意すると、ネネは大慌てで部屋の隅にあった段ボールにフィギュアたちをしまい始める。

 

「これだけの数、揃えるのにどれだけお金かけたんだ?」

 

「一部は中古で安く手に入れたんです。状態の良い中古探すのは一苦労でしたけども」

 

「というか、これだけの量を一回で持って帰るのは大変じゃない? 良かったらウチの業者に運ばせるけど」

 

「良いんですか? でも、配送料もバカにならないですし……」

 

「後輩のためなら、無料で運ぶよ?」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 七条先輩の申し出に涙を流しそうな勢いで飛びついたネネだったけども、怒られるって分かりそうなんだから、家でコレクションすれば良いのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柔道部も更なる高みを目指す為に、これからは毎日朝練をすることになり、マネージャーの私も日によってはタカ兄より先に学校に来ることになってしまった。

 

「ほらほら、声出てないよー!」

 

「相変わらずムツミ先輩は気合入ってるな~」

 

 

 既に二時間近く動いているというのに、全く疲れる素振りが見えない。トッキーたちもだいぶ慣れてきているとはいえ、初めの頃はへとへとだったもんな~。

 

「主将、そろそろ時間です」

 

「へっ? あぁ、もうそんな時間なんだ。はい、練習そこまで! シャワー浴びて教室に行くよ」

 

 

 私の言葉で時間の概念を思い出した主将が終了の合図を出す。それで他のメンバーたちはその場に倒れ込み、息を整えてからシャワー室へと向かう。その間、マネージャーの私は道場の掃除などの雑務を行うことになる。

 

「あっ、お弁当持ってくるの忘れた……」

 

 

 今日はタカ兄より先に出たので持ってきてくれるかもしれないけど、タカ兄に怒られるだろうな……

 

「はぁ、憂鬱だよ……」

 

『あー……ここ拭かずに着ちまったか』

 

「(トッキーの何時ものドジか)」

 

 

 シャワー室から聞こえてきたトッキーのセリフに、私は心の中で笑みを浮かべる。トッキーのドジっ子も相変わらずだな。

 

『ちなみにそのブラウス、私の何だけど』

 

『す、すんません……』

 

「(ドジコンボだと……)」

 

 

 何処かを拭かないでブラウスを着て、挙句にそのブラウスは自分のではなく主将のだったとは……ここまでありきたりなドジ、マンガ以外で目の当たりにするとは……

 

「失礼します」

 

「あれ、タカ兄? どうかしたの?」

 

「お前が一番分かってるんじゃないのか?」

 

「うっ……お弁当を届けてくれたんですか?」

 

「ほら。時さんのことをドジと言う前に、お前もこういうミスを減らせ」

 

「仰る通りです……」

 

 

 タカ兄に怒られていると、シャワーを浴び終えた皆さんが戻ってきた。

 

「あっ、タカトシ君おっはよー」

 

「……あぁ、三葉か。おはよう」

 

「タカ兄、どうかしたの?」

 

「いや、気配と見た目が一致しなくてな」

 

 

 何時も髪を結わいている主将だが、シャワー上がりということで今は髪を下ろしている。それでタカ兄は一瞬反応出来なかったのか。

 

「タカトシ君でも分からないことあるんだねー」

 

「三葉は髪を結わいてる印象が強かったからな。でも、そっちも似合ってると思うぞ」

 

「へっ!?」

 

「ん? コトミ、俺変なこと言ったか?」

 

「別に。ただ無自覚ラブコメ野郎の称号は伊達じゃないなーって思っただけ」

 

「何なんだ……」

 

 

 タカ兄に褒められてムツミ主将は顔を真っ赤にして、周りの人たちはニヤニヤ笑いだし、タカ兄は自分が何をしたのか気付かないという状況。ほんと天然って怖いなー……




三葉は結わいてるイメージが強いからな

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