桜才学園での生活   作:猫林13世

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ホントにやったら凹むよな……


トッキーの失敗

 柔道部のマネージャーとしてランニングのタイムを計っていると、生徒会メンバーが見回りにやってきた。

 

「皆さん、お疲れさまでーす」

 

「コトミか。何をしてるんだ?」

 

「タイムを計ってます」

 

 

 よく見るとタカ兄はいないようだけども、このメンバーだけでも見回りは出来るもんね。

 

「タカ兄は何処に行ったんですかー?」

 

「タカトシは風紀委員の手伝いで校内の見回りをしてるわよ」

 

「さすがタカ兄ですね。生徒会だけではなく風紀委員でも頼りにされてるんですね~」

 

 

 我が兄ながらいろいろな人から頼られてるのが羨ましい。これが私だったら頼られるどころか見回りをちゃんとしているか見張られるだろう。

 

「そうそう、向こうのイチョウの木だが、銀杏が落ちてるから気をつけろよ。踏むと臭いからな」

 

「そうですね~。万が一その上で転んだら、粗相をしたように思われちゃいますからね」

 

 

 ちょうどそのタイミングで、柔道部の皆さんが戻ってくる。今日は主将がペースメーカーとして走ってるので、殆どの方が同時に戻ってきた。

 

「あれ? トッキーはどうしたんですか?」

 

「ちょっとアクシデントがあってね。もうすぐ来ると思うよ」

 

 

 ムツミ主将がそう答えると、トッキーの姿が見えた。どうやら道を間違えたとかではなくて、私はとりあえず安堵した。

 

「と、トッキー……」

 

「あん?」

 

 

 トッキーを出迎えたは良いが、彼女のお尻は茶色く汚れており、何やら臭いにおいを放っている。

 

「替えのパンツ、持ってこようか?」

 

「この茶色いの土だから! 臭いは銀杏だからな!!」

 

「さっき転んじゃったんだよね。それで、ちょっと遅れてたんだよ」

 

「そうだったんですね。でもどちらにしよ洗濯しなきゃいけないから着替えてきなよ」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 トッキーが着替えた道着の下を洗濯するために掴むと、少し手が汚れてしまった。これくらいなら急いで洗う必要は無いので、とりあえずは洗濯機を操作する。

 

「手を洗わないと」

 

「すまん」

 

「別にトッキーが悪いわけじゃないでしょ? これは、私の不注意だし」

 

 

 手を洗い終えた私は、靴を脱いで足も洗う。

 

「ん? 足も汚れたのか?」

 

「手を汚しちゃったから足を洗ったのさ」

 

「そんなことしてる暇があるなら道場の掃除をしろ。さっき主将が『何だか汚れてるね』って言ってたぞ」

 

「この間したばかりなんだけどな?」

 

「お前のことだから、隅までちゃんと掃除してなかったんじゃないか?」

 

「私は主婦じゃないから、そんな細かい所まで掃除しないって。タカ兄じゃないんだし」

 

「兄貴や全国の主婦に謝れよな……」

 

 

 トッキーに怒られてしまったので、私は軽く頭を下げてから道場の掃除へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員の仕事で手が足りないのでタカトシ君に手伝ってもらったお陰か、想定していた時間より早く終わった。

 

「タカトシ君、今日はありがとうございました」

 

「いえ、服装検査は生徒会の管轄でもありますから。本来なら会長が手伝うべきなのですが、男子生徒のチェックはカエデさんには出来ませんし、会長だとどことなく不安でしたので」

 

「ゴメンなさい……」

 

 

 タカトシ君とはこうしてお喋りすることができるけども、他の男子とは以前より会話することが難しくなっている。それどころか、近づくことすら出来なくなった。まぁ、以前から積極的に近づくことはしなかったのだけども……

 

「これはやはり、津田副会長が責任を取って風紀委員長を彼女にするしかないですね」

 

「か、彼女っ!?」

 

「何処から現れるんですか、貴女は……ついでに、スカートの丈が少し短いので、ちゃんと既定の長さに戻しておいてくださいね」

 

 

 私は畑さんの登場と発言に動揺して注意出来なかったが、タカトシ君はしっかりと畑さんのスカート丈を確認していたようだ。他の男子だったら不潔だと思うかもしれないけど、タカトシ君だと仕事熱心だと思ってしまうのは何故だろう……彼も男子のはずなのに。

 

「まぁまぁ、細かいことは置いておくことにして、正直風紀委員長の男性恐怖症は以前よりもひどくなっていると思います。津田副会長が基準になってしまった所為で、一般的な男子でも不潔だと感じてしまうほどに」

 

「それって俺が悪いんですかね?」

 

「この際誰が悪いかなんて関係ないんですよ。このままでは風紀委員長は一生しょj――」

 

「畑さーん?」

 

「失礼。一生異性と付き合うことができないでしょう。つまり津田副会長が風紀委員長と付き合うしかないんですよ」

 

「以前も言ったかもしれませんが、俺以外にも大丈夫な異性が現れるかもしれないじゃないですか。決めつけは失礼ですよ」

 

「ですが風紀委員長の現状を考えれば、貴方以外の男子に近づけないんですから、現れる可能性があったとしても、その相手を捕まえられるかどうか」

 

 

 畑さんの表現に反論したかったけども、私は何も言えなかった。実際タカトシ君以外の男子には声を掛けられた逃げ出したくなってしまうのだから……

 

「これでも一人の友人として、風紀委員長のことは気に掛けているんですから」

 

「なるほど。では、このメモは何でしょうか?」

 

「あっ……」

 

 

 タカトシ君が取り上げたメモには『副会長と風紀委員長、熱愛発覚か!?』と書かれていた。この後、私とタカトシ君で畑さんを説教したのは言うまでもないだろう。




そして相変わらずの畑さん……

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