桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作では付き添いはタカトシですが


ムツミのアルバイト

 タカトシ君におやつを用意してもらえるということで、そのおやつ代を稼ぐためにバイトをすることになった。

 

「――で、何で私までバイトしなきゃいけないんですか?」

 

「コトミちゃんだって柔道部の一員なんだし、手伝ってもらおうと思って」

 

「まぁ、私じゃおやつを用意することはできませんしねー」

 

 

 七条先輩の伝手で着ぐるみバイトをさせてもらえることになったのだが、私以外のメンバーは予定が入っているということでコトミちゃんに手伝いを頼んだのだ。

 

「ちなみに、タカ兄はお金を掛けずに美味しいおやつを用意してくれるようですから、今日半日働けば十分におつりがきますよー」

 

「そうなの? それじゃあ、新しい道着でも買おうかな」

 

「主将の道着、だいぶ解れてきてますからねー」

 

「部費は他のところに回せるし、バイトするっていいことだね」

 

「うっ! 笑顔がまぶしい」

 

「?」

 

 

 コトミちゃんが私から顔を逸らしながらそんなことをいうけど、そんなこと無いと思うんだけどな。

 

「今日はよろしくお願いします!」

 

「お嬢様から聞いています。三葉様はこっちで風船配りをお願いします。コトミ様はこちらで客寄せをお願いします」

 

「分かりました!」

 

「あれ? 会長たちも来るって言っていたんですけど」

 

「天草様たちなら、お嬢様とご一緒にテーマパーク巡り中です」

 

「さぁ、コトミちゃん! お仕事がんばろー!」

 

 

 コトミちゃんの腕を取り持ち場に移動する。着ぐるみを着ながら動くなんて初めてだけど、何だか熱がこもってサウナスーツみたいだ。

 

「(働きながら減量にもなるかも)」

 

 

 柔道部の皆でプールに行って以来、体重にも気を付けているから減量の必要は無いけども、大会に向けてちょっとずつ減らしておいた方が良いだろうし、これで少しは減ってくれたらいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三葉とコトミがバイトをしているということで、私たちは七条グループ傘下のテーマパークに来ている。

 

「タカトシも呼べばよかったか?」

 

「タカトシ君は柔道部の遠征用のおやつを考える為にスーパー巡りだって言ってたし、呼んでも来れなかったんじゃないかな?」

 

「テーマパークなんて子供だましですよ」

 

「その割には、さっきのアトラクションで絶叫してたような」

 

「きゅ、急に脅かされるのが苦手なだけです」

 

 

 言い訳が子供っぽいような気もするが、とりあえずテーマパークを楽しんだので、本来の目的である三葉とコトミの働きっぷりを見に行くとしよう。

 

「出島さーん」

 

「はい、お嬢様」

 

「二人はどんな感じー?」

 

 

 アリアが二人のバイトの監視員をしている出島さんに話しかける。監視員といっても、直接見ているのではなく、監視カメラを使って別室で見ているのだ。

 

「三葉様は少しぎこちない感じは受けますが、十分にキャラクターとしてやっていけていると思います」

 

「コトミちゃんは?」

 

「最初は良かったのですが、途中から疲れたのか動きが鈍いです。やはりタカトシ様にお願いした方が良かったのではないでしょうか?」

 

「そうすれば汗だくのタカトシ君が見られるから?」

 

「そ、そのようなことは……少ししか思っていません!」

 

「少しは思ってたんだー」

 

 

 まさか出島さんがそんなことを考えていたとは……だが、着ぐるみを着て動いた程度で、タカトシが汗だくになるだろうか? アイツはさくらたんの着ぐるみを着たままバク転したりしても、大して汗を掻いていなかったのに……

 

「でも急にムツミちゃんに『バイトを紹介して欲しい』って言われた時はビックリしたよー」

 

「まぁ、遠征に必要なおやつ代が必要ってことでしたしね」

 

「柔道の強豪校らしいし、当日は我々も応援に行ってやろうじゃないか!」

 

「そんなこと言って、遠足みたいで楽しみなんじゃないのー?」

 

「そ、そんなこと無いぞ!?」

 

 

 ちょっとそんなことを思ったが、応援したいという気持ちに嘘はないぞ! 本当に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当ならタカ兄がやるべきような事だけども、私は柔道部マネージャーとしてムツミ先輩と一緒にバイトをした。といっても、途中から体力がなくなってただただ手招きしていただけだけど……

 

「お疲れさまでした。午後からは別の人間が担当しますので、三葉様とコトミ様はここまでということで」

 

「お疲れさまでした!」

 

「お疲れ様でーす……」

 

 

 まだまだ元気なムツミ先輩とは対照的に、私はぐったりとした感じで出島さんに応える。

 

「三葉様はこのまま働いてもらいたいくらいの感じでしたが、コトミ様は些かペース配分に問題があったように思えますね」

 

「すみませーん」

 

「まぁ、汗だくの女子高生を見ながら、女子高生の汗の香りを嗅げたので善しとしましょう」

 

「まごうこと無き変態ですねー」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 私がはっきりと言うと、出島さんは嬉しそうな顔を見せる。この人はSでもMでもどっちでもいけるらしいから、私の罵倒もご褒美だったのだろう。

 

「あちらにシャワー室がございますので、汗を流してからお着替えください」

 

「わっかりましたー! ムツミ先輩、行きましょう」

 

「そうだね」

 

 

 出島さんからお給料を受け取って、私とムツミ先輩はシャワー室へと向かう事にした。それにしても、これが労働というものか……




出島さんの変態性が上がった気が……

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