桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作では逆ですが……


漂う匂い

 会長とスズは部室の見回り、俺は職員室で横島先生と小山先生と次の生徒総会の打ち合わせということで、生徒会室にはアリア先輩一人が残っている。それほど多くは無いが一人でやるには少しキツイ量の書類を引き受けてくれたのだが、さすがに終わらせるのは難しいだろうと思い、俺は打ち合わせを早めに切り上げる事にした。

 

「――ということですので、くれぐれも畑さんに内容を漏らさないようにお願いします」

 

「おいおい、これでも生徒会顧問なんだぜ? 不満は漏らしても機密情報を漏らしたりはしないさ」

 

「前半は聞かなかったことにしておきます。小山先生、横島先生の監視をお願いします」

 

「そんなに信用無いのか、私は?」

 

 

 不本意だと言わんばかりに俺と小山先生を交互に睨みつける横島先生だが、俺からしてみれば何処を信用すれば良いのか分からないくらいの相手なのだからこの措置は当然なのだ。

 

「大丈夫よ、津田君。さすがに横島先生も喋っていいことと悪いことの区別くらいはできるでしょうし」

 

「そうだと良いのですが……男子生徒を斡旋すると言われたらホイホイと話しそうですし」

 

「……否定出来ない」

 

「しろよ! というか、さすがの私でもそこまで落ちぶれてないわ!」

 

 

 そこはかとなく不安だが、とりあえずは横島先生を信じて俺は職員室を後にする。幸いな事に畑さんの気配は会長とスズの側にあるので、ここでの会話を聞かれていたということはない。盗聴器などの心配もなかったので、とりあえずこれで情報が洩れたら横島先生を問い詰めれば良いのだ。

 

「まぁ、バレたところで近い内に発表されることなんだがな」

 

 

 特別重要なことでもないのだが、あの人に知られたら面倒なこともあるので釘を刺したに過ぎないので、俺は気持ちを切り替えて生徒会室へ戻る。

 

「(アリア先輩一人で何処まで終わらせられたか)」

 

 

 時間的にはほぼ終わっていてもおかしくはないのだが、一人だと集中できる人とできない人がいるからな……ちなみに、コトミはどちらでも集中できないのだが。

 

「お疲れさま――ん?」

 

 

 一応声をかけてから入室しようとしたが、中から規則正しい息遣いが聞こえてきたので、俺は音を立てずに生徒会室に入り、寝てしまっているアリア先輩に自分のブレザーを掛け、残っている仕事を片付ける為に机に向かう。

 

「まぁ、だいたい終わってるからそれ程時間は掛からないか」

 

 

 残っているのはPCに打ち込む作業だけなので、俺は鞄から眼鏡を取り出してデータを打ち込む。その間かなり集中していたので、会長とスズが生徒会室に戻ってきていたことに気づけなかった。

 

「あぁ、二人ともお疲れさまです」

 

「お疲れ。早速だがタカトシ、この状況を説明してくれ」

 

「はい?」

 

 

 何故かご立腹な会長とスズが指差す方に視線を向けると、アリア先輩が俺のブレザーの匂いを嗅いでいるような格好になっていた。

 

「あぁ、寝てしまっていたのでブレザーを掛けてあげたのですが、ズレてそんな格好になってしまったんですね」

 

「お前がアリアに匂いを嗅がせたわけじゃないんだな?」

 

「そんなことをして、俺にどんなメリットが?」

 

「いや、忘れてくれ。とりあえず仕事も終わったんだし、帰るとするか。アリア、起きろ!」

 

「ん~……あれ? シノちゃん……?」

 

「ここは生徒会室だ。作業も終わったから帰るぞ」

 

「えっと……私最後まで終わらせたっけ?」

 

「残ってた分は俺がやっておきましたので」

 

「ゴメンね。それとこれも……少し汚れちゃったかもしれないけど」

 

「かしてみろ」

 

 

 横から俺のブレザーをひったくった会長が念入りにチェックをし、問題ないと判断されブレザーが手元に戻ってきた。というか、何をそんなに気にしたんだか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろお嬢様がお戻りになるので、私は玄関ホールへ移動する。本当ならお迎えに行きたかったのですが、生憎車は車検中で送迎ができないのだ。

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

「出島さん、今日もお出迎えありがとうね」

 

「いえいえ、お嬢様に早く会いたくてここで待っていました」

 

「あらあら~」

 

 

 仕事をサボっているわけではないが、橋高さんにはあまり良い顔はされないので自重した方がいいのだろうが、こればっかりは止められない。

 

「ところでお嬢様、なにかいいことでもあったのですか?」

 

「どうして~?」

 

「何時もより笑顔がまぶしいような気がしまして」

 

「別に何もないよ~?」

 

「そうですか……っ!?」

 

 

 部屋へ向かわれるお嬢様とすれ違った時、私はお嬢様から津田氏の匂いがしたことに気が付いた。それも横にいた程度で移る匂いではなく、抱きしめられたような感じの匂いだ。

 

「お嬢様、タカトシ様にハグでもされたのですか?」

 

「えっ? 何でそんなことを聞くの?」

 

「いえ……お嬢様からタカトシ様の匂いがしましたので」

 

「そんなに匂うかな?」

 

「私の嗅覚は誤魔化せません」

 

「そうなんだ。実はね――」

 

 

 お嬢様から事情を聞き、私はようやく納得出来たのですが、それと同時にさすがはタカトシ様だと感心したのでした。




アリアからタカトシの匂いがするのは一緒でしたね

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