桜才学園での生活   作:猫林13世

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指が冷たくてキーボードが押せてない……


悪魔タカトシ

 七条先輩の家の車に乗り込み、私たちは七條家が保有する別荘に向かっている。

 

「今日はお招きいただきありがとうございます」

 

「いえいえ~大勢の方が楽しいでしょ?」

 

「そうだぞウオミー! 感謝するのは良いが、あまり遠慮するとかえって失礼だからな!」

 

「そうですね。では我々も思う存分楽しみたいと思います」

 

 

 元々あまり遠慮してる風では無かった魚見さんだが、会長と七条先輩の言葉で踏ん切りがついたのか、ハッチャける宣言をしたのだった……大丈夫よね、森さんいるし……

 

「ところで皆、冬休みの宿題は持ってきたか?」

 

「当然持ってきてるよ~」

 

「私もです。シノッチたちと一緒に勉強するのも面白そうでしたし」

 

「私も一応は」

 

 

 五十嵐先輩や魚見さんたちは二年生として一緒に勉強するようだ。

 

「私もとりあえずは持ってきました」

 

「俺も」

 

 

 森さんと津田も遠慮がちに会話に加わる。ちなみに私は既に終わっているので、勉強道具は持ってきていないのだ。

 

「私は持ってきてないな~。せっかくのパーティーに勉強道具なんて必要ありませんから」

 

 

 津田の妹のコトミちゃんは、笑いながら高らかに宣言した。だが……

 

「安心しろコトミ。お前の宿題や参考書は俺が持って来たから」

 

 

 この兄がそれを許す訳がなかったのだ……最近やつれ気味で思考が黒くなってると宣言してた津田が、人の悪い笑みを浮かべながらコトミちゃんの宿題と勉強道具を取り出した。

 

「折角成績優秀者が揃ってるんだ。この際ミッチリ勉強してもらおうと思ってるから覚悟しとけよな」

 

「成績優秀者って……皆さんどれくらいなんですか?」

 

 

 顔を引きつらせながら、コトミちゃんが私たちに質問してきた。

 

「私は学年一位だ!」

 

「私は二位だよ~」

 

「私は三位です」

 

 

 これが会長と七条先輩と五十嵐先輩。

 

「私は学年一位です」

 

「私は五位です」

 

 

 これが魚見さんと森さん。

 

「私は一位よ」

 

「俺は二位」

 

 

 これが私と津田。

 つまりこの車内で問題児はコトミちゃんだけなのだ。

 

「で、でも……折角のパーティー、楽しみたいな~って」

 

「もちろん遊ぶ時は遊んでも良いが、しっかりと勉強して、年明けの受験に備えてもらうからな。ただでさえギリギリなんだから」

 

「ギリギリにまでなったの?」

 

「……正直ギリギリと表現するのもギリギリな成績なんだよ」

 

 

 津田のつらそうな表情を見て、私たち全員に気合が入る。津田を困らせている諸悪の根元をここで正せば新学期からは前の津田に戻ってくれるかもしれないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車で移動する事数時間、七条家の別荘に漸く到着した。

 

「立派な建物だな」

 

「りっぱー!」

 

 

 会長とコトミがはしゃいでるのを見て、俺はとりあえずは来てよかったと思えた。

 

「ホント、立派だわ」

 

 

 二人につられて、萩村も建物の感想を口にした。

 

「萩村! その位置でそのセリフは駄目だ!」

 

 

 ん? 会長が萩村の位置を気にしてるようだが、俺の目の前に萩村が居るんだよな……

 

「実際タカ兄のは立派だよ」

 

「そうなのか!?」

 

「その話詳しく」

 

「あらあら~」

 

 

 会長と魚見さんと七条先輩がコトミの発言に興味を示してるが、正直コトミに見られた覚えは無いし、こんなクソ寒い外で盛り上がるような事でも無い気がしてるのだが。

 

「寒いんでとっとと中入りませんか?」

 

「そうだな! アリア、案内してくれ」

 

「いいよ~」

 

 

 正直これくらいなら耐えられるのだが、森さんや萩村が寒そうにしてたのでさっさと中に入る事に。正直殴って気絶させるのも面倒なんだよな……

 

「さすが津田ね。あっさりと話題を変えるなんて」

 

「そのスキルが羨ましいです」

 

「……ほしくて手に入れた訳では無いんですがね」

 

 

 萩村に褒められ、森さんに羨ましがられたが、俺の仕事はツッコミでは無い! 断じて違うぞ……きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 室内に入り、私はアリアの許可を貰い別荘を探検する事にした。もちろんウオミーも一緒だ。

 

「コトミちゃんも来たそうでしたがね」

 

「津田と森さんに捕まってはしょうがないだろ」

 

 

 ギリギリと表現するのさえギリギリの成績のコトミは、津田と森さんに捕まり、さらにそこに萩村を加えた三人に勉強を見てもらう事になったのだ……助けようとも一瞬思ったのだが、津田の目が笑ってなかったのでやめておいたのだ……

 

「しかしシノッチ、津田さんの目……ゾクゾクしませんでした?」

 

「したぞ! さすがウオミー! 分かってくれたか」

 

「もちろんですよ! あの目……完全にサディストの目でした」

 

 

 実際津田はドSと言われるだけの事があり、ツッコミの時も拳骨などの物理攻撃もあるのだ。あれがまた気持ち良いんだ……

 

「津田の攻撃性は兎も角、今度あの目をした津田に罵ってもらいたいぞ」

 

「そうしたら本格的にMの道に目覚めそうですよね」

 

「この伊達眼鏡をかけてもらえば」

 

「鬼畜眼鏡ですね、分かります」

 

 

 ウオミーとハイタッチして探検を続ける事に。これが別荘のお風呂だと……ウチのとさほど広さが変わらないでは無いか……

 

「何か金持ちって実感させられるよな、この別荘見てると……」

 

「今更では? シノッチは七条さんと同じ学校なのですから」

 

「そうなのだが、普段アリアと接してると忘れがちになるんだ」

 

 

 何せお嬢様って感じがしない会話ばかりしてるのでな……

 

「ところでシノッチ、あの五十嵐さんももしかして……」

 

「だろうな。男性恐怖症の癖に……あのビッチが!」

 

「それは言い過ぎですよ。せめて雌猫で止めておきましょう」

 

「ウオミーも大概だと思うぞ?」

 

「そうでしょうか? でもそうですか……やはり競争率は高めなのですね」

 

「あれで文才まであるからな。学園に非公式のファンクラブまで存在してるとの噂まであるからな」

 

 

 畑から聞いた話だが、結構信憑性は高いと思うのだがな……如何すれば会員になれるのだろうか……

 

「聞くところによると、シノッチや七条さんのファンクラブもあるとか」

 

「噂の範疇だがな」

 

「では何故萩村さんのファンクラブが無いのでしょうか?」

 

「それは決まってるだろウオミー」

 

「やはりそういう事ですか」

 

 

 ウオミーと揃って息を吸い、言葉を揃える。

 

「「最近ロリへの風当たりがキツイから」」

 

 

 声が揃った事で再びハイタッチをして、私たちは探検を終了させた。




コトミよ、みっちりと勉強して、受験に備えろ……

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