桜才学園での生活   作:猫林13世

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さすがにそんなミスはしないだろ


服の趣味

 タカ兄からお小遣いをもらったので、私はトッキーと一緒に服を買いに行くことにした。普段ならタカ兄に頼み込んでお小遣いをもらうのだが、今回はテストで平均以上を取ったので臨時のお小遣いをお願いしたら、なんとOKをもらえたのだ。

 

「お前がこの時期に小遣いがあるなんて驚きだな」

 

「タカ兄から臨時ボーナスをもらえたんだよ」

 

「まぁ、今回は私も兄貴のお陰でなんとかなったしな」

 

 

 私もトッキーも、タカ兄とお義姉ちゃんのお陰で良い点数を取れたのだ。

 

「ところでトッキー、最近その服ばかり着てるけど、お気に入りなの?」

 

「まぁ、楽だしな」

 

「(あぁ、リバーシブルだしね)」

 

 

 あのアウターはリバーシブルで、トッキーが裏表を間違えても問題はないのだし、一緒に買いに行った時も同じようなことを思ったし。

 

「それにしても、兄貴がお前に小遣いをくれるなんて珍しいよな」

 

「それだけ良い点数を取ったからだよ。それにお義姉ちゃんにも援護射撃をお願いしたから」

 

 

 私一人の力ではもらえなかっただろうが、お義姉ちゃんも私の味方になってくれていたので、タカ兄も臨時ボーナスに納得してくれたのだ。まぁ、次のテストでまた酷い点数を取った場合は、お小遣いを減らされるんだけども……

 

「それじゃあ、とりあえず自分の気に入りそうな服を探そう」

 

「そうだな」

 

 

 私とトッキーとでは、服の趣味が違う。なので同じ店に来ても一緒に服を探すということはしない。どちらかと言えば、マキと一緒に探す方が楽なのだが、生憎今日は予定が合わずに私とトッキーの二人で来ているのだ。

 

「(高校に入学するまでタカ兄に服を選んでもらっていたから、私のセンスって他の子たちと比べると悪いんだけどね)」

 

 

 いい年して兄に服を選んでもらっていたというのは、何となく恥ずかしい気もするが、中学までは自腹を切らなくてもタカ兄が服を買ってきてくれていたのだから仕方がないだろう。むしろ、自分で選ぶなんて考えたこともなかったくらい。

 

「(おっ、あれはちょっと興味あるかも)」

 

 

 私の眼に留まったのは背中開きのトップス。普段なら着てみたいとは思わないし、タカ兄が買ってきてくれていたデザインとも大きく異なる。だが何となく試着くらいならしてみてもいいかなと思ったのだ。

 

「何かあったのか?」

 

「ちょっと試着してみる」

 

 

 試着室の前でトッキーと合流し、私はさっきのトップスを試着してみることにした。

 

「これ結構大胆で、ちょっと恥ずかしいかもね」

 

「ふーん……私も試着してみるか」

 

 

 私が着ているのを見て、トッキーも試着すると言い出したので、私は一つ注意しておくことにした。

 

「トッキー、試着する時は前後気を付けてね」

 

「そこまでドジじゃねぇよ!」

 

 

 結局冒険する勇気は出なかったので、私は普段着ているような服を買い、トッキーはまたしてもリバーシブルの服をチョイスしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は生徒会役員で出かけることになっており、私は待ち合わせ時間に余裕で間に合う時間に出かけようと玄関に向かう。

 

「あら? スズちゃん、この靴シークレットブーツになってるのね」

 

「あっ!」

 

 

 少しでも背を高く見せたくて買ったはいいが、あまり履く機会がなかった靴をお母さんに見つけられ、私は恥ずかしさからその靴を奪い取る。

 

「このことは内緒にして! トップシークレットで!」

 

「え? そっちも底上げしてるの?」

 

「そういう意味じゃねぇよ!」

 

 

 相変わらずボケが多い母親とのやり取りで少し時間に余裕が無くなったが、それでも十分に間に合う時間だ。

 

「(もう来ているとしたらタカトシくらいかしらね)」

 

 

 アイツは何時も一番に待ち合わせ場所に来ているようで、前に話を聞いたらだいたい十五分前には着くようにしているらしい。

 

「(真面目なタカトシらしいけど、たまにはアイツが来るのを待ってみたいものよね)」

 

 

 別に二人きりで出かけるわけではないし、もしかしたらタカトシよりも先に会長か七条先輩が来る可能性だってある。だが私は少し急ぎ足で待ち合わせ場所に向かい、タカトシより先に到着することができた。

 

「(これでアイツを出迎えることができるわね)」

 

 

 そう思っていたのだが、五分前になってもタカトシはおろか、会長も七条先輩も現れない。

 

「何かあったのかしら?」

 

 

 私は携帯を取り出してタカトシに連絡することに。

 

『もしもしスズ? 何かあったの?』

 

「それはこっちのセリフよ。何時まで経っても誰も来ないんだけど」

 

『もしかして西口にいるの? 待ち合わせ場所は東口に変更だってさっき会長から連絡があったはずだけど』

 

「えっ……」

 

 

 私は慌てて携帯のメッセージを確認すると、一時間以上前に確かに会長から待ち合わせ場所変更の連絡が入っていた。

 

「す、すぐに行くわ!」

 

『別に慌てる必要はないよ。西口から東口の移動だけなら、五分も必要ないし』

 

「そういうことじゃないのよ!」

 

 

 まさか先に到着することだけを考えていて、待ち合わせ場所変更の連絡に気づかなかったなんて、子供みたいで恥ずかしい。そこに遅刻まで加わったら死にたくなるから、私は大急ぎで移動して何とか待ち合わせ時刻に間に合ったのだった。




シークレットブーツなんて縁がないな……180くらいあるし

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