カエデさんがカップルを見張るという名目で、俺は何故か遊園地に同行することになった。
「(校内恋愛禁止なだけで、外で付き合う分には問題無いんじゃないだろうか)」
そんなことを考えていたが、カエデさん自身がそのことに気付いているが、羽目を外し過ぎないように監視したいといっていたので、とりあえずは付き合うことに。だがまぁ、俺意外にも誰かいたんじゃないのか?
「ヒッ!?」
「(あっ、男性恐怖症があったんだっけか)」
すれ違う男性にビクビクしながらこちらにやって来たカエデさんを見て、そこまで怯えるのならこんなところに来ると言い出さなければよかったのにと思う。職務熱心なのは感心するが、無理をしてまでする必要は無いと思う。
「これで全員揃ったね」
「今日はよろしくお願いします」
あまり付き合いの無いカップルに同行するということで、俺は挨拶と共に一礼をする。向こう二人は気楽な感じだが、カエデさんの熱量が凄いのが気になるが……
「まずはどこ行こっか?」
「えー、そっちが決めてよ~」
入園そうそうイチャイチャしだす二人を見て、俺は早くも辟易してきた。何が悲しくて休日に他のカップルがイチャイチャしてるところを見なきゃいけないのか……せっかくいい天気だから、部屋の掃除とか念入りにしたかったな……
「そんな悠長なこと考えてないで、混みそうなところから行くわよ。空いている内に遊んじゃった方が、後々楽しめるから」
「カエデ、随分と楽しみだったんだね」
「そ、そんなこと無いわよ! まずは観覧車ね」
「まぁ、カエデのガイドに任せるわよ」
どうやらカエデさんは監視の名目を忘れてはいないようだが、単純に楽しみだったようだ。まぁ、彼女も女子高生だし、こういう場所に遊びに行きたいと思うこともあるだろうし。
「あっでも、狭い空間に異性と二人きりって、何だか緊張しそう」
「大丈夫だよ」
まぁ、さすがに四人で乗り込むわけにもいかないので分乗するが、何を根拠に大丈夫といっているのだろうか。カエデさんの体質は、俺限定で発動しないらしいが、狭い空間でもそうなのかは分からない。逃げ場のない観覧車の中で発作を起こされたら、さすがに対応できないんだが……
「ロッカーの中より全然広いし」
「そこで何をしたっ!」
……カップルというのは、俺の思考が及ばないことをしているのか。
タカトシ君と二人きりで観覧車に乗った後、私たちはお化け屋敷に足を運んだ。ここのお化け屋敷はかなり怖いので有名で、脱落者が大勢出るらしい。
「(すごく暗くて雰囲気あるなぁ……それにしても、あの二人は観覧車で何をしてたのかしら)」
降りてきた時、微妙に服が乱れていたようにも見えたのだが、それを問いただして気絶するのもバカらしかったので聞かなかったが、恐らくは私の想像通りのことをしていたのだろう。
「(他の人が乗る物の中で何をしているのかしら……それとも、それが恋人同士の普通なの?)」
残念ながら私は異性と付き合った経験どころか、二人きりでこういうところに来た経験すらない。今日だってタカトシ君に頼めなかったら来られなかったわけだし……
「(あれ? よくよく考えてみれば、今日ってタカトシ君とデート……?)」
そんなことを考えてしまい、私は慌てて頭をふる。今日の目的はあくまでも二人が羽目を外し過ぎないように監視するだけであって、そのような浮ついた理由ではない。
「(それにしても、何だか寒くなってきたような……)」
お化け屋敷の演出なのか、徐々に気温が下がってきているように感じ、私は身震いをする。それを感じ取ったタカトシ君が、自分の上着を私に差し出してくれた。
「着ます?」
「あ、ありがとう」
ここで遠慮したら、変に意識していると思われそうだったので、私はタカトシ君の上着を素直に羽織ることにした。
「(こういうことを普通にできるから、タカトシ君はモテるんだろうな)」
「ばあっ!」
「うひゃっ!?」
タカトシ君の横顔に見惚れていた所為で、私は横から現れたお化けに驚いて腰を抜かし掛け、タカトシ君にしがみついてしまった。
「出島さん、何してるんですか?」
「ここは七条家が経営している場所ですので。ちなみに、お嬢様たちは監視カメラでこの状況を見ております」
「えっ!?」
まさかこんなシーンを見られるとは思っていなかったが、とりあえずタカトシ君に支えてもらいながらお化け屋敷を出て、天草さんたちと合流した。
「ここの噴水にコインを入れると願いが叶うらしいな」
「そうなんですか? じゃあ、良いことがありますように」
天草さんの一言でとりあえず願っておこうと思った私がコインを入れると、出島さんが現れた。
「おめでとうございます! 貴女がこの噴水にコインを入れた百万人目のお客様です! 記念品として、お連れ様とご利用できるオフィシャルホテル宿泊券を贈呈いたします」
「えっ?」
「おめでとう、カエデ。津田君とのデート、延長だね」
「そんなんじゃないから!」
記念品を辞退しようとも思ったけど、あまりにも盛り上がっていた所為でそれもできず、私とタカトシ君は併設してるホテルに一泊することになってしまった。
デート延長決定