桜才学園での生活   作:猫林13世

627 / 871
いきつけではないような……


街案内

 留学生のパリィと親交を深める為、休日に生徒会メンバーで集まって出かける事にした。

 

「今日はパリィを街案内するぞー」

 

「パリィちゃん、行きたいところある?」

 

「えーと……みんなのイキツケの店」

 

「よく行く店か……」

 

 

 私の頭に浮かんだのは、ファストフード店やコンビニといった、あまりお勧めしなくてもいいかんじの店であり、しかもアメリカ発祥のものだった。

 

「タカトシは何処かイキツケの店はあるの?」

 

「あまり外で食事をすることが無いからな……スズは?」

 

「えっと……ケーキの美味しい店とか、そういうところくらいかな」

 

「あっ! この辺りに足湯カフェができたらしいから、みんなで行かない?」

 

 

 アリアの提案に、私と萩村は二つ返事で賛成し、タカトシも異論は無さそうだ。パリィは足湯の意味が分かっていない様子だったが、萩村とタカトシが説明してくれたお陰で、興味がわいたらしい。

 

「気軽に温泉を楽しめるなんて、さすが日本だね」

 

「ちょっと違うんだけどな……」

 

 

 少し誤解があるようだが、とりあえずはどのようなものか体験してもらえばいいだろうということで、私たちは足湯カフェへと向かった。

 

「ここか」

 

「店内は女性が多そうですね」

 

「タカトシ君はそんなこと気にしないでしょう?」

 

「俺を何だと思ってるんですか……居心地の悪さは感じますって」

 

「そうなのか?」

 

 

 タカトシなら周りが女だらけだろうが気にしないと思っていたが、意外とそう言うことを気にするのか。

 

「まぁ、一人だったら絶対に入らないでしょうけど」

 

「とりあえず我々と一緒なら問題ないだろ。パリィも興味津々のようだしな」

 

 

 既に意識が店内に向いているのか、パリィは私たちの会話を聞いていない様子だった。まぁ、外国人にとって日本の温泉は興味深いものの一つだろうし、たとえ足湯であろうとそれには違いないのかもしれないな。

 

「いらっしゃいませ、五名様でよろしいですか?」

 

「はい」

 

 

 店に入ってすぐ、店員が私たちに人数を確認してから席に案内してくる――それは良いのだが、何故タカトシに尋ねたのかと疑問には思った。普通に考えれば、タカトシが一番年上に見えたのか、引率役として一番適任に見えたとか、そういうことなのだろう。

 

「おっ、気持ちいいな」

 

「気持ちいいですね」

 

 

 パリィを案内するはずだったのだが、意外と私たちも満喫できる店で、私はホッと一息つきながら足湯を満喫する。

 

「んおぉ~バカになりゅ~~」

 

「何言ってるの?」

 

 

 どうやらパリィは日本の文化を誤解しているようで、気持ちいいという意味でさっきのセリフを言ったようだ。前の私ならノリノリで付き合ったかもしれないが、今はそのようなことはしない。

 

「お待たせいたしました」

 

「ありがとうございます」

 

 

 注文の品を運んできた店員にタカトシがお礼を言いながら商品を受け取り、私たちの前に置く。本来なら店員がする作業なのだろうが、タカトシがやると自然に見せるから不思議だ……

 

「というかシノさん、このおせんべい辛そうですが大丈夫ですか?」

 

「問題ない! 辛いものを食べて代謝を上げれば健康にいいからな!」

 

「あっ、シノちゃんもしかして太ったの?」

 

「ち、違うからな!?」

 

 

 アリアに図星を突かれ、私はあからさまな態度で反応してしまう。

 

「てか、私以外みんな甘そうな物を注文したんだな……」

 

「俺は普通のせんべいですけどね」

 

 

 アリアと萩村、パリィが注文した物を見ると、何だかそっちの方が良かったと思えてしまう……まぁ、自分で選んだんだし、これはこれで良いものかもしれないしな。

 

「もぐもぐ……っ!?」

 

 

 一口齧って味わっていると、強烈な辛さが口内を襲う。これは想像以上に辛いぞ……

 

「お茶が足りない!」

 

「そんなに辛いんですか?」

 

「疑うなら食べてみればいいだろ」

 

 

 タカトシにもう一枚のせんべいを渡して、私と同じ思いをしてもらおうと思ったのだが、タカトシは特にリアクションをとることなく食べ終えてしまった。

 

「確かに辛いですが、そこまで騒ぐほどではないと思いますが」

 

「そうなの~? シノちゃん、一口頂戴?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 私がおかしいのかと一瞬錯覚しそうになったが、アリアも私と同じように悶絶したのを見て、おかしいのはタカトシの方だと確信できた。というか、これだけ辛いのに何でタカトシは大丈夫なんだ?

 

「タカトシ」

 

「ん? どうかしたの?」

 

 

 私たちの遣り取りを見て、パリィが何か疑問を持ったらしく、タカトシに手招きして何かを尋ねている。

 

「本当にシノとアリアが先輩なの? タカトシの方が年上っぽいけど」

 

「よく言われるけど、間違いなく俺は二人の後輩だ。というか、スズと同い年なんだから」

 

「スズも同い年には見えないけど、タカトシの落ち着きようは別格」

 

「そうかな……」

 

 

 タカトシは納得していないようだが、私たちから見てもタカトシの落ち着きようは驚きを隠せないものがある。やはり年齢ではなく経験なのかと思わせられるが、だからといってタカトシと同じ経験をしたいとは思わない。何故なら、あのコトミの相手を長年してきたからこその貫禄なのだから……




タカトシの貫禄は高校生レベルではないからな

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。