桜才学園での生活   作:猫林13世

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仕事っぷりは良いんですが……


畑さんの本気

 桜才新聞といえば、津田副会長のエッセイが載っているものという認識が高まりつつある。無論その認識でも問題は無いのだが、桜才新聞にはエッセイ以外にも記事が載っているのだが、そちらが話題になることは滅多にない。このままでは我が新聞部の存在理由がなくなってしまうのではないかと危惧し、何とか記事に注目してもらえないかと考えた。

 

「――で、それが俺のインタビューだと?」

 

「うん」

 

 

 この学園で最も注目されている生徒は誰だと考え、思い付いたのが天草会長と津田副会長の二人だ。天草会長のインタビュー記事でも注目されるだろうが、元女子高だというだけあって、女子生徒の方が圧倒的に数が多い。そう考えると、女子の天草会長より男子の津田副会長ののインタビューの方が注目されるのではないかと考えたのだ。

 

「別に協力するのは構いませんが、何故わざわざ土曜日に呼び出したんです? 平日の放課後とかでも良いじゃないですか」

 

「いつ、どこで、誰が聞き耳を立てているか分からないですからね。圧倒的に人の少ない土、日のどちらかにインタビューを行った方が良いと思ったのです」

 

「畑さんの考えは分かりました。ですが、何故このような場所で? 生徒会室とかでもよかったんじゃ」

 

「先ほどと同じ理由です。生徒会室では誰が聞き耳を立てているか分からないですから」

 

 

 私たちは今、横島先生が良く男子生徒を襲っていると噂されている資料室に二人きりでいる。男女が密室で二人きりとなれば、邪な勘繰りをする輩がでてくるかもしれないが、相手は津田副会長だ。七条さんや五十嵐さんにすら手を出さない人が、私に手を出すとは考え難い。というか、むしろ私が津田副会長を襲うのではないかと思われそうだ。

 

「そもそも俺のことを記事にして何か意味があるんですか?」

 

「何を仰います! 我が校で最も注目されている男子にして、ファンの数が数えきれないくらいいる津田先生のインタビュー記事! これは、これは売れる! ……じゃなかった。興味を持ってもらえると思います」

 

 

 今回はあくまでも校内向けなので販売はしない。だがつい興奮してしまい何時もの流れになってしまい掛けたが、何とか軌道修正を行い、津田副会長にインタビューをすることに。

 

「ではまず、今最も意識している異性はどなたですか?」

 

「いませんよ。以前も言ったかもしれませんが、そのようなことに意識を割いている余裕がないですから」

 

「では、余裕ができたらと仮定したとして、付き合ってみたい異性の特徴とかはありますか?」

 

「また難しいことを……」

 

 

 何処か呆れている雰囲気を醸し出しながらも真剣に考えてくれる津田副会長。この辺もモテる要因なのでしょうが、本人は無意識に行っているのでそのことに気付いていない様子。

 

「(天然たらしとはよく言ったものですね……)」

 

 

 その後も順調にインタビューは進み、想定していた時間より短い時間で十分な答えを得ることができた。

 

「ご協力ありがとうございました。一週間以内には記事が出来上がりますので、その時は検閲をお願いします」

 

「曲解したりしないのであれば、検閲の必要は無いと思うのですが」

 

「発行後に潰されるのは困りますので、修正が必要な部分があった場合は先に言ってもらいたいのです」

 

 

 津田副会長が言うように曲解しなければいいだけの話なのだが、いかんせん癖でそうしてしまう場合があるのだ。だから津田副会長には先に読んでもらい、問題がなければ発行するという方向で話を進めておいた方が、私も自重できる。津田副会長はその裏まで読み切っているようで、ため息交じりながらも承諾してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍しく畑が真面目に記事を書いた新聞が発行されるということで、私は少し楽しみにしながらその記事が掲示されている場所まで向かう。

 

「シノちゃーん」

 

「アリアか」

 

「桜才新聞見に行くんでしょ~? 一緒に行こう~」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 エッセイが載っている号は裏で販売しているので後でゆっくり読めばいいのだが、今回の新聞はエッセイではなく記事で勝負するということでタカトシのエッセイは掲載されていないらしい。

 

「タカトシ君のエッセイがメインになりつつあるからって危機感を覚えたらしいよね~」

 

「非常に今更な気がするがな」

 

 

 以前からタカトシのエッセイ以外の記事は注目されていない問題はあったと思うのだが、今更ながらに危機感を覚えてもな……まぁ、畑が真面目に書いた記事に興味がないわけでもないし、私たちは早足で桜才新聞が掲示されている場所を目指した。

 

「……随分と人だかりができているな」

 

「そんなに興味深い記事なのかな~?」

 

 

 新聞に集まっているのは女子ばかりなのを見ると、内容はタカトシ関連だということは想像に難くない。だがそこまで注目される記事となると、これはいよいよ気になってしまうな。

 

「あっ会長。どうですか私の渾身の記事は!」

 

「……内容は確かに興味深いが、注目されているのはこちらのパネルのようだぞ」

 

「等身大の副会長の記事を書いたついでに、等身大パネルも作ってみたのですが、やはりそちらが注目されちゃいますよね……」

 

「畑さん、少しお話があります。生徒会室までご同行願えますか?」

 

「あ、悪意はなかったんですよ?」

 

「それを含め、ゆっくり話し合いましょうか」

 

 

 ゆらりと現れたタカトシに連行されていく畑を見送りながら、私たちもタカトシの等身大パネルを眺めるのだった、




余計なことまでするのが畑ランコクオリティ……

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